連載
posted:2022.12.1 from:東京都千代田区 genre:暮らしと移住
PR ふるさと回帰支援センター
〈 この連載・企画は… 〉
ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。
writer profile
Rio Yamamoto
山本梨央
やまもと・りお●神奈川県小田原市生まれ。クリエイティブ業界の求人メディア「CINRA.JOB」の事業部長を務めた後、地方自治体の移住やワーケーションのプロモーションを中心としたWebメディアの立ち上げ、企画、編集、イベントプロデュースなどを担当。2022年5月からフリーランスとして編集やプランニングを行なっている。 Instagram @dejane_rio
credit
撮影:黒川ひろみ
なんとなく自分の住むべき場所は、今住んでいるまちではない気がする。
そんな漠然とした気持ちで、
「移住のことを考えている」と言ってもいいのだろうか?
“移住“というとハードルが高いと感じる人も少なくないだろう。
以前、移住希望のフォトグラファーがレポートした「ふるさと回帰フェア」も、
移住希望者の背中をそっと押してくれるようなイベントではあったが、
東京・有楽町駅前の〈東京交通会館〉にも、
親身になり、寄り添って考えてくれる人たちがいる。
それが〈ふるさと回帰支援センター〉だ。
ここには全国44都道府県と1政令市の専属相談員がいる移住相談窓口が設けられている。
移住先が絞り込めていなくても大丈夫。
そもそも移住自体について相談できたり、
広域から少しずつ地域を絞り込むのに具体的な相談ができる「エリア担当者」もいたりと、
移住に対してどんなレベルで迷っていても、あたたかく迎え入れてくれる。
まずは総合案内でエリア担当を務める藤岡みのりさんを訪ねた。
「移住に漠然とした興味がある、という方のご相談も多いですよ。
その方がどういう暮らしを思い描いているのかをヒアリングしていきます。
おひとりなのか? 今すぐなのか? 住むエリアは海や山に近いところがいいのか?
転職先も探すのか? などさまざまな角度から話をうかがいます」
「移住を進めるにあたっても段階があって、
ステップごとに理想と現実のギャップを確認していくことも。
情報提供や問いかけはしますが、
最終的にはご自身で考えていただくのが大事。
移住先が具体的に絞り込めた方には県の相談員をご紹介しますし、
人によっては移住自体を見送り、ということももちろんあります」
今ここで移住を決めてください! というわけではなく、
現在のライフスタイルのあり方に悩む人それぞれにとっての最適解を、
一緒に深く考えてくれる場所だということが、伝わってくる。
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続いては都道府県専属の相談員がいるブースに足を運んでみる。
鹿児島県窓口の移住・交流相談員の中島晶子さんはこう語る。
「私自身も鹿児島市の出身です。大学進学を機に鹿児島を離れましたが、
離れたからこそあらためて気づいた魅力や鹿児島ならではの暮らしがありました。
たとえば、桜島がすぐそばにある、火山と共生する暮らしや火山灰の影響、
夏がとても長くて秋服の出番がほぼないことなどです」
「自分が住んだことのない鹿児島県内の地域や最近の鹿児島のトピックスについても、
移住された方にご報告をいただいたり、移住者同士の交流会に参加して情報収集をしています」
鹿児島県は南北に長いため、どこに住むかで気候や食文化、方言なども異なってくる。
地域によっては公共交通機関が少なく、車での移動が必須の場所もあるため、
交通アクセスについても丁寧に案内している。
中島さんに、印象的だった相談者のエピソードをうかがった。
「桜島が大好きすぎて、東京から桜島に移住した女性がいらっしゃいます。
もともとは中学校の理科の先生で、生徒たちに火山のことを教えるため、
桜島を訪れた際にそのかっこよさにひと目惚れしてしまったそうです。
なんと現在は鹿児島市の移住コーディネーターとしてお仕事をされています」
ほかにも、移住先での職探しをする人には、
〈ふるさと人材相談室(UIターン就職希望者向け無料職業紹介所)〉という
鹿児島県の就職相談員につなぐサポートも行っているという。
「移住した方が鹿児島で幸せに暮らしているお話を聞くと、うれしくて泣きそうになっちゃいます。そのことが大きな励みになっています」
ひとりひとりの相談に真剣に取り組む中島さんだからこそ、
移住後の生活を自分ごとのように喜んでくれるのだろう。
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「就農したい、林業をしたいという方、
子育てを田舎でという方もいらっしゃいますが、転職を希望される方も多いですね。
都会での生活に窮屈さを感じて、どこか探している方。
移住相談のはずが、人生相談になっているなんてことも」
そう語るのは、長野県のブース「信州暮らしサポートデスク」で
相談員を務める三澤美玲さん。
6年ほど前まではシニアからの移住相談が多かったものの、
最近は若い人に移住が浸透しているようで、コロナ禍でリモートワークの促進に伴い、
転職なき移住も増えているという。
「長野は東京から1時間半で行けるエリアだと、会社勤めの方も多くなってきていますね。
新幹線沿線や、高速バスを活用して松本に住む方、
さらにはリニア新幹線の開通を見越して、飯田市に注目される方も出てきています。
自宅でお仕事をされることも多いのか、
コロナ禍の2021年は部屋数の多い物件を希望する方も増えてきました」
「信州リゾートテレワーク」という取り組みもあり、
ワーケーションを体験しながら住む場所を探すという人もいるようだ。
相談の連絡は、都内に限らない。
「昨日はヨーロッパに住んでいる日本人の方から、
ヨーロッパとの2拠点として長野を検討している、という相談がありました。
以前はメールか電話だけでしたが、
最近はオンラインツールでの相談がとても増えましたね。
九州などからのご相談もありますよ」
長野ならではの寒さの伝え方が印象的だった。
「夏のいい気候のときの長野に行ったら、誰だって好きになると思うんです(笑)。
でも、住むとなったら厳しい寒さも知らないといけない。
冬も体感してから決めてくださいね、と伝えています。
冬や雨の日に行かないと、わからないこともありますし。
それに、積雪量と寒さって比例しないんです。
さほど雪は積もらないけれど冷気が厳しいこともあります。
寒さ対策にはお金もかかるから、
そういった現実的なところも含めてお伝えしています」
日々、さまざまな移住相談を受けている相談員たちのもとには、
それこそきれいごとだけではない移住のリアルな情報が集まってくる。
だからこそ、いつか移住をしたい、それは何年後になるかわからない、
というふんわりとした悩みを抱えた人であっても、
逆に今すぐにこの地域に引っ越したい! と、
具体的な制度の仕組みなどを聞きたい人であっても、
どんな移住の悩みも受け止めてくれる。
移住について少しでも考え始めたら、まずは有楽町に足を運んでみよう。
そこできっと、あなたの移住の解像度が上がるだろう。
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ふるさと回帰支援センター
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