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土地の自然、文化、ものづくりを
楽しく学ぶ山歩きツアー
「YAMAMORI PROJECT」後編

貝印 × colocal
これからの「つくる」
vol.032

posted:2014.12.9  from:山形県山形市  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  プロダクトをつくる、場をつくる、伝統をつなぐシステムをつくる…。
今シーズン貝印 × colocalのチームが訪ねるのは、これからの時代の「つくる」を実践する人々や現場。
日本国内、あるいはときに海外の、作り手たちを訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/

前編:森から木工製品まで、すべてを循環し、つなげるプロジェクト「YAMAMORI PROJECT」前編 はこちら

土地の文化を、土地のひとに聞く

朝9時、山形県南陽市の赤湯駅から車で10分ほどのぶどう園「紫金園」に
30人ほどが集まっている。
ここは盆地なので、霧がたまりやすく、朝もやのなかといった風情だ。
これから始まるのは、
YAMAMORI PROJECTが行っているYAMAMORI TRAVELの9回目。
目の前にある、斜面をブドウ畑が覆っている
十分一山(じゅうぶいちやま)を登っていく予定だ。

YAMAMORI PROJECTは、一級建築士の井上貴詞さんと、
家具製作に携わる須藤 修さんによって立ち上げられ、
山形県内で山や森を舞台にしたツアーの企画やプロダクト製作などを行っている。
その一環として取り組まれているのがYAMAMORI TRAVEL。
前編でも紹介したように、各市町村を代表する山の文化を勉強し、植生を学ぶツアーだ。

といっても、小難しい勉強や本格的な登山が待っているわけではなく、
ハイキングのようなもの。おいしいランチやデザートがついていたり、
ワークショップ形式で木工製品がつくれたりと、
自然のなかで楽しむことができるような仕掛けになっている。

井上貴詞さんと須藤修さん

井上貴詞さん(左)と、須藤 修さん(右)による朝のごあいさつ。(撮影:編集部)

この日集まったのは、県内を中心に30名程度。常連さんも少なくない。
リピーターになりやすいほのぼのとした空気なのだ。
ツアーを仕切る須藤さんの挨拶のあと、全員が輪になって簡単な自己紹介。
そして早速、紫金園の須藤孝一さん・龍司さん親子による話が始まった。

南陽市はぶどうの産地で、この周囲にもぶどう狩りができるぶどう園がたくさんある。
十分一山は、斜面に沿うようにしてぶどう畑が広がっている。
その理由を参加者に説明してくれた。

「水はけと日当たりがよく、寒暖の差があるので、ぶどう栽培には適している土地です。
しかし石が多く、土を掘っても大きな石ばかり出てきます。
だから立ち木は難しかったんだろうと思います。
ぶどうはつる性なので、育てやすかったのかもしれません」

ほかにも、気候の話、金が採れた話など、土地の話をしてくれる。
これから登る山もだんだん身近に感じてくる。

家族で経営されている4代目・須藤さん夫婦

家族で経営されている4代目・須藤さん夫婦。

次は紫金園のぶどう酒工場へ。
本人たちも「いつからあるかわからない」という手動“ぶどう絞り機”は、
樽の内側がおいしそうなくらいのぶどう色。
長年にわたって染み込んできたエキスに違いない。
栽培、収穫から醸造や瓶詰めまで、家族の手で行われている。
これから山を歩くため、みなワインの試飲は控えめだったが、
ぶどうジュースの試飲には感激の声があがる。実に濃厚なのだ。

紫金園のぶどう酒工場の樽

染み込んだ色の濃さが年代を物語る。

Page 2

山歩きしながらのコミュニケーション

ここから進行役は森林ガイドのカベさんこと、白壁さんにバトンタッチ。
1回目からガイドを担当し、
YAMAMORI TRAVELの雰囲気づくりに大いに貢献している。
山道を歩いては止まり、植物の解説をしてくれる。また歩いては、何かを見つける。
ただ言葉で説明するだけでなく、
実際に実を割って種を採り出してみたり、においをかいでみたり。
ヘクソカズラをみつけては、リースをつくって参加者にプレゼントしたりする。

森林ガイドのカベさん

森林ガイドのカベさんは、山形の森を知り尽くす。(撮影:編集部)

「少し参加人数が多くなってきましたが、このくらいがギリギリだと思っています。
なるべくそれぞれとコミュニケーションを取りたいんです。
だれとも話さずに終わってしまったというひとがいないようにしたい」という井上さん。

「ぼくたちがひとりひとりと話せない人数にまで増えるとあまりよくない。
講師をしてくれるひとも、
普段人前に出て話すことに慣れているひとたちではありません。
だからしっかり話を聞くには、人数が多すぎると難しいと思っています」と須藤さんも続ける。

ただ頭で「山を知る」のではなく、その体験に対して心が共感してほしい。
そうならないと、その後のアクションにつながっていかない。
それには人数も影響してくる。

「木のある生活がいいなぁと純粋に共感してもらうには、
少人数による濃密なコミュニケーションが必要だと考えます。
理解度を深めると、“ちょっと使ってみようかな”と一歩前に進みだす。
ただの興味関心だけでふわーっと帰るのではなく、
もう一歩踏み出してもらいたいです」(井上さん)

先頭から小枝や実が列に回ってくる

カベさんが面白いものをみつけると、先頭から小枝や実が回ってくる。(撮影:編集部)

カベさんの心地よいガイドのリズムにしたがって山を進んでいくうちに、
みなの手にはさまざまな植物が増えていく。
ちょっとしたお花や実など、楽しく摘んでいく。
カベさんが教えくれた植物の名前を羅列するだけでも
サクラ、マツ、セイタカアワダチソウ、黄カラスウリ、ヘクソカズラ、スズメウリ、
ヤマナラシ、ツルリンドウなどなど多種多様。
とりあえず名前だけでも覚えて帰ろう。
最初はカベさんにうながされて行動していた一行が、だんだんと自由に動き始めた。
道から少し森へ入っていったり、通り過ぎる草木に手を伸ばし、
触って、においをかいで、愛でる。
みんな独自に山の楽しさをみつけたようだ。

ヘクソカズラでつくったリース

ヘクソカズラでリースをつくった。クリスマスに向けてぴったり。(撮影:編集部)

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木工製品を“つくる”という行為から、木に思いをはせる

午後は木工ワークショップ。今回はぶどう園にちなんでワインオープナーをつくった。
サクラの木を持ち手にし、好きなデザインに削っていく。
まずは白紙を前に、デザインのイマジネーションをふくらませる。
好きな絵柄にするか、持ちやすさ重視か。
デザインが決まったひとから、木を削っていく。サクラの木は、とても固い。
ベルトサンダーなどの機械を使っても、なかなか削れていかない。
仕上げの紙やすりも、手が痛くなるくらい手間がかかる。

普段ユーザーとして木工製品を使っている限りは、
材料の木がかたいかやわらかいかなんて気にすることはない。
しかし木にはかたさ、弾力性、木目など、それぞれ特性がある。
だからこそ、素材が向いている製品があり、そこには意味がある。
楽しくつくりながら、そんなことを感じるようになるのだろう。

なるべくその地域にある木材を使ったワークショップにするという。
これまでコシアブラ、クロモジ、西山杉、ラ・フランス、アケビのつる、
ヤマブドウの皮、庄内柿、カエデ、ケヤキ、ブナなどが登場。
自分が普段使っている製品の素材がどんな木であるか、気になってくる。
これからは材料となっている木材も、
買うときの基準のひとつにしてもいいかもしれない。

サクラ材のワインオープナー

削るのに苦戦していたサクラ材のワインオープナー。おみやげに買ったワインが待っている。

楽しく巻き込んで、“みんなごと”に

「遊び的な要素を大きくして、敷居を下げて参加しやすくしています。
最初は伐採ツアー、製材所ツアー、木工所ツアーなどと
段階ごとにやることを企画していたのですが、
切り分けてしまうと、その分野に興味があるひとしか来ません。
それよりも1日で山からものづくりまで、
最終的には“使う”というところまで落とし込めると、
山や木に対する意識がより立体的になってくると思っています」(井上さん)

林家と製材と木工の各業者が離れてしまっているのが、全国的にも問題点になっている。
それらを結び直す作業を、ツアーというエンターテインメントとして、
自然に組み込んでいるのだ。違う目的で参加しても、
結果的にほかの要素が面白かったと興味をもってもらえればいい。

「土日にみんなが参加したい内容にしないといけません。
それは本業があるぼくたちも同じこと。
ツアー準備は本業の合間や休みを中心にやっているので、
ぼくたちも“土日”に楽しく仕込めなければ意味がない。
しかもふたりだけでやっていてもつまらない。
みんなを巻き込んでいきたいです」(須藤さん)

たしかに参加者であるけど、スタッフパスをつけていたり、
どちらかわからないひとがたくさんいる。
3回くらい参加すると、スタッフパスがスッと渡されるらしい(笑)。

「みんなごとにしていきたい」と須藤さんはいう。
“山を守る”という大義をかみ砕いて、楽しく学ぶ。
これからもっとたくさんのひとが興味をもってくれるように、
目標は県内の35市町村全制覇。
なんだか山形の森がうらやましい。

遠く白龍湖を臨む

遠く白龍湖を臨む絶好のロケーション。(撮影:編集部)

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YAMAMORI PROJECT

Web:http://yamamori-project.urdr.weblife.me/

※YAMAMORI GOODSは、ホームページから受注販売の申し込み可能。

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