連載
posted:2014.12.16 from:東京都神保町 genre:ものづくり
sponsored by 貝印
〈 この連載・企画は… 〉
プロダクトをつくる、場をつくる、伝統をつなぐシステムをつくる…。
今シーズン貝印 × colocalのチームが訪ねるのは、これからの時代の「つくる」を実践する人々や現場。
日本国内、あるいはときに海外の、作り手たちを訪ねていきます。
editor profile
Tetra Tanizaki
谷崎テトラ
たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。http://www.kanatamusic.com/tetra/
photographer
Suzu(Fresco)
スズ
フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/
コンテンツワークスはオンデマンド出版のリーディングカンパニー。
絶版本の復刻サービスから始まり、
さまざまなスタイルを叶える個人のフォトブックサービスで知られている。
いま高齢者のインタビュー本や地域ジャーナルなど、
オンデマンドを使った新しいライフスタイルを提案する会社へと進化してきている。
オンデマンド出版とは、ユーザーの注文に応じて印刷・製本をする
オーダーメイド型の出版方法。書店で売られる本と異なり、
自分の出したい本や自分の読みたい本を一冊からでもつくってもらえるサービスである。
コンテンツワークスの起業は2001年。
ブック・オン・デマンドによるコンテンツの販売の先駆けとして始まった。
代表取締役社長の荻野明彦さんは
オンデマンド業界では一番の経験と知見を持っているひとりといわれている。
そもそもの起業のきっかけについてお聞きした。
「もともと大手コピー機メーカー、富士ゼロックスの社員だったんです。
ゼロックスの社内プロジェクトから始まり、
大手の出版社とで合弁で会社が生まれました。
私はMBO(マネージメントバイアウト)で会社の社長になりました」
荻野さんからみた出版業界の変化はどのようなものだろう。
「日本で1年間で7万点の書籍が出版されますが、その多くが絶版になる。
絶版本をなくすためにオンデマンド出版を進めてきました。
はじめはコミックや文芸書、
やがてロングテールというビジネスモデルが出てきました。
一冊が1万冊売れるのではなく、
一冊ずつ1万種類の本を売るビジネスモデルなんです」
書店の店頭は毎月刷新される。
売れ筋でないものは3か月ほどで書棚から消えていく。
書店から消えていき、絶版になったものを
Webで再び購入できるようにするサービスだ。
少部数でも末永く売れ続ける良質の書籍をWebで提供するというわけだ。
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コンテンツワークスの手がける「BookPark(ブックパーク)」では、
コミックだけで1万冊、
ビジネス系や文芸系の本や論文を入れると70万冊以上の絶版書をデータ化している。
それを注文に応じて「本」のかたちに甦らせる。
「たとえば『ダイアモンドハーバードレヴュー』。
創刊号からすべての論文をアーカイブしている。
それを記事ごとに販売するということも行ってきました」
それによって書籍の買い方、使い方もこの10年で変化を遂げてきたと荻野さん。
「しかし絶版になる本には、売れなくなった理由がある。
日本は新刊本があふれているので、マーケット的にも、
ビジネス的にも古い本に目を向ける余裕がない。
いまでも続けていますが、ビジネス的にはあまりうまくいかないのがわかった」
荻野さんはオンデマンドの特性を生かして、
ユーザーのニーズにあわせて印刷・製本をする、
オーダーメイド型の個人のフォトブックサービスを思いつく。
現在コンテンツワークスの主力サービスであるPhotobackは、
家族やペットの写真など、自分の好きな写真を編集して、
オリジナルの写真集をつくるというもの。
「新しいビジネスをと考え、新しいフォトブックサービスとして、
最初はCDサイズの本をつくることをはじめました。
ちょうど一眼レフブームとデジタルカメラの普及がありました」
ユーザーはデジタル画像をWebサイトにアップロードして編集するだけで、
一冊単位からオリジナルの写真集を作成できる。
版型もページ数も多彩になり、さまざまな印刷メニューが加わった。
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Photobackのサービスのポイントはなんだろうか。
荻野さんに聞いてみた。
「軸は“紙にこだわる”ということなんです」
と荻野さん。
「昔は最初に紙でつくって、それをデジタル化してきていましたよね。
カタログひとつつくるにしても、
印刷したカタログからスキャンしてウェブカタログにするとか。
本をスキャンしてデジタル本をつくるとか。
いまは逆なんです。コンテンツは最初からWebにあげている。
そこで終わってしまっている。
それを“紙”におとす仕組みって以外とないんです」
コンテンツは豊富にある。しかしそれはすべてWebのなかにある。
では、どのように紙におとすのがよいのか。荻野さんは考えた。
「紙の役割って何かって考えたときに、
“想いをより伝えるメディアになるんじゃないか”って考えたんです。
わざわざ紙にしなくてもいろいろできる時代に、
わざわざ紙にするというのは“想い”があるんです。
それにプラスして、紙ってモノじゃないですか。
たとえばポンとここに写真をおくと、ここに“場”ができる。
この“場”って何だろうって考えてみたんです。
紙におとす意味をお客様に提案しようと思った。
“想いを伝えること”の意味、それは感謝だったり愛だったりするんです」
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「紙」にこだわるということは、「素材」にこだわることでもある。
「手触りとか、めくったときの感じとか、重さとか。
手に触るものなので重視しています。
当社を選んでくださるユーザーさんは、なんとなくかっこいいとか、
デザインとかで評価してくださっているのですけど、
それは“紙”によるところが大きいんです」
たとえばPhotobackはサイズによってすべて紙が違う。
ページの大きさによってめくったときに感じる手触りが変わる。
厚みによっても変わってくる。
一枚のハガキを差し出した。
「この厚さがあると写真が立てかけられる。
厚みによって写真を大切にしていることがしっかり伝わる。
コレクションすることもできます」
そういうことを大切にしたい、と荻野さんは語る。
「いままで僕らは利便性の観点から
機能やシステムを考えてオンデマンドをやってきたのだけど、
これからは気持ちを伝えるメデイアとしての位置づけを進めていきたい」
そう語る荻野さん。
次回はコンテンツワークスが提案するライフスタイル。
写真や紙を使って気持ちを伝えることで生まれる、新たなサービスや提案、
ひとのつながりについてお話をお届けします。
後編:ひとの「想い」を伝える紙メディアオンデマンド出版ができること。「コンテンツワークス」後編 はこちら
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コンテンツワークス株式会社
住所:東京都千代田区神田神保町2-4
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