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連載

IOTカーボン
Part1:高機能な木炭で
木質廃棄物を有効利用。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.037

posted:2014.2.4  from:富山県富山市  genre:ものづくり

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
伊勢谷友介さんがパーソナリティをつとめ、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

古来より伝わる、自然由来の炭のチカラ。

世界最古の木造建築である法隆寺や伊勢神宮、
東大寺の正倉院などの床下にも敷き詰められているという炭。
除湿や脱臭の効果があり、古くから愛用されてきた素材だ。

両手のひらに載せた分だけで、
なんとサッカーコートと同等の表面積を持つという木炭がある。
炭は表面の小さな穴ににおいを吸着し、それが脱臭効果となる。
表面積が大きいということは、穴が多いということ。
つまりそれだけ吸着効果が高くなる。

この高機能な木炭は、
富山の廃棄物処理会社IOTカーボンの高温炭化炉でつくられている。
2002年に創業した木くずなどの木質専門の廃棄物処理会社だ。
かつては野焼きなど、比較的簡単に木材を燃やすことができたが、
最近ではダイオキシンの問題などから、
木材であっても容易に燃やすことができなくなった。
そんなときにIOTカーボンは処理会社として立ち上がったが、
燃やすだけではただ二酸化炭素を排出するだけで終わってしまう。
会社名からもわかるとおり、
炭化することで、木炭として次なる命を吹き込むのだ。

年間約6000トンの木質廃棄物がIOTカーボンにやってくる。
工場の敷地内には、一戸建ての解体材や、工場で使われるパレット、
線路の枕木、伐採した街路樹などが、きれいにわけられて並んでいる。
なかには富山名物であるます寿司のフタが
くり抜かれたであろう板も大量にあって、地域色があって面白い。

家屋の解体材。立派な構造材であったことが、太さから伺い知れる。

このように、太い釘などが刺さったままの木材も多い。粉砕しつつ、除去する作業も重要だ。

また、富山は水力発電が盛んな土地だ。
しかし冬になると、山に雪が降り、重みで木が倒れて川を下り、
発電用ダムに木材がたまってしまう。
それを除去した木材も、立派な木炭の素材となる。
富山には、木材を処理しなければならない状況が無数にあるのだ。

高温かつ密閉して炭化する技術で実現した高機能木炭。

IOTカーボンでは700~800度という高温の炉で木材を炭化する。
しかし一般的に木炭は、300~400度でも炭化できるという。

「当社でも、当初は400度程度の炉も使っていたのですが、
高温炉でできた炭が機能的にとても優れていたので、
400度のものは止めました」と語るのは、
IOTカーボン所長代理の越後厚志さん。

高温かつ密閉して炭化していることで穴が増え、
1グラムの炭で400平方メートルの表面積を実現。
一般的な備長炭は40平方メートル程度だというから、
IOTカーボンの木炭がいかに高機能であるかがわかる。

奥に見えるのが高温炉。最初に火をつけるために重油を使うが、すぐに密閉して、あとは空気の量を調整しながら、勝手に燃やしていく。極力エネルギーのかからない製造方法だ。

前述の通り、炭の小さな穴ににおいの分子を閉じこめることで
脱臭効果が得られる。さらに調湿効果も高い。
周囲の湿度が高いと湿気を吸って自分のなかにため、乾燥したときに放出する。
それは1日のサイクルのなかで行われ、1年という長い期間で繰り返される。
呼吸をしているようなものなのだ。

「炭は400~500度で焼けると酸性になります。
600~700度で中性に変わり、それ以上だとアルカリ性になります。
酸性雨ってありますよね。酸性寄りだと、土にあまりいい影響を及ぼしません」

そこで土に混ぜると根の成長を助ける土壌改良資材を
創業当初から発売した。
また、シロアリやゴキブリは酸性や弱酸性を好むといわれていることから、
アルカリ性の床下調湿炭を敷くと効果的だ。
本来、調湿・脱臭の機能を配した商品だが、意外な使い方も生み出している。

終始、謙遜した話しぶりだったIOTカーボン所長代理の越後厚志さん。人柄がわかるナイスな笑顔!

木質廃棄物は増えているのか?

「木質の廃棄物は増えつつあります。
ただしそれ自体の廃棄量が増えているというより、
今までなら自分たちで簡単に処理していたものを、せっかく処理場があるのなら
そこに持っていこうという意識が高まったのだと思います」と越後さんはいう。
IOTカーボンに処理をお願いするということは、炭化してほしいということ。
リサイクルしたいという思いと、
自分たちが出したものがゴミではなく、資源になるという気づき。

富山は海産物のイメージが強いが、立山を筆頭に山も多い。
しかし管理が行き届かず、林業が決して盛んとはいえない。
これまでは富山はロシアとの貿易が盛んで、
安い輸入材が富山を経由して日本に輸入されていた。
しかし数年前にロシアの関税が変わり、
日本に入ってくる木材の量が減ると、富山のひとたちもやっと、
自分たちのうしろにそびえる美しい森や山に目を向けるようになった。

そうして増えたのが間伐材。
かつては間伐するのはいいが、その場に切り捨ててしまい、
森や山から下ろしてこなくても成り立っていた。
これは切り捨て間伐と呼ばれ問題になっていたが、
IOTカーボンは受け入れ先として手を上げている。

木が砕かれてチップになった状態。ここから炭に焼かれていく。

産業廃棄物処理と木炭メーカーの狭間で。

IOTカーボンが持つ炭化炉は、1日に3トンの木炭をつくることができるが、
その材料には、木材が30トン必要だ。炭になるときには10分の1の量になってしまう。
炭をつくるメーカーとしては非常に効率が悪いかもしれない。
しかしIOTカーボンは産廃会社であり、
いかに大きなものを小さくコンパクトにまとめるか。これが第一義なのだ。
高温炉でなければもっと量をつくれるらしいが、量よりも機能性を追い求める。

全国に炭をつくっている会社はいくつかあるが、
年間約300トン規模は、そう多くない。
産廃処理会社なので、廃木材を持ち込むさまざまな業者は、
IOTカーボンにわざわざお金を払って廃材を処理してほしいと持ち寄るのだ。
廃木材を、あまり遠くの場所に運んでいては、コストもかかるし、
せっかく環境へ配慮した商品をつくっているのに
無駄なエネルギーがかかってしまう。だから富山の木材がほとんどだ。
木炭をつくるのに材料費はかからないわけだ。
だからこそ、大量生産ではなく高機能な木炭にすることによって、
炭が持つ古来から伝わる自然のチカラをメッセージとして世に送る。
木炭のみを実直につくり続けている企業だから。

富山で生まれた廃木材を富山で処理するという地産地消。
富山は、IOTカーボンがあるので、廃木材処理に恵まれている先進地域といえるのかもしれない。

ボード状にする商品もある。このかたちは何になるのでしょうか? 詳細は次週。

information

map

アイオーティカーボン株式会社

住所:富山県富山市松浦町9-30
http://iotc.co.jp/

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