連載
posted:2021.12.20 from:奈良県 genre:旅行
sponsored by 奈良県
〈 この連載・企画は… 〉
ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。
writer profile
Mako Yamato
大和まこ
やまと・まこ●三重県海山町(現・紀北町)出身。京都在住のフリーランスのライターとして、女性誌・男性誌を問わず雑誌を中心に京都を案内する。『&Premium(アンドプレミアム)』では『&Kyoto』を連載中。
photographer profile
Norio Kidera
木寺紀雄
きでら・のりお●写真家。神奈川県横須賀市出身。役所勤務、スタジオマンを経て、ホンマタカシ氏に師事。2001年独立しフリーとなる。雑誌広告、CMなどで活動中。
長い歴史と豊かな自然で知られる奈良に、
今、続々と新しいスポットが誕生している。
自身の作品で〈奈良ホテル〉の茶がゆ朝食を取り上げるなど、
奈良とゆかりのある漫画家のマキヒロチさんが、
これまで知らなかった魅力を発見するため、
4つのキーワードをもとに奈良を巡った。
神社仏閣に負けず劣らず、見応えある建築が多い奈良県。
なかでも、明治27(1894)年に〈帝国奈良博物館〉として建てられた
〈奈良国立博物館 なら仏像館〉は代表的だ。
石づくりの柱とクリーム色の外壁のコントラストが華麗な洋館は、
明治を代表する建築家・片山東熊(かたやまとうくま)が設計を手がけたもの。
ネオルネッサンス様式の外観が、園内でゆったり過ごす鹿の姿と相まって、
奈良の歴史を感じさせる景色のひとつでもある。
〈奈良国立博物館 なら仏像館〉を訪れたのは初めてだというマキさん。
「華麗な博物館の外観と人懐っこい鹿の組み合わせで、
すでにテンションはマックス」と笑う。
館内へと足を運べば、国宝や重要文化財も含めた
100体近い仏像が常設で展示されており、そのボリュームは日本有数。
とりわけ2021年2月から特別公開されている
『金峯山寺仁王門 金剛力士立像』の存在感は圧倒的だ。
「これまであまり仏像を意識したことがなかったのですが、
ゆっくり一体ずつ見てみると、
それぞれにストーリーもあるし、芸術的な技法もおもしろい。
昔の人もこうやって表現していたんだと思うと、
時代を超えてつながる気がします。
『金峯山寺仁王門 金剛力士立像』も迫力がすごかったですね。
この『金剛力士立像』については写真を撮らせてもらえるから
見てきたよって言えるのもいい。
奈良を旅したら奈良博が楽しいって、みんなに勧めたくなりました」
information
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現代アート、陶芸、盆栽、奈良団扇(うちわ)。
奈良で知るデザインは、古都の奥深さを感じさせるものが多い
マキさんが訪ねたのは、野外ミュージアム〈室生(むろう)山上公園芸術の森〉。
約8ヘクタールの広大な敷地につくられた野外ミュージアムは、
室生出身の彫刻家・井上武吉の構想を引き継いだダニ・カラヴァンの作品。
自然や都市など周囲の環境と同化した屋外作品で知られる
イスラエルの彫刻家である。
伊勢の斎宮跡や室生寺などを結び、「太陽の道」と呼ばれる
北緯34度32分の線上につくられた作品『太陽の道』と、
その中央に設けられた『天文の塔』。
渦巻きに沿って水が流れる『螺旋の水路』など12のモニュメントはもちろん、
森の中を歩く遊歩道も含めて公園全体が作品となっている。
「奈良県の郊外へと足を延ばすのは今回が初めて。
ダニ・カラヴァンさんの作品にも初めて触れました」と話すマキさんが、
とくに興味を惹かれたのは『天文の塔』。
「作品の中に差し込む太陽の光の角度や長さが、
季節や時間によって刻々と変わるというお話が印象的でした。
とりわけ冬至は差し込む光が美しいと聞いて、
いつか見てみたいと思っています。
『太陽の道』に並ぶモニュメントの影がつくる、
アルファベットのYの字も美しかった……」
公園の管理を担当する福森章さんの説明を受けながら作品を鑑賞し、
森の中の遊歩道を散策するマキさん。
「公園全体も、ダニ・カラヴァンさんが
地元の人とのやり取りを重ねてつくったというお話を聞いて、
その情熱にも胸が熱くなりました。
森の中のふかふかの苔も丁寧に手入れがされていて、
公園に携わる人々すべての作品なんだなと思います。
ここまで自然とアートが融合した公園ってなかなかないですよね」
マキさんも心満たされるひとときを過ごした。
information
室生山上公園芸術の森
住所:奈良県宇陀市室生181
TEL:0745-93-4730
開園時間:10:00〜17:00(3月・11〜12月は〜16:00。入園は閉園の30分前まで)
休園日:火曜(祝日の場合は翌日)、12月29日〜2月末日
観覧料:大人410円、高校生200円、中学生以下無料
Web:室生山上公園芸術の森
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修験道発祥の地・天川村。
紀伊半島の中央に位置し、豊かな自然と悠久の歴史、そして伝統を受け継いでいる。
大小さまざまな巨石と滝が連なり、そこを縫うように清流が流れる
〈みたらい渓谷〉は奈良きっての眺めとして人気も高い。
ハイキングコースとして整備されている渓谷のなかで
マキさんが訪れたのは、みたらいの滝や哀伝橋がある一番のビューポイント。
「私は、漫画家にしては年中出かけているタイプ。
自然や登山も大好きで、毎年いくつか音楽フェスに行くし、
富士山に登ったこともある。
担当編集さんには、『それだけ出かけていて、いつ仕事してるの?』
とよく言われるくらい(笑)。
〈みたらい渓谷〉では岩場に座ったりして、
ダイレクトに自然を感じることができました。
水も真っ青で、きれいですごかった。
赤い橋とのコントラストも美しくて、秋の紅葉もきっときれいなんでしょうね」
歩道部分がアスファルトのため、一見するとそう見えないものの
歩くと少し揺れて吊り橋だとわかる哀伝橋や、
巨石の下を潜るような歩道など、自然の迫力を存分に楽しめる渓谷だ。
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いにしえの都、奈良はさまざまな食の発祥の地。
大神神社(おおみわじんじゃ)と素麺、氷室神社とかき氷など、
社寺に深いゆかりがあるものも。
そんな背景もあり、今ではすっかり奈良の名物となったかき氷。
なかでも〈ほうせき箱〉は、ブランドいちごの古都華(ことか)や
牧場から直接手に入れる牛乳など、地元・奈良の素材をシロップに取り入れ、
関西にいち早くエスプーマ氷を広めたことでも知られている。
かき氷の中にカスタードやヨーグルトのクリームをしのばせたり、
トッピングにナッツを散りばめたり。
味や食感の変化でも楽しませてくれるのだ。
朝食をテーマにした代表作『いつかティファニーで朝食を』では、
〈奈良ホテル〉の茶がゆを取り上げたこともあるマキさん。
食いしん坊であることは間違いなく、
ブームのきっかけをつくったかき氷に興味津々の様子。
「率直に言って、すごくおいしかった!
ミルクのかき氷は牛乳が濃くなる冬だけ、
なんてこだわりにも驚きました。
シンプルにひとつのシロップで味わうだけじゃなく、
クリームやソースなどでいろんな素材がミックスされているところも好み。
次は、おいもやカボチャのかき氷も食べてみたいと思いました」
information
ほうせき箱
住所:奈良県奈良市餅飯殿町47
TEL:0742-93-4260
営業時間:10:00〜11:50、13:00〜16:50
定休日:木曜
※予約制(予約に空きがあれば、当日店頭での受付可能)。詳細はSNSで確認を。
※メニューは時期により異なります。
建築から食まで、まったく違うジャンルの奈良を満喫したマキさん。
「また近いうちに来たい」と、その奥深さに魅了された様子だ。
そんなマキさんの訪問記を紹介した
奈良県観光ガイドブック『知れば知るほど奈良はおもしろい』が、
奈良県の観光案内所やホテル、県内外の主要駅、首都圏の旅行代理店などで、
2021年12月末頃より無料配布予定。
まずは、ガイドブック片手に奈良へ出かけてみませんか?
profile
Hirochi Maki
マキヒロチ
漫画家。第46回小学館新人コミック大賞入選。『ビッグコミックスピリッツ』にてデビュー。代表作に『いつかティファニーで朝食を』『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』がある。現在、ヤンマガwebにて『SKECHY』を、コミックDAYSにて『それでも吉祥寺だけが住みたい街ですか?』を連載中。
※各施設の営業時間などは状況により変動する可能性があるため、事前にご確認ください。
※価格はすべて税込みです。
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