連載
posted:2018.10.9 from:福岡県糸島市 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。
writer profile
CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森
こんにちは。「食べもの・お金・エネルギー」を自分たちでつくる
〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
先日、我が家で「三和土(たたき)土間」をつくるワークショップを行いました。
三和土土間とは、日本家屋の土間をつくる伝統的な手法で、
土に石灰・にがりなどを混ぜ合わせ、叩いて固めて仕上げたもののことをいいます。
今時、昔ながらの土間を新しくつくる機会はなかなかないと思うので、
ここでレポートしていきたいと思います!
我が家の玄関は、もともとは土間だったと思うのですが、
洋風の応接間が流行った時代にベニヤ板の板間がつくられていました。
ですが年月とともに傷んで剥がれ、今では歩くと剥がれた板が引っかかって危ないので、
ガムテープで留めて(!)なんとかやり過ごしてきました。
この場所も、リノベーションしなきゃねという話はずっと出ており、
夫は一番に土間を提案していたのですが、
実は私、板間をなくしてしまうのはもったいない……! と思っていました。
板間のほうが靴を脱いでくつろげるし、
最初は土間ではなく「床張りをし直す」という選択肢を推していたのです。
でもこの5年、このスペースの使われ方を見てみると、人がくつろぐというよりは
ただモノが置かれる場所&人が行き来するだけのデッドスペースとなっていました。
ここに新しく床板を張っても、きっとただの“きれいな通り道”になってしまう。
「板をはがして土間にして、薪ストーブやテーブル・イスを置いたら、
人が集まる場所になるよね。
畑や田んぼから帰ってきたとき、靴の脱ぎ履きが簡単になるよね」
そんな夫の提案もあり、ついに土間づくりをすることになったのです。
今回は、連休に合わせて2泊3日の大型合宿を組みました。
自分の家にも三和土土間をつくってみたいと岡山から参加されたご夫婦や、
鹿児島から5時間車を飛ばしてきてくれた大学生たち、
大工インレジデンスに応募してくれたメンバー、
ワークショップ常連さんに、入ったばかりの新住人などなど、
キャラクターの濃い面子が大集合。
なにやら楽しい時間になりそうな予感!
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初めての土間づくり。
床下は、板を剥がしてみないと下から何が出てくるかわからないので、
果たして2泊3日で完成まで持っていけるのか……?
どきどきの合宿、始まりです。
まず、初日はボロボロになった床を剥がす作業からスタート。
パワフルな男性陣のおかげで、みるみる板が剥がされ床下が見えてきます。
あっという間に根太も撤去され、解体作業は午前中に終わってしまいました。早い!
床板がないだけで、全然違う場所に見えますね。
午後からは土を入れていくのですが、土の量があまり多くないので、
かさ上げのために床下にあったブロックや割れた瓦などを砕いて敷き詰めていきます。
その間に、別グループは三和土土間の土づくり。
赤土と消石灰と塩化マグネシウム(にがり)を混ぜていきます。
主な原料である赤土は粘土質な土。
そこに硬化作用のある消石灰と、保水作用・凍結防止作用がある
塩化マグネシウムが追加されます。
割合としては赤土3:消石灰1の割合で土を混ぜ、
そこに6%濃度の塩化マグネシウム水溶液を入れていきます。
土を混ぜるだけというと簡単なように見えますが、量が多い!
軽トラ一杯、全部で1.6トンほどあったのではないでしょうか。
粒子の細かい石灰はむせるのでマスクが必須です。
トラックから土を下ろすだけで
Tシャツがびしょびしょになるほどの汗だく状態。
(でも何も考えずに体を動かすのって気持ちいい!)
混ぜ込んだ土を土間まで運び、平らにならします。
1日目はここで終了!
2日目は、土を叩く作業。
木やレンガでただ、ただ、土を叩くだけのシンプルな方法です。
力を入れすぎると叩いた跡がついてしまうし、
1か所だけ集中して叩くと高低差が出てしまうので、
細かく、広く、叩いていくのがポイントなのだとか。
3日目は、土間によくある「敷台(しきだい)」づくりに入ります。
これは土間と部屋をつなぐ、一段低くなった板敷きの部分のこと。
ここに腰掛けてお茶を飲んだり、靴を履き替えたりするのです。
大家さんからもらってきた板をみんなでやすりがけし、滑らかにしてから、
参加してくれた大工さんがピッタリの大きさに切って仕上げていきます。
そして夕方あたり、念願の土間ができあがりました!
土間をつくった、というよりは
「もとの状態に戻した」といったほうがしっくりくるほどの自然な仕上がり。
三和土土間は手で叩いて固めるという昔ながらの方法なので、
表面は少しデコボコしていますが、人のぬくもりが感じられてあたたかい雰囲気です。
消石灰の硬化作用で土は固まり、カチカチになるので土ぼこりも立ちません。
汚れてきたら箒でさっと履けばいいのでお掃除も楽ちん。
お水を使ったお掃除は避けたほうがベターですが、
土が叩き締めてあって密度が濃いため、水で土が流れるということはないかなと思います。
板間を減らすとスペースが狭くなってしまうのではと思っていましたが、
土間が一段低くなったことで空間に高低差・奥行きが出て、
天井が高く、さらに家が広く感じるようになりました。
ここに薪ストーブ、置きたいなあ。
ここでライブや映画上映ができたらすてきだなあ、と想像が膨らみます。
つくったばかりなのに、ずっとここにあったかのように
不思議と馴染んで、すぐにお気に入りの場所になりました。
家の入り口である玄関が風通しのいい場所になったことで、
さらに“何かいいこと”が我が家に舞い込んできそうな予感がします。
三和土土間の制作風景を動画にしました!
こちらもぜひご覧くださいね。
10月20、21日の1泊2日で稲刈り合宿を企画しています!(1日参加もOK)
無農薬無肥料のお米、ひと束のお土産つき。
自分たちが食べているごはんがどうやって育ち
食卓までのぼるのか、一緒に体験できたらうれしいです。
糸島でも絶景といわれる美しい石垣の棚田に遊びにきてみませんか?
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合宿中は、作業を頑張れるようにと、
お昼ごはんも、おやつ休憩も、おいしいものをいっぱい並べました!
夜は毎晩パーティーで楽しかったなあ。
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