連載
posted:2012.5.31 from:京都府綾部市 genre:活性化と創生
〈 この連載・企画は… 〉
コミュニティデザイナー・山崎亮が地方の暮らしを豊かにする「場」と「ひと」を訪ね、
ローカルデザインのリアルを考えます。
writer profile
Maki Takahashi
高橋マキ
たかはし・まき●京都在住。書店に並ぶあらゆる雑誌で京都特集記事の執筆、時にコーディネイトやスタイリングを担当。古い町家でむかしながらの日本および京都の暮らしを実践しつつ、「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安心につなぐことをライフワークにしている。NPO法人京都カラスマ大学学長。著書に『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』。
http://makitakahashi.seesaa.net/
credit
撮影:中島光行
作家・星川淳さんのライフスタイル「半農半著」にインスパイアされ、
「半農半X(はんのうはんエックス)」という生き方のスタイルを提唱する塩見直紀さん。
5月は、京都府綾部で暮らす塩見さんの「いま」のおはなしをうかがいます(全4回)。
山崎
久しぶりにこうしておはなしをうかがったら、塩見さんのご活躍もあり、
綾部がとてもいい感じになってきているんじゃないかと感じます。
塩見
綾部を「人生探求都市」のメッカにしたいと目指して
10年ぐらいやってきましたが、
いまは「もうひとヒネリ」の段階にぶち当たっている気がします。
山崎
うーん。
塩見
デザインのチカラがまだ足りないんじゃないかと。
山崎
なるほど。
塩見
いまいちばん欲しい人材はデザイナーです。
空家を用意してでもデザイナーには来てほしい。
山崎
こんなに求められているのに、
世のデザイナーは全然違う方向を向いているのが現状ですね。
デザインを学ぶ学生は就職先がないと嘆いている。
綾部だけでなく、全国から求められているはずなのに、
そもそも、そこにアンテナさえ立っていないといえます。
塩見
はい。
山崎
ただ、覚悟はいる。
塩見
そうですね。
山崎
でも、コンセプトメーカーとしてすでに日本中で知られる塩見さんと
タッグを組む若手デザイナーが綾部にいる!となったら、確実に注目されますよ。
もちろん、ほかのまちでもしかり、です。
塩見
1集落に1デザイナーが欲しい……。
山崎
集落支援や地域おこし協力隊とはまた違って……
そうですね、ローカルデザイナー!
ローカルデザイナー制度っていうのがあったらいいのかもしれない。
塩見
いいですね。ネーミングセンスも大事です(笑)。
山崎
そういうところにも、政策デザインやことばのデザインのチカラが必要ですね。
塩見
綾部って、お城も海もないんですが、グンゼ(*)や大本教の発祥の地だったり、
昭和25年に日本でいちばんはじめに「世界連邦宣言」をした
第1号都市でもあるんです。
山崎
ほぅ。
塩見
母校の豊里小学校の校歌にも「平和都市」というということばが入っていて、
そんなまちに生まれ育ったじぶんだからこそ、
世界に通用するモデルが作れるんじゃないか、という自負がどこかにあります。
山崎
なるほど。
塩見
それで、綾部高校にも「平和デザイン科」を作ってはどうかと
提案しているんですが。
山崎
お。いいじゃないですか。
塩見
でも、「就職先どこだ」って問われて(笑)。
山崎
言われますね、いまの時代(笑)。
でも、「平和」ってこれからキーワードになっていくような気がしますよ。
「幸福」の延長上として。
塩見
ええ。
山崎
終戦後はともかく、ここ50年ばかり
すっかり「平和」に慣れてしまっているわれわれの世代にとっては、
もはや平和って、空気みたいなことばになっていると思うんです。
でも、個々の幸福を成立させているのは、平和だということに、
そろそろあたらしい感覚で気づきはじめるんじゃないでしょうか。
塩見
いいですね。
山崎
「平和」ということばが、あたらしいもの、新鮮なもの、
カッコいいものとしてとらえられて、たとえば、若い子たちがピクニックしながら
「にしてもオレら平和だよね」
「やっぱ平和がいいよね」なんて言うようになったりして……。
幸福って自己実現の色合いが濃いけれど、
平和には、他者も含めてどうつながっていくか、
コミュニティの自己実現というイメージがありますから。
いまたいせつなキーワードが、ひとつ見つかった気がします。
* 創業時の社名は郡是製糸。当時、綾部は何鹿(いかるが)郡という名称で、社名は何鹿「郡」の「是(=コンセプト)」という意味だった。
profile
NAOKI SHIOMI
塩見直紀
1965年京都府綾部市生まれ。大学を卒業後、カタログ通販会社(株)フェリシモに入社、環境問題に関心を持つ。33歳で退社して故郷にUターン。「半農半X(はんのうはんエックス)」のコンセプトを提唱し、NPO法人「里山ねっと・あやべ」のスタッフとして綾部の可能性や21世紀の生き方、暮らし方としての「里山的生活」を市内外に向けて発信している。
profile
RYO YAMAZAKI
山崎 亮
1973年愛知県生まれ。大阪府立大学大学院地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室勤務を経て2005年〈studio-L〉設立。地域の課題を地域の住民が解決するためのコミュニティデザインに携わる。まちづくりワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、パークマネジメントなど。〈ホヅプロ工房〉でSDレビュー、〈マルヤガーデンズ〉でグッドデザイン賞受賞。著書に『コミュニティデザイン』。
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