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連載

ビルススタジオ vol.2:
もみじ、それぞれの事情。

リノベのススメ
vol.005

posted:2013.11.8  from:栃木県宇都宮市  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  地方都市には数多く、使われなくなった家や店があって、
そうした建物をカスタマイズして、なにかを始める人々がいます。
4つの都市から週替わりでお届けする、リノベーションの可能性。

writer's profile

Taisei Shioda

塩田大成

しおだ・たいせい●栃木県宇都宮市生まれ。株式会社ビルススタジオ代表取締役。建築設計そして不動産のみならず、界隈のデザインを含め、「場所づくり」を生業とするが、実はただの物件好きで貧乏性のお節介さん。
http://www.met.cm/

巻き込み、巻き込まれ、できてゆく

2013年10月12日快晴。「あ、もみじずき」イベント当日、
閑静だったもみじ通りに人が溢れてしまいました。
いや、通りではなくそれぞれのお店、
その内外に人が溢れていました、と言ったほうが正しいかもしれません。
その様子を眺めながら、
数年前にそれぞれのオーナーさんと出会った頃をしみじみと思い出していました……。

あ、もみじずき当日の様子。

まずはドーナツ専門店「dough-doughnuts」(ドー・ドーナツ)の石田友利江さん。
今や県内随一のドーナツ店となりましたが、
思えば彼女は、もみじ通りでもなく当社で扱ってもいない物件についての相談で、
いきなりオフィスに現れたのでした。

石田さんは思い立ったら変な確信をもって、ガッと動いてしまう方。
正直、人とそんなにいきなり距離を縮めたいとは思わない私とは水と油のはずが、
私とは何も関係ないその物件での出店にいつのまにか協力することになり、
巻き込まれていきました。
栃木にUターンしてくる彼女からは地元のブランクを埋めるべく、会うたびに質問攻め。
しまいには「栃木でドーナツ専門店ってどうなの?」という、そもそもの相談までされる始末。

しかし、そんなふうに色々と意見交換しているうちに数か月経過。
なんだか悪くない気がしてきた頃、
「もみじ通りに出店できるトコあるの?」との問いが不意にでてきました。
“えっ!?”とは内心思いつつ、「そうだ、そういう人だった、この方は……」と再認識。
慌てて空き物件を探してみると、私のオフィスの3軒隣に空いているコが。
特になんの変哲もないビルのテナントっぽい物件でしたが、
先に出来たカフェ食堂は私のオフィスより西に3軒隣、こちらは東に3軒隣。
……ここだっ!
という説得力のない確信を元に、上に住んでいる大家さんに相談。
話はひとまず聞いてくれたのと、
石田さんに似てさばさばした感覚を持っている大家さんだったので、
“本人に会ってもらえれば大丈夫かな”と思い、
勝手に次週連れてくると約束してしまいました

早速石田さんへ報告し、「来週大家さんに会うから、ドーナツの試作品持ってきて!」と依頼。
「うんっ、わかった」
と、きっと彼女は意味も分からないまま了承(←こういうトコも凄いです)。
当日、大家さんへの紹介はそこそこに「下でこんなものを売りたいので、食べてみてほしい」と、ドーナツを数点差し出しました。
そんなこんなで、入居が決まりました。

元やきとり屋のこの物件。

欧州アンティークな家具建具を贅沢にあしらっているな、と思ったら、なんとお姉さんが目黒区のFOUNDの方でした。

コンビニより近い所で毎日でも食べたくなるおやつが買える。
手土産にもちょうどいいし、子どもだけで食べにきている風景もほほえましい。
自分の生活する近所にこんなお店がある人って実はあまりいないんじゃないか、と思います。

前回で紹介したカフェ食堂「FAR EAST KITCHEN」ができた頃、
行くと必ずと言っていいほど居る、「梅園さん」という方がいました。
ひとり客同士だったので、なんとなく同じテーブルに通され、
オーナー藤田さんに紹介され、自然と話すように。
梅園 隆さんは、生まれも育ちもこのもみじ通り界隈。
もともとは自分で豚と卵の生産と直配をしていて、
今は契約農家も巻き込み、野菜も扱っているとのこと。
話では、せっかく良い食材を売ってもそれを上手に調理してもらえてない、とか、
近所には単身の高齢者が多く、
デパートやコンビニで食事を買っているので身体が心配だ、とか、
不満が溜まっているようでした。
さらには、お母さんたちが働ける場所がもっと必要だ、との想いも持っていました。

その頃には私は自宅ももみじ通りに移し、完全なるもみじ住民になっていたこともあり、
家メシのお供においしいおかずの必要性を感じていた頃でした。
そこで私は「この界隈にはきちんとした総菜屋さんが求められているんじゃないか」と
ことあるごとに梅園さんに言ってみました。

気がつけば、梅園さんがどうやらソノ気になってくれたので、
候補物件の大家さん(実はドーナツ店と同じ)にこれまた総菜の試作品を持って、
相談しにいきました。
この大家さんは毎日の食事事情に苦労している単身の高齢者さん。
まさに、今回オープンする総菜屋のターゲット。
当の総菜は塩分・油分を極力減らしつつも味わいのあるもの。
しかし、オーナーさんと梅園さんは、
私そっちのけで、この界隈の昔話で盛り上がっていました。

そうして総菜店「ソザイソウザイ」の出店も、決まりました。

元カラオケスナックだった当物件。解体作業と漆喰塗装は自分たちで行っていました。モルタルだった床には墨汁を塗り込んでいました。

梅園さんが、キャッチコピーとして掲げている、
「まじめなソザイとまじめにつくったおいしいソウザイ」の通り、
いい素材を使い、塩分ではなくダシでその素材の旨味を引き出しています。
……というとなんだか難易度の高い味のようですが、そのままが本当においしい。
毎日いや、毎食いけます。
まさに近所に一軒、欲していた総菜屋さんが誕生したのです。

こちらが、梅園さん。

出店・入居までの事情や流れはそれぞれにもっともっと語り尽くせない物語があるのですが、
ざっとこんな感じで出店してきています。
徒歩3分圏で質のよいお店が集まりつつあり、生活者としてはとても良い状況にあります。

改めて思ったことは、“まちは人”だなと。
単に店舗だけがオープンしても、
これらの良いお店たちを日常で使い倒す(リピーターになる)、お客さんが必要です。
積極的にこの地域を「選んで住まう」住人がまちには増えてこないと意味がないのではないか。
という新たな課題が見えてきたわけです。
では、その地域を気に入って住民となる人たちはどういう住まいを欲しているのか。
そんな想いで悶々としていた2012年夏、
後に栃木県初のシェアハウス「KAMAGAWA LIVING」のオーナーに意図せずしてなってしまった、
森さん(仮名)との出会いがあったのです。

つづく

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ビルススタジオ

住所 栃木県宇都宮市西2-2-24
電話 028-636-5136

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