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連載

〈沓澤製材所〉
伝統ある企業が挑む、
秋田杉ブランド第二世代を担う
製品づくり。

木のある暮らし
ーLife with Woodー
vol.005

posted:2014.10.15  from:秋田県大館市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  日本の面積のうち、約7割が森林。そのうちの4割は、林業家が育てたスギやヒノキなどの森です。
とはいえ、木材輸入の増加にともない、林業や木工業、日本の伝統工芸がサスティナブルでなくなっているのも事実。
いま日本の「木を使う」時かもしれません。日本の森から、実はさまざまなグッドデザインが生まれています。
Life with Wood。コロカルが考える、日本の森と、木のある暮らし。

writer profile

Akiko Saito

齋藤あきこ

さいとう・あきこ●宮城県出身。図書館司書を志していたが、“これからはインターネットが来る”と神の啓示を受けて上京。青山ブックセンター六本木店書店員などを経て現在フリーランスのライター/エディター。Twitter

沓澤製材所がつながる秋田の森のはなし

杉はスギ科スギ属に分類された、日本特産の樹木。
秋田の杉は、木曽ヒノキ、青森ヒバと並んで、日本三大美林として知られている。

その「秋田杉」は、実は2種類ある。
ひとつは「天然秋田杉」。樹齢200年以上の、天然の森で育った杉のこと。
節のない、美しい木目が特徴の大変希少な木で、昔もいまもとても高価なもの。
特に平成24年以降は国有林の伐採が終了したため、
ますます手に入りにくいものになっている。

これに対し、人工林で育まれているのが「秋田スギ」。
間伐を行うため、材木に使える樹齢が60年くらいと、天然木に比べ若い木を使う。
そのため、天然秋田杉よりもぐっと安価な材木として、
住宅用などに多く使われているのだ。
木目の優美さなど、天然秋田杉にはかなわないところも多いが、
天然秋田杉の枯渇が叫ばれるいま、秋田スギの育成・加工が
今後大きな課題になってくることは間違いない。

そこで今回は、秋田スギを使った新しい生産システムで
製材および桶樽をつくる、大館市の株式会社沓澤製材所をご紹介。
沓澤製材所は昭和2年に創業し、80年以上の歴史を誇る伝統ある企業。
米代川沿いで秋田スギの山林経営をするところから始まり、
製材事業、桶・樽の生産など、秋田スギと天然秋田杉を使った
トータルなものづくりに取り組んでいる。
いったいどんな現場で、それらが行われているのだろうか?
沓澤俊和さんに製材所を案内していただいた。

沓澤製材所の歴史

沓澤製材所は、地域の豊富な木材資源を使った和樽のメーカー
「沓澤樽丸店」として営業を始めた。
しかし和樽の市場は既に存在していたため、どうしても後発に甘んじてしまう。
木材の調達も、業者と強いつながりがある先輩の後になってしまう。
そうすると和樽をつくることすらおぼつかなくなってくるのだ。

そこで考えたのが、材料の供給から自社で行なうこと。
自らスギ人工林を所有し、育成管理すること。
そして和樽のみならず桶製品の製造技術、製材の技術、集成材の技術の
総合メーカーになることだった。
これら一連のことが評価され、平成25年度農林水産祭にて
内閣総理大臣賞を受賞している。

こちらが沓澤製材所の社有林。

伐採し、原木の搬入を行なう。

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オートメーションの製材所

それでは製材所の現場を拝見!

うず高く積まれた秋田スギ。

積み上げられている秋田スギを工場内に運び込む。秋田スギはこの大きさで、だいたい60年生ぐらい。

皮を剥いだ秋田スギを板材・角材にしていく。

こちらは外側のほう。

製材所はほぼオートメーション化されている。

製材の現場では女性も多く活躍している。

製材し選別された木材には刻印が。

美しい年輪のモザイク。秋田スギは色がピンクで、フレッシュな香りが特徴。

沓澤製材所が秋田スギの発展のために行ってきたチャレンジのひとつが、
木材の「人工乾燥」。
未加工の木はそもそも水分を多量に含む。
それを木材に加工したときに乾燥が始まり、
乾燥による収縮で反りやサイズの狂いなどが起こるのだ。
そこで、あらかじめ乾かすことで強度や性能が上がり、
加工時に狂いのない安定した木材になる。

こちらが沓澤製材所にある、木材を乾燥させる人工乾燥機。燃料には、木材加工するにあたり削り取られた樹皮を使っている。

また樹皮はゴミにすると産業廃棄物になり、多額の処理料金がかかる。
そこで粉砕し、「木屑焚きボイラー」の燃料に。
「普通この作業は人間が行なうのですが、
単純作業は従業員のモチベーション低下につながります。
そこでオートメーション化し、ボイラー係もほかの作業に取り組めるようにしました」

ボイラーに投げ込む作業も完全オートメーション化した。

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桶と樽の違いって?

沓澤製材所では、こうして秋田スギの資材をつくるとともに、
秋田スギと天然秋田杉を組み合わせた樽や桶などの商品づくりも手がける。
それらは、北海道の飯ずしや千葉の醤油など、日本の発酵食品文化を支えるものだ。

ところで、「桶」と「樽」の違いをご存知だろうか?
その答えは「蓋が取り外しできるかどうか」。
簡単に言うと、杉でつくる桶は主として貯蔵用の容器であり、
樽は運搬用の容器で蓋がついているということ。

「樽というと、貯蔵や醸造用ということで、ウイスキー樽(洋樽)を連想しますが、
日本酒や醤油など日本古来の醸造においては桶が使われています。
杉の桶と樽のさらなる違いは、桶のほうが、樽より厚くて良い材料を使い、
しかもつくり方が精巧なこと。
昭和の中頃まで、樽と桶の職人はそれぞれ別々であったくらいです。
またつくり方では、樽はセンという刃物で削り取るだけですが、
桶は外側も内側もきれいに鉋をかけて仕上げます」

こちらは、樽の側面に使われる板目材。

「桶の側板は、丸太の直径の半分を使う“柾目材”を主に使います。
杉の赤味の部分だけを使い、従来通り手作業で割り、曲がりをつけたものです。
一方で桶の側板は、機械で木取りし曲げます。
またしっかりしたつくりのためにキチンとした乾燥が必要で、
これも先に紹介した人工乾燥機を使って管理されています」

職人技でつくられる伝統工芸品も、効率化が求められているのだ。
こちらも、つくっている現場にお邪魔した。

こちらが樽や桶をつくる作業場。

28歳の若い職人さんが、樽を組み立てる。

以前は「修業10年」と言われたが、現在では工程の効率化により、経験数年の若い職人さんでもいい桶や樽がつくれるようになった。

昔から受け継がれる道具たち。

なぜ、沓澤製材所は、秋田杉を使ったものづくりにこだわるのか?
「スギの魅力は中庸なところです。
醸造に向いていますし、何にでも使えます。特に食べ物にはぴったりです。
スギ以外の木だと、アクが多く出過ぎて食べ物の味を変えてしまうことがある。
杉は成分がまろやかで、味覚を変えず、醸造を進めるはたらきがあるんです」

なんでも、買ってきた味噌を味噌桶に入れるだけでも
まったく味が変わるんだとか。ぜひ試してみたくなった。
「昔は、お酒の醸造に使った後の樽を醤油用に使って、
その後は味噌用に、というリサイクルの仕組みがありました。
現在はそういう仕組みは残念ながらなくなってしまったのですが……」

そうしたサイクルは時代とともに姿を消したが、
ミニサイズの漬物桶など、現代のニーズに沿ったプロダクトを開発中。
いったいこれからどんなプロダクトが生まれるのか、楽しみである。

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木のあるくらし 秋田・沓澤製材所のいいもの

味噌・漬物桶(上蓋・中蓋付)二升用 コロカル特価:7,408円(税別)(限定10個) サイズ:外 直径22×高さ22cm(内 直径19.5×18cm)材料:天然秋田杉 樹齢200年以上(上蓋は秋田スギ60年生)

information

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沓澤製材所

住所:秋田県大館市釈迦内字街道上154

TEL:0186-48-3141

http://kutsuzawa-seizaisho.co.jp/

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