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ふくしま食材×応援シェフ
新たなコラボ、始まります

TOHOKU2020
vol.018

posted:2013.10.9  from:福島県  genre:活性化と創生

〈 この連載・企画は… 〉  2011年3月11日の東日本大震災によって見舞われた東北地方の被害からの復興は、まだ時間を要します。
東北の人々の取り組みや、全国で起きている支援の動きを、コロカルでは長期にわたり、お伝えしていきます。

writer's profile

Kayano Miyoshi

三好かやの

みよし・かやの●ライター。宮城県生まれ。食材が産声を上げる最前線で取材すべく、全国を旅するかーちゃんライター。少女時代から無類のホヤ好き。震災から3年、ようやく復活する三陸のホヤを酒の肴に味わうのが、目下一番の楽しみ。創刊86年を数える「農耕と園芸」で、被災地農家の奮闘ぶりをルポ。東北の農家さんや漁師さんの「今」を、「ゆたんぽだぬきのブログ」で配信中。 http://mkayanooo.cocolog-nifty.com/blog
http://fukushima-ouen-chef.jp

credit

撮影:たかはし・じゅんいち●写真家。新潟県新潟市出身、東京工芸大学短期大学部写真学科卒業後、写真家立木義浩に師事。1988年よりフリーランスの写真家としてNew Yorkで活躍。2004年よりNY&東京の2住生活ポートレイトを中心に広告、音楽、雑誌まで幅広く展開。

2013年9月から2014年2月まで、12月を除く毎月1度、
都内3か所のレストランで開催される
「消費者理解促進交流会~ふくしま食の魅力創出~」。
初回は9月30日(月)から10月2日(水)の3日間で開催。
福島生まれの食材とその生産者たちを「応援したい!」シェフたちが、
福島の食材を使って料理を披露。当日の参加者はその料理を試食し、
各シェフによるオリジナルのレシピを持ち帰ることができる。
第2回目は10月10日(木)、14日(月)、15日(火)の3日間で開催される。

福島へ行ったことがない。でも、チカラになりたい!

初回の3日間のうち、10月2日の交流会を担当したのは、
東京・恵比寿にある「ベジタブルハウスWANOBA」の黒木久弥シェフ。
イタリア料理店で修業を積み、2年前から同店へ。
「恵比寿から100km圏内の朝採れ野菜」を使うのがポリシーで、
練馬や三鷹、小平、あきるの……東京都内や神奈川県の畑へ赴き、
生産者から託された野菜を使って料理する。そんなスタイルを貫いてきた。

「僕は兵庫県出身なので、小学生の時に阪神淡路大震災を経験しています。
人生で2度も震災に遭うと思わなかった。
料理人として被災地の方々のために、何かできることはあるか?」

福島県生まれの地域プロデューサーで、
「ふくしま応援シェフ」の仕掛人のひとりでもある本田勝之助さんに出会ったのは、
ちょうどそんな時のこと。

2011年11月、黒木シェフは福島県が主催する福島県産地見聞会ツアーに参加。
福島市のある中通りエリアや会津地方を中心に生産者を訪ねた。
「生産者の方々と話すうちに、福島には優れた食材と生産者がたくさんあることを知り、
お店のお客さんにも、福島の状況や食材のすばらしさ、
安全性について、胸を張って伝えられるようになりました」

ふくしまを応援する132人のシェフたち。

福島を応援する料理人と現地の生産者をつなぐ、
「ふくしま応援シェフ」事業(福島県主催事業)に、
本田勝之助さんが携わったのが2012年7月のこと。
「ふくしま応援シェフ」とはいったいどんな取り組みなのだろう?

「震災から2年半が過ぎましたが、宮城や岩手と違い、
福島の生産者は、まだ被災まっただ中。
自分の作った作物がどう評価されているのかが生産者の耳に入りにくくなっていて、
みんな自信を失いかけています。だから、料理人のみなさんに彼らを励ましてほしい。
『福島を応援しているよ』。
そんなひとりひとりの思いを、できるだけたくさんの人に伝えていただくことで、
福島の生産者にチカラを与えてほしい。そんな思いでスタートしました」

食の魅力や安全性について、福島から発信したとしても、
なかなか伝わりにくいもの。
それよりも第三者が福島の食について客観的に伝えることで、
消費者と生産者双方の理解が深まる。
そんな役目も「ふくしま応援シェフ」は担っている。
現在「ふくしま応援シェフ」は132人。
そのうち48人が東京のシェフで、
実際に福島へ足を運んで産地を訪ねたのは40人にものぼるのだとか。

使う食材は福島産。15の料理人が繰り出す、福島の食の魅力と底ヂカラ。

これから始まる「福島県県産品消費者理解促進交流会」の内容を、
プロデューサーの本田さんにまとめていただくと、こんな感じだ。

01 食材と一緒に、必ず1人は生産者にお越しいただく

野菜や果物、畜産物が毎回登場しますが、その中から必ず1人、
生産者に東京へ足を運んでいただき、震災からのこれまでの経緯や、
生産物に込めた思いについて、参加者のみなさんと共有していただきます。

02 できるだけ福島へ赴いたシェフが料理する

多くのシェフが、黒木さんのように、現地へ赴いているので、
自信を持ってお客様におススメできるはずです。

03 毎回テーマを決めて複数の食材を組み合わせたメニューを提供する

例えば今回は、残暑を乗り切る夏野菜と、
会津人のスタミナ源である馬肉が登場。
甘酒やハチミツなどの加工品も組み合わせていきたいと考えています。

04 「しまくま」をプレゼント

今は避難区域になっている大熊町から、
会津エリアに避難しているお母さんたちが縞模様の会津木綿で作った、
熊のぬいぐるみ(「縞」+「熊」=しまくま)を参加者全員にプレゼント。
福島のことを忘れないように、身近に置いていただければ嬉しいです。

福島が誇る食材の魅力をリストアップ。

訊けば、福島には肉や野菜やフルーツなど、食材の宝庫。
「例えば『会津の馬肉』。
サシが自慢の九州の馬刺と違い、赤身のうま味を味わう肉です。
夏バテを解消するスタミナ源として、
また冷え性にも効果があるといわれています。

会津馬肉は、むっちりした食感の赤身がおいしいことで定評あり。唐辛子を利かせた味噌で食べるのが会津のスタイルだ。

それから『地鶏』。
県内にふたつのブランドがあって、
ひとつは川俣町の『川俣シャモ』。もうひとつは会津地方の『会津地鶏』。
来歴も性質も味わいも異なるふたつの地鶏は、
それぞれ異なる持ち味を楽しめます」

川俣シャモは、1平米あたり6~8羽というゆったりしたスペースで、109~120日(通常の地鶏は80日以上、ブロイラーの場合は50日程度)という時間をかけて育てることで肉の食感とうま味が高まる。

平家の落人が愛玩用に持ち込んだものが広まったともいわれる「会津地鶏」。約110~120日の日数をかけ、自由に動き回れる環境(平飼い)で飼育するため、身が締まっておいしくなる。これはその「タタキ」。

桃やりんごや柿などのフルーツも県内各地で栽培に力が入れられており、
野菜では、例えば会津地方の人たちが種を継いで残し、
現在14種あるという会津伝統野菜なども。
実は青果商を営む本田さんの父上が、
30年前からその保存と継承に取り組んできたのだそう。

例えばキュウリ。新鮮ゆえということもあるが、とてもみずみずしく、味噌を付けずに食べても味わいがあるから不思議だ。

「9月になると、黄金色に輝く田んぼと、
真っ白な花で埋め尽くされるそば畑のコントラストが美しい。
会津盆地を囲む山肌には果樹の畑が連なって、
西日を当てるとよく育つ柿の畑は東側の斜面に、
朝日を当てるとよく育つりんごは西側に広がっています」

農産物を“クリエイト”する福島の農業。

例えば会津には古くから『会津農書(あいづのうしょ)』という
農業技術を体系化した農学書がある。
1684年(貞享元年)に会津藩の村役人である佐瀬与次右衛門が記したものだが、
当時は文字の読める農民が少なかったので、
暦の読み方や野菜の種を撒く時期、冬の寒さ対策など、
農書に綴られた技術は歌に詠んで伝え残されていたと本田さん。

「ですから会津は昔から歌詠みが盛ん。
冬場の農閑期には農家が集い、歌詠みの会を開きます。
農業とは、感性を研ぎすまして季節の移ろいを的確に捉えて、
クリエイトしていくもの。
だから歌詠みだけでなく能や長刀なども農民たちは嗜みました」

福島の農家は作物の生産者であると同時に、
地域の文化を創造する人たちでもあるのだ。

本当の「安心」を感じられる場所に。

そんな福島の食材を使って、
9月30日から10月2日の3日間にかけて行われた第一回目の交流会のテーマは、
「残暑を乗り切る夏果菜とふくしまのスタミナ」。
会津特産の馬肉をメインにして、
野菜ではキュウリ、トマト、ナス、
そして東日本一番の生産量を誇るアスパラガス、
桃や梨などの果物も料理に使われた。

「素材を手助けするようにして料理したい。
野菜の味はできるだけそのまま生かして、
その味わいを支えるという感覚で料理しています」
とは第一回目の交流会で料理を披露したWANOBAの黒木シェフ。

WANOBAの人気料理は、
イタリア料理をベースにした炭火焼きや鋳鉄鍋を使って、
素材の味わいを引き出す野菜主体の料理。
滋養に溢れる会津の馬肉と、
福島の夏の名残り野菜と旬のフルーツとがWANOBAで出会う。

まずは自ら触れることで「何かが変わる」

震災以降、原発の影響が常につきまとう福島。
何度も検査を重ねた結果に出荷された作物の数値を目にして、
頭では納得できても、なかなか不安は消え去らないという人は確かに多い。
が、それは当然なのかもしれない。
その一方で実際に食材が生産される現場へ赴き、
厳しい現実と闘いながらも食材を育て続ける生産者と言葉を交わした人たちは、
自分の中で「何かが変わった」ことに気づく。

本当の「安心」は、人を介して伝わっていくもの。
また生身の人間にふれ、話し合わなければ得られないものなのかもしれない。
なかなか福島へ行けないけれど「本当の福島」に触れることはできる。
まずは「ふくしま応援シェフ」の店で、
「何かが変わる」という体験を味わってみてほしい。

information

「ふくしま食の魅力創出
〜Pro スタイリングで料理もっと楽しく〜」
第2回「10月 〜大地の恵み ふくしまの地鶏とシャモ~」

◎開催店舗
10月10日(木)13:00~15:00
「かさね」(柏田幸二郎シェフ)
住所 東京都港区赤坂3-18-10 サンエム赤坂ビル2F
TEL 03-3589-0505
http://kasanetokyoakasaka.com/

10月14 日(月) 15:00~17:00
「コムフォー 大崎シンクパーク店」(小林武一郎シェフ)
住所 東京都品川区大崎2-1-1 ThinkPark 1F
TEL 03-3779-0564
http://www.compho.jp/

10月15日(火) 15:00~17:00
「ホテル&レジデンス六本木」(菱沼欣也シェフ )
住所 東京都港区西麻布1-11-6
TEL 03-5771-2472 
http://hr-roppongi.jp/restaurant/

◎参加費
1500円(1名)
※お帰りの際に、参加者全員にBears Bear fukushimaふくしまを抱くクマ「しまくま」をプレゼント

◎お申し込み方法
「ふくしま応援シェフ」のホームページで申込書をダウンロード、必要事項を記入のうえ、FAX またはメールにて申し込み。 
http://fukushima-ouen-chef.jp/

◎お問い合わせ
(有)会津食のルネッサンス 福島県県産品消費者理解促進事業事務局
住所 福島県会津若松市中島町2-52
TEL 0120-91-0617 (10:00~18:00 ※土日祝日休 )
FAX 0242-93-9368
E-MAIL order@a-foods.jp
http://www.a-foods.jp/

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HISAYA KUROKI
黒木久弥

兵庫県生まれ。学生時代からスノーボードの選手として活躍。プロを目指すが23歳で料理の道へ。イタリア料理店等で修業を重ねる。2011年◯月より恵比寿「WANOBA」へ。今年9月4日に「ベジタブルハウスWANOBA」としてリニューアル。恵比寿から100km圏内で栽培された野菜を使った料理が評判に。

[VEGETABLE HOUSE WANOBA]
住所 東京都渋谷区恵比寿3-1-1
TEL 03-5424-0610
営業時間 月・水~金 18:00~26:00
土・日・祝 17:00~26:00
定休日 火曜日

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KATSUNOSUKE HONDA
本田勝之助

福島県会津若松市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。会津食のルネッサンス代表取締役。ヒルサイドコネクション代表取締役。地域を経営するという視点で、会津地方や福島県内を中心に食やモノづくりのプロデュース、ならびに伝統産業のコンサルティングやリノベーション事業を展開している。福島復興のキーパーソン。

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