連載
〈 この連載・企画は… 〉
田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。
writer profile
CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森
こんにちは。
「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
柿の旬がやってきましたね!
今年の秋は暖かったので、柿が熟すのもずいぶんと早かった気がします。
柿の木は、よく実る「表年(おもてどし)」と、
あまり実らない「裏年(うらどし)」があり、それが交互にやってきます。
今年、我が家の柿は裏年でしたが、表年の柿木の威力はそれはそれは強烈で、
立派な柿が枝にいくつもぶら下がり、実の重さで枝がしなるほど。
次々と熟れて、落っこちた柿のあと始末も大変です。
熟れた柿は、ニホンミツバチの天敵・オオスズメバチを呼び寄せる餌になるので、
養蜂をやっている我が家ではシビアな問題!
そんなわけで、この季節になるとたっぷりと柿がとれたおうちからも
お裾分けをたくさんいただきます。
そのままフレッシュで食べても、熟してドロドロにして食べてもおいしいのですが、
ちょっと目を離した隙に腐っちゃった、
カビが生えちゃった、なんていうこともよくあります。
なんなら「柿が発酵して酢になっちゃった」というときも。
柿が熟れすぎて困った、という方、意外と多いと思います。
そこで今回は、熟しすぎた柿を救出する「柿のレシピ」をご紹介します。
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熟れすぎた柿、見た目が少しグロテスクで嫌われがちですが、
甘みがグッと増してとってもおいしい食材に大変身します。
ヨーロッパでは、とことん熟して甘くしてから出荷するカルチャーもあるのだとか。
おうちに熟した柿があったら、捨ててしまうのはちょっと待って!
我が家であれこれ試しておいしかった柿のレシピ、まずは試してみませんか?
熟した柿をさっと洗って冷凍するだけ。
スプーンですくって食べると、上品な甘さのデザートに!
熟して糖度が高まった柿だからこそできる、自然のシャーベットです。
小さく刻んだ柿をきび砂糖(柿の重さの30%)と煮て、
最後にレモン汁をお好みで入れて完成。
レモンの酸味が飛んでしまうので、レモンを入れたあとは煮込まないのがポイント。
脱気保存しておけば、パンに塗ったり、パイをつくったり、
お菓子に入れてみたり、アレンジできて◎。
熟した柿の種をとり、いつものカレーに混ぜるだけ。
コクが増して、一気に本格カレーの味になります。
トロトロの柿にお肉をつけると、お肉がやわらかくなります。
ニンニク・醤油・柿で下味をつけて、炒めものに。
さて。これが大本命。
我が家のウスターソース、実は柿でつくります。
昨年、表年で柿が数百個もとれ、干し柿にするには熟しすぎてしまった柿たちが
かごの中で次々と追熟してしまい、どうしたものかと悩んでいました。
ジャムもシャーベットもおいしいんですが、
「甘いものはそんなにたくさん食べられない」というのが正直なところ。
柿たちをどうにかおいしい保存食にできないものかと考えた末、
ピンと来たのが、このウスターソースです。
柿が熟すたびにこのソースを仕込み、改良を重ねていくうちに
気がつけば1年分にもなる量のウスターソースを自給していました。
一度つくったらやみつきです! おうちでもぜひ挑戦してみてください。
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<材料>
・熟した柿 3〜4個
・玉ねぎ 1個
・にんじん(葉っぱつきならなおよし!) 1本
・セロリ 1本
・ニンニク 3片
・トマト缶 1缶 (生のトマトなら約400グラム)
・生姜 半かけ〜ひとかけ
・塩 約30グラム(味をみて決めてください)
・醤油 約100ミリリットル
・酢 約100ミリリットル
スパイス(量はお好みで)
・クローブ
・シナモン
・ブラックペッパー(ホール)
・ローリエ など
<つくり方>
(1)玉ねぎとニンニクをミキサーにかけたあと、鍋でじっくりと炒めてコクを出します。
(2)種をとった熟した柿、にんじん、セロリ、トマト、生姜をミキサーにかけてドロドロにします。
(3)(1)に十分火が通ったら、(2)を入れて煮ます。
(4)塩、スパイス、醤油を入れて軽く煮ます。
(5)酢を回し入れ、ひと煮立ちしたら熱々の瓶に入れて蓋をし、逆さにして脱気します。(酢の風味が飛ぶので、煮込みすぎないこと)
本当はこのあとサラシで濾したりするのですが、
我が家ではどろっとしたソースをそのまま料理にかけて使っています。
アジフライにかけても、お好み焼きのソースにしても、カレーに入れても絶品です。
このウスターソースのポイントは、
・野菜と熟した柿の水分だけでつくる
・お砂糖を一切使わず、柿の甘みとコクでつくる
というところ。
野菜と柿の旨みがギュッと詰まった、濃厚なウスターソースに仕上がります。
しっかりと脱気して暗い所で保管すれば、1年くらいもちます。
脱気に自信がない方は、冷蔵庫保存のほうが安心かも。
開封したら、冷蔵庫保存で早めに使いきってください。
このレシピが誕生したのは、ちょうどキッチンに間引きしたにんじん、
収穫したばかりの生姜、季節外れにとれたトマトがあったことがきっかけでした。
これでウスターソースがつくれるんじゃない? というところに、
行き場を失っていた熟した柿がベストマッチ!
ちょうど柿が熟れるタイミングで、奇跡的に食材が揃いました。
「お砂糖を使わなくていい」というのもうれしい発見です。
自家製ウスターソース、一度つくったらもう手づくり以外
食べられなくなっちゃうようなおいしさです。
熟した柿でしかつくれない特別レシピ、ぜひ試してみてください!
「近くで柿が手に入らない」という方には、
無農薬の柿や甘夏、ビワなどがとれる、
いとしまシェアハウス果樹オーナー制度もどうぞ◎。
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