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連載

地元への入り口となる
キャンプ場、海に面した
First class Backpackers Inn。
「淡路島の場づくり」前編

貝印 × colocal
これからの「つくる」
vol.025

posted:2014.10.21  from:兵庫県洲本市  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  プロダクトをつくる、場をつくる、伝統をつなぐシステムをつくる…。
今シーズン貝印 × colocalのチームが訪ねるのは、これからの時代の「つくる」を実践する人々や現場。

伊勢谷友介さんがパーソナリティを、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、作り手たちを訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/

場所の力に導かれて、キャンプ場開業

淡路島の海沿いを周回する道路から、さらに海へと降りていく小道。
道路沿いにわかりやすいサインがあるわけでもない。
クルマはなんとかすれ違うことができる。
道の先に海が開けてくると、波がおだやかな船瀬海岸。
そこに〈First class Backpackers Inn〉、略してF.B.I.というキャンプ場がある。

F.B.I.は3つのキャビン、ひとつのティピ、さらにレストランやバーが併設されていて、
初心者にもやさしいキャンプ場だ。本格的にテントでキャンプするもよし、
バーベキューをしながら、キャビンに泊まってもよし。
それぞれの楽しみ方があるが、海が目の前で風が心地良く、
静かで落ち着くという環境のすばらしさに、誰もが感動することだろう。

〈BILLY〉と名付けられたかわいいキャビン内

〈BILLY〉と名付けられたかわいいキャビン内。アメリカンログハウスなテイストだ。

ここは、もともと船瀬キャンプ場というキャンプ場だった。
現F.B.I.のスタッフは、この場所が気に入り、利用者として大阪からよく訪れていた。
5年前、船瀬キャンプ場が閉まることになり、
なにかの縁で彼らのところに話が巡ってきたのだ。
「キャンプ場をやらないか?」
キャンプ仲間だった全員が手を上げた。

キャンプ場をつくったことも経営したこともない。
だからこそ、自分たちの手で建ててみようとなった。
キャンプが好きで、しかもこの場所を愛していたから、なんとかなると思ったのかもしれない。

現在はレストラン&バーがあるメインの建屋とキャビンが3棟ある。
すべて自分たちの手で組み上げた。
とはいえ、淡路島を中心に活動している建築家のヒラマツグミに構造設計をお願いし、
それをもとに地元の大工の棟梁とともに、自分たちは大工見習いのごとく働く。

カウンターでモヒートを準備中

モヒートに使われるミントは敷地内で育てている。

「ペンキ塗りから草刈り、土木工事まで、すべて自分たちの手でやりました。
もともと道具が好きで、手作業が好きなメンバーが集まっているんです」と言うのは、
F.B.I.の河野貴志さん。

「最初はすごくヘタクソ。大工見習いにすら、なれるまでは難しかったですね。
でも棟梁の“きよっさん”のもと、みんなにこにこ楽しそうに作業していました」

そんな作業を進めていたあるとき、台風がきて、
ほぼ完成間近のキャビン4棟が地滑りで壊れてしまうというできごとがあった。

「キャンプ場というものは、自然を相手にしているんだなということを
まざまざと突きつけられました。最初にわかって良かったです、これも運命だねと」

奥に見えるのがピンクの〈CANDY〉

奥に見えるのがピンクの〈CANDY〉。ハンモックタイ枕など、チルな雰囲気。手前の〈PEANUTS〉はウッドテラスが気持ちいい。

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オープンな空間がたくさんのひとを交差させる

〈First class Backpackers Inn〉は、海外をバックパックで旅したことがあるひとなら、
離島やビーチ沿いにあるカフェやゲストハウスのようだと感じることだろう。

そこからコンセプトのひとつが生まれている。
「スタッフ全員、旅が大好きで、バックパックを背負って
世界中に行っちゃうようなひとの集まりなんです。
旅をしていて、結局なにが楽しいかといったら、
旅先でのひととのコミュニケーションだと思うんです。
ぼくたちの考えるファーストクラスって、そういうこと。
高級ということではなくて、ここでの環境やホスピタリティを含めた体験を
ファーストクラスと感じてほしい。そんな場所をつくりたいと思っています」

ファーストクラスはお金を払って得るものだけではなく、
ちょっとした非日常に身を置くことで得られることもある。
特に「ファーストクラスな出会い」は一生の財産になることもある。

「店員だけでなく、お客さん同士で交流してほしい」と、
F.B.I.のレストラン&バーは壁がなくオープンな雰囲気。
ちょっと寄って、飲んで、会話して、というコミュニケーションが生まれやすい。
もちろんそこには北から訪れたひと、南から訪れたひと、
関東から、四国から、そして淡路島のひと。さまざまなひとがいる。
店舗自体が無国籍な雰囲気ゆえ、一瞬どこにいるのだかわからなくなりそうだ。

レストランバーからの海の眺め

レストランバーからはこの眺め!

そのなかには地元の漁師もいる。
F.B.I.の隣には小さな鳥飼漁港があり、行き来する軽トラが走っていく。
「漁師さんは毎日ここを通ります。最初は、不思議がって見ていたと思いますよ。
でも、毎日の “おはようございます”という当たり前の挨拶から始まって、
何が釣れるんですか? という会話に。
そして飲みに行くようになったり、地元の祭りに参加させてもらうようになったり。
本当にゆっくりだけど、地元に受け入れてもらえるようになりました。
一緒になって変わっていける態勢になった5年間だったのかもしれません」

ゆっくり、というのが良かったのかもしれない。淡路島には、移住者が急増している。
だからこそゆっくりと交流を深めていく。
地元の理解を得て、協力して、深いコミュニケーションをとらないと、
長く続けていくことは難しい。

「できる限り、地元のひとと一緒に盛り上げていきたい」
F.B.I.で出会って結婚するカップルが現れたり、
レストラン棟の屋根を施行していた地元の業者さんが、高校生の姪っ子を
「ここでアルバイトさせてくれ」と連れてきたり。
交流の場としての機能が生まれている。

木村博樹さん、河野貴志さん、店長の川内進太郎さん

左から木村博樹さん、河野貴志さん、店長の川内進太郎さん。川内さんは、このルックスでも地元から「シンタロー、元気か〜!」と声をかけられる愛されキャラ。

バーベキューの食材はお願いすれば用意してくれるのだが、
それよりも「買い物」を薦めているという。
「魚屋さんとか、野菜を売っている店を紹介しています。
地元のお店で買い物するのは楽しいですよね。地のものを知れるし、交流もできる」

F.B.I.を拠点に3泊しながら、自転車で淡路島を回るというひともいるという。
旅は必ずどこかに宿泊する。それだけに宿は地域への入り口になりやすく、
F.B.I.はこうして淡路島の入り口になっているようだ。
ここから広がっていく“ディープ淡路島”の、最初の一歩になるのだろう。

淡路島のF.B.I.は冬季は休業だが、現在、鳥取県の大山にふたつめのキャンプ場を建設中。
かなり雪が積もる地らしいが「白いキャンプが最高に気持ちいい」と
想像しただけで顔がほころぶ河野さん。
「夢は、世界中にFirst class Backpackers Innという場所をつくること。
地元のひとと、来てくれるお客さんと一緒にファーストクラスの気持ちを広げていきたい」

最後に「言ってしまえば、自分たちの好きなことをやってます」と恥ずかしそうに言う。
利用側のファーストクラスな気持ちをわかっているということは、
すごく大切なことなのに、忘れがち。
とにかく彼らは楽しそうだ。

建物に飾られたのF.B.I.ロゴ

後編:みずからの“つくる”で地元を盛り上げる若手クリエイター。「淡路島の場づくり」後編 はこちら

information

map

First class Backpackers Inn(船瀬ビーチイン)

住所:兵庫県洲本市五色町鳥飼浦2359

TEL:0799-34-0900(10:00〜20:00)

営業日:4月後半(ゴールデンウィーク頭)から10月末まで

Web:https://www.fbi-camping.com/awaji/

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