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連載

〈中川一政美術館〉で
一政の書の魅力を
書家・川尾朋子が読み解く

真鶴半島イトナミ美術館
作品No.21|Page 2

posted:2017.3.6  from:神奈川県足柄下郡真鶴町  genre:アート・デザイン・建築 / 旅行

sponsored by 真鶴町

〈 この連載・企画は… 〉  神奈川県の西、相模湾に浮かぶ真鶴半島。
ここにあるのが〈真鶴半島イトナミ美術館〉。といっても、かたちある美術館ではありません。
真鶴の人たちが大切にしているものや、地元の人と移住者がともに紡いでいく「ストーリー」、
真鶴でこだわりのものづくりをする「町民アーティスト」、それらをすべて「作品」と捉え、
真鶴半島をまるごと美術館に見立て発信していきます。真鶴半島イトナミ美術館へ、ようこそ。

editor profile

Ichico Enomoto

榎本市子

えのもと・いちこ●エディター/ライター。コロカル編集部員。東京都国分寺市出身。テレビ誌編集を経て、映画、美術、カルチャーを中心に編集・執筆。出張や旅行ではその土地のおいしいものを食べるのが何よりも楽しみ。

photographer profile

MOTOKO

「地域と写真」をテーマに、滋賀県、長崎県、香川県小豆島町など、日本各地での写真におけるまちづくりの活動を行う。フォトグラファーという職業を超え、真鶴半島イトナミ美術館のキュレーターとして町の魅力を発掘していく役割も担う。

Page 2

一政が額をデザインした作品も多数展示されている。「きれいな額に入っていれば行儀よく上品に収まるけれど、それを避けたかったのでは」と川尾さん。(撮影:中嶋礼央)

また今回の展示では、絵画の額縁に模様が施された作品も展示している。
これは絵に合わせて一政がデザインし、木の額に
直接模様を彫ったり描いたりしているというユニークなもの。
川尾さんは、ここにも書の要素が表れているという。
「日本を含め東洋には掛け軸の文化がありますから、
きっとこの額もそういう感覚で、全部含めて作品としたんでしょうね」

著名デザイナーを文字ってピエール・カズサンとして、絹のネクタイ生地に直接模様を描いた作品。商品化はされておらず、一政は楽しんで描いては知人にプレゼントすることもあった。亡くなった俳優の緒形拳も身につけていたという。「これもとてもすてき。先生は本当はとても真面目なんだけど、みんなを楽しませるような面も持ったチャーミングな方だったんでしょうね」と川尾さん。

さらに、一政の風景画を見た川尾さんは、「うわぁ」と思わず感嘆の声を漏らした。
「すごくいいですね。ゴッホやセザンヌに影響を受けたというのもわかります。
筆遣いがとてもおもしろいですね」

ひとつの作品の中にいろいろなタッチが混在する。筆の使い方がうまく、
それも書に通じているのかもしれないと川尾さんは感じたそうだ。

筆致に表れる生き生きとした表現

川尾さんは、NHKの大河ドラマ『八重の桜』のオープニング映像で作品が使われたり、
商品や企業の広告などでも活躍するが、一政はその先駆けだという。

「どんどんフォントになっていく世の中で、本の題字や商品のパッケージなどで
筆文字を広めてくれた中川先生は偉大ですし、そうやってボーダレスに制作することで、
いろいろなカテゴリーの垣根を取り払ってくれたというのは、
先生が残された大きな功績だと思っています。
先生もそうすることが楽しかったんじゃないかな」

川尾さんの代表作のひとつに「呼応シリーズ」と呼ばれる作品群がある。
作品において目に見える部分だけではなく、
空中での筆の動きをテーマにしたシリーズだ。
空中でどう筆が動いたのかを想像しながら過去の作品を捉え、
どう筆を動かしたらおもしろいか、身体の動きによって表現する。
それは書道以外の普遍的なことにもつながるのでは、と考えている。

「書道の特徴のひとつとして、書き順が決まっているということがあります。
3千年前に書かれたものでも、どこから書いて
どこで書き終わっているかというのが読みとれるんです。
たとえば日本の書家のスーパースターである空海でも、
その書を読み解けば、同じように筆を動かして追体験ができる。
それって魅力的ですよね? 先生の書や絵を見ていても、
ここは筆が速く動いているなとかリズムを感じます。
特にバラの作品はとてもリズム感にあふれていて、
それが生き生きとした躍動感ある表現につながっていると感じました」

真鶴を描いた絵を前に「これは特に光にあふれている感じがしますね。海の光なのかな」と川尾さん。

一政のことは書家として尊敬していたという川尾さんにも、
新たな発見が多々あったようだ。
今回のイベントがきっかけで初めて真鶴を訪れたという川尾さんは、
真鶴をとても気に入ったと話す。

「すごく光に満ちあふれているまちだと思いました。
素朴なところが残っていて、まちの人も温かいし、食べ物もおいしいし。
“幸せのまち”ですね。先生もそういうところが好きだったんじゃないかな。
みんなに紹介したい、いえ、やっぱり身近な人にしか
教えたくない場所ですね、観光地化されないように(笑)」

profile

TOMOKO KAWAO 
川尾朋子

兵庫県出身、京都市在住。書家。6歳より書を学び、国内外で多数受賞。2004年より祥洲氏に師事。NHK大河ドラマ『八重の桜』のオープニング映像や、TEDでのパフォーマンスと作品の発表など、さまざまなフィールドで活躍。自分が文字の中に入り込み、iPhoneをモニターとリモコンにして撮影する「人文字シリーズ」にも取り組んでいる。

information

map

真鶴町立中川一政美術館  
中川一政の装丁とデザイン

会期:2016年12月1日(木)~2017年3月28日(火)

住所:神奈川県足柄下郡真鶴町真鶴1178-1

開館時間:9:30~16:30(入館は16時まで)

休館日:水曜日(祝日の場合は開館)

http://www.nakagawamuseum.jp/

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