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連載

〈ラ・ルース〉
ヒノキの間伐材を、
寄木と木地挽きで美しいうつわに。

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.056|Page 1

posted:2015.2.25  from:神奈川県小田原市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:松木宏祐

ラ・ルースからつながる神奈川の森のはなし

神奈川県は、森林面積も小さく、林野率も低い。
それでも県内には、丹沢大山や箱根といった山々をはじめ、
県土の約40%、約9万5000ヘクタールを占める森林がある。
県では平成18年に森の再生の方向と目指す姿を示した
〈かながわ森林再生50年構想〉を公表。
広葉樹の再生、人工林から混交林への転換、人工林の再生を目指している。
また、県産木材を積極的に利用してもらうために、
〈かながわ木づかい運動〉を推進している。
〈かながわ県産木材産地認証制度〉、
〈かながわブランド県産木材品質認証制度〉というふたつの認証制度を実施。
さらには、県産木材を使用する公共木造施設の整備に対して、支援も行っている。

丹沢湖畔から渓谷を40分登った場所にある西丹沢県民の森。大正4年に植樹されたスギをはじめ、ヒノキ、イヌブナが生い茂る、別名〈大正の森〉。

森を守るため、目の前にある間伐材を使ったものづくり

神奈川県小田原市は、寄木をはじめとした木工業が盛んだ。
しかしその材料は、北海道や秋田などから購入している広葉樹である場合が多い。
小田原に工場を構えるメーカー、ラ・ルースも、同様の木工所であった。

しかし4年前、森林再生への取り組みをしなければならないという思いに立ち返り、
まず仕掛けたのがヒノキの鉛筆だ。

「小田原市と岡山県西粟倉村にかけあって、鉛筆を10万本つくり、
そのときは飲料メーカーに納品しました。
あんなに小さな棒1本でも、小学生ひとりひとりに渡せば1000万本以上になります。
各県のヒノキでやれば、地元の森のことを考えられるツールになります」と
代表取締役の相田秀和さんはいう。
昨年も継続して、1600ダースの鉛筆を小田原市の学校に納品したという。

ラ・ルース代表取締役の相田秀和さんは、小田原ローカルのサーファー。

その後、小田原市のある働きかけがあった。
通常、木工所は市の産業政策課の扱いになる。
一方、森林組合と製材組合は農政課の担当。
一緒に森林のことを考えていかなくてはならない三者が、
つながりづらい状況だったのだ。

「森林組合も、製材組合も、木工組合も、同じ建物にあればいいと思うんですよね」
この3つをつなげたいという市の思いもあり、それこそ飲み会からの交流スタート。
そこから見えてきたことは、小田原市の間伐材が生かされていない現状だった。

そこで、ラ・ルースは小田原市および郵便局と組んで、
間伐ヒノキを利用した実物大のポストをつくった。
そこに地元の小学生が、福島県相馬市で被災した人に向けて、
木でできたハガキを投函して送るという催しが行われた。
イベントではポストごと相馬市に運び、現地でも大好評。
そのポストは現在、実際の“郵便ポスト”として相馬市で使われている。

「このまちの、目の前に材料があるわけです。“だったらそれを使おうよ”と。
針葉樹はたしかに加工が難しいです。削ればざらつくし、切ればバリがでる。
でもうまく使えるようになれば、市場性もあるはずです」

小田原の間伐ヒノキを乾燥中。

ラ・ルースは、どんどん目の前=小田原の間伐材を購入している。
使っていけばいくほど、扱い方もうまくなるはずだ。

「昨年1年間で、小田原市から出たヒノキの間伐材を
20立方メートルくらい買っています。
小物ばかりつくっているうちのような会社にとっては、相当な量です。
ほとんどの木は斜面に生えています。
建築材は真っ直ぐな4メートル材が必要なので、
株から2メートルほどの曲がっている部分=元玉は、ねじれがあるので使えません。
だからその部分は、案外、安価で流通しているんですよ。
ぼくたちなら十分使える木材です」

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