colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

伝統に培われた日本の職人の
技術や芸術性を
世界へ伝えるプラットホーム。
株式会社studio「仕組」前編

貝印 × colocal
これからの「つくる」
vol.007

posted:2014.6.3  from:東京都渋谷区  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  プロダクトをつくる、場をつくる、伝統をつなぐシステムをつくる…。
今シーズン貝印 × colocalのチームが訪ねるのは、これからの時代の「つくる」を実践する人々や現場。

伊勢谷友介さんがパーソナリティを、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、作り手たちを訪ねていきます。

editor profile

Tetra Tanizaki

谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。http://www.kanatamusic.com/tetra/

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/

ものづくりに関わる人たちのための「職人組合」

studio「仕組」は工芸家、大工、グラフィックデザイナー、
映像制作者からプログラマーまで、各業界の職人たちからなる、
ものづくりに関わる人たちのための「職人組合」。
原宿の一角にヘッドオフィスがあり、
埼玉県朝霞市に、アーティストや職人たちが共同で運営する工房「studio u5(スタジオ ユーゴ)」がある。
アーティストや職人に場を提供し、作品制作支援や海外などに作品販売のマーケットを開拓することで、伝統工芸職人や美術作家の制作支援を行っている。

「日本の技術を守る。それがスタジオ仕組の理念なんです」
とstudio「仕組」代表の河内晋平さん。

「たとえば日本にいる200人ほどの刀鍛冶の職人のなかで
刀鍛冶の収入だけで生活できているのは10%〜20%程度なんです」

職人の高価な作品を購入してくれるマーケットは不足している。
それを世界中から観光客やセレブの集まるドバイや、
日本文化が注目されているロシアの市場を狙っていく。

河内晋平さん

studio「仕組」代表の河内晋平さん。朝霞のstudio u5にある舞台美術アトリエにて。

「もともと奈良・吉野で日本刀をつくる家に僕は生まれたんです。
しかし現代では日本刀はあまり売れない。単純に武士がいないですしね(笑)。

うちの父は40年余り刀鍛冶をやっているので、少しずつ売れてくる。
しかし、若い世代が10年修業して独立してもなかなか商品としては売れないんです。
世代が受け継がれていく中でようやく少しずつ売れてくるんですよ。
マーケットのパイが少ないそういう構造だと若い人はやっていけないんですね。

伝統工芸の若い職人が、技術を守りながら、ちゃんと食べていけるようにしたい」

太刀。渡邊満氏蔵

太刀。渡邊満氏蔵、写真・宮田昌彦

次のページ

Page 2

「リデザイン」ではなく、頑に「伝統デザイン」を守る

伝統工芸は生き残りをかけて、
現代のライフスタイルに合わせたリデザインに活路を見いだそうとしているところが多い。
それもひとつの方法だが、studio「仕組」は、あえてその方向にはいかず、
あくまでも伝統的な意匠を守りたいと考えている。

「デザイナーとコラボレーションさせて、
現代に合うようなかたちにするというのは、僕らとしてはちょっと違う。
陶磁器にしても、刀剣にしても、職人は師匠から習った技術やかたちを、
その師匠に追いつきたい、追い越したいと思ってつくるんです。
とくに刀は平安時代から鎌倉時代、室町時代などの刀に
近づくことを目指しているんです。
その技術が綿々と受け継がれているんです。
だから現代の生活に合うようにつくったとすると、
それまでの技術が忘れられることもある。
そうではなく、職人が受け継いできた技術を生かすためには、
本来職人がつくりたいものをつくるなかで生かしたい」

そういって河内さんは一本の小さな刀を見せてくれた。

「この刀子は、正倉院のころから残っている技法を使って、
染色され象嵌(ぞうがん)が施されている。
当時のどのような道具を使って、どのような技法でつくられたか
正式なことはわかってない部分もあるのですが、
現代の職人は今もこういった本物の“技”を目指しているんです。
そこにたどり着くためにつくるんです。それが一番技術を守る方法なんです。
もしかしたら刀は需要がなく、すたれていく運命かもしれない。
しかしこういった本物を、そのままのかたちで残していきたい」

白牙把紫牙金荘撥鏤鞘(はくげづかしげばちるざや)

白牙把紫牙金荘撥鏤鞘(はくげづかしげばちるざや)。刀身とその外装品である拵え(こしらえ)に日本の伝統工芸のルーツがある。三木博子氏蔵。写真・宮田昌彦

原型を崩さないこと

「日本刀って染織・漆・金工から、伝統工芸の全部の技術があるんです。
ここから日本の伝統工芸が始まっているといってもいいと思っています」

ひとつひとつのパーツに意味がある。

「千年以上かけてこのかたちになっているので、
現代のデザイナーさんが少々変えたいといっても余地がない。
“用の美”からすると、これが究極なんですよ。戦闘においても、美しさにおいても。
だからこのかたちのまま、残していかないといけないんですね」

それを買ってくれるひとを見つけていきたいと考えた。
そのために「販路」に着目したのだという。

studio「仕組」が展示デザインに関わった展覧会の模様

studio「仕組」が展示デザインに関わった展覧会の模様。写真提供・宮田昌彦

次のページ

Page 3

時代を超えて残った工芸の極みを海外へ

studio「仕組」は、中東、インド、ロシアに
日本の伝統工芸品を売っていこうと考えている。

「刀剣でいうと刀剣文化を守るための協会があり、
その支社はヨーロッパ、アメリカなどにはあるんですね。
しかし中東・ロシア・アジアにはまだ少ない」

経産省所管のJETROに相談したところ、
中東・ロシアに強い専門家がいて、シニアアドバイザーをつけてくれた。
販路を築いていこうということになった。

「インドのムンバイ、中東ドバイなどをまわって現地調査をしてきたんです。
そこで高級な日本刀が売れるんですが、
やはり現地に合わせた見せ方のローカライズは必要なんですね。
飾り方や鑑賞の仕方を工夫する必要はある」

リデザインするのではなく、フレームや見せ方のパッケージを工夫する。
そうすることで十分、海外での市場はあると河内さんは考えている。

ものづくりに関わる人たちのための共同スペース「studio u5」

studio「仕組」は海外へと作品販売のマーケットをひろげる一方、
国内ではアーティスト支援のスペースとして「studio u5」を運営している。
朝霞の駅から歩いて徒歩15分ほどの場所に、
2フロア合計1800平米ほどのスペースを持つ。

木工・金工・皮・活版印刷など、
アーティストが共同で工房を運営している。
それぞれが職人技を競うように配置されたスペース。
studio「仕組」がプラットホームを提供し、それぞれは店子として入居している。

SUNDAY SEASIDE Letterpress & Design は主に活版印刷機を用いた島村鈴香さんのデザインプロジェクト。

温もりと味わいがある活版印刷

温もりと味わいがある活版印刷。名刺やポストカードなど小ロットの印刷にも対応してくれる。

皮の染織の商品企画なども手がける高澤広明さんのアトリエ

手づくりで革製品を制作する「CHACONNE(ホームページは近日公開予定)」。皮の染織の商品企画なども手がける高澤広明さんのアトリエ。徹底的なこだわりのものづくり。studio「仕組」の海外展示のためのツールなども制作している。

20世紀初頭イギリスの靴づくりの教科書をもとにオーソドックスな革製品をつくることも。木型の制作からすべて手づくりの本物。

壊れた競輪用自転車をリサイクルし、ユニークなオブジェを制作

木工・金工のアプリュス。代表の彫刻家、柳原絵夢さん(右)壊れた競輪用自転車をリサイクルし、ユニークなオブジェを制作。アート作品や彫刻、オブジェ制作のほか、さまざまな請負仕事もこなす。複数の職人が同時に仕事を進めていた。

次のページ

Page 4

職人をサポートするための財団

さて、studio「仕組」には、今後どんな計画があるのだろう。
未来ヴィジョンを河内さんに聞いてみた。

「今後海外で作品を売るとき、僕らはなるべく高く売ることを考えています。
単純に海外セレブ相手だから高く販売するということではなく、
その方たちにはサステナブルな職人の制作環境を目指している
弊社の理念を理解していただいた上で、高い価格で買っていただきます。
もちろん職人さんには多めに渡したいですし、
残った分から僕らの渡航費や運営費にもあてます。
そして一番重要なのは、
残ったお金で『職人をサポートするための財団』をつくりたいということ。
徒弟制度の支援や、制作にかかる材料代などのために、
融資できる態勢をつくりたいんです」

中世ヨーロッパのギルドは製品の品質・規格・価格などは厳しく統制され、
品質の維持が図られた。
ものづくりのプロと呼ばれるにふさわしい
「魂(たましい)」=クラフトマンシップという言葉が生まれた。
職人の組合がしっかりクオリティのコントロールを行う。
職人は伝統技術の継承と作品づくりに専念する。
工業化、機械化、規格化、価格破壊が進むなかで、
ものづくりに精魂を傾ける職人を守りたい。
studio「仕組」はそこを目指して進んでいる

「ちょっとお見せしたいものがあります」

河内さんに誘われ、studio「仕組」の「もうひとつの事業」を見せていただけることになった。
それは伝統工芸の世界とはまた別の、圧倒的な美的な強度を持つ「事業」だった。

詳細は次週お届けします。

後編:時代を超えるアートを通じて「価値観をつくる」。株式会社studio「仕組」後編 はこちら

information

map

株式会社studio「仕組」

Web:http://www.studio-shikumi.jp/

studio u5

住所:埼玉県朝霞市幸町2-1-37 青葉台ハウス1F

TEL・FAX:048-485-1288

Feature  これまでの注目&特集記事

    Tags  この記事のタグ

    Recommend