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ケーキの世界にも高校生が
夢をかける舞台があった!
歓喜と涙の〈貝印スイーツ甲子園〉

Local Action
vol.142

posted:2018.10.26  from:東京都新宿区  genre:食・グルメ

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

writer profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:黒川ひろみ

ケーキにかける “ひたむきさ”は、やはり“甲子園級”だった

高校生が涙する甲子園は、高校野球だけではない。
スイーツづくりで全国一を成し遂げた優勝校は、歓喜の涙を流した。
そんな物語を紡いでくれるのが、貝印が主催する〈貝印スイーツ甲子園〉である。
2008年の第1回から数えて、今年で11回目を迎えた。

9月16日に行われた決勝大会。全国から266チームの応募があり、
そこから書類審査と東西予選大会を勝ち抜き、
会場である〈東京調理製菓専門学校〉に集まったのは、
北海道三笠高等学校の「北の国から」、愛知・名古屋調理師専門学校の「I’ll」、
大阪・太成学院大学高等学校の「ミラクルGirls」、
熊本・慶誠高等学校の「educate」の4チーム。

東日本ブロックから勝ち上がった名古屋調理師専門学校「I’ll」チームは、昨年の優勝校。2冠を目指す。

東日本ブロックから勝ち上がった名古屋調理師専門学校「I’ll」チームは、昨年の優勝校。2冠を目指す。

「わたしたちの“極上”スイーツ」というテーマにそって考えてきたケーキを、
2時間半という時間内に3人で協力してつくり上げていく。
審査はケーキの完成度のみならず、製作過程も含まれる。
だから〈Toshi Yoroizuka〉オーナーシェフの鎧塚俊彦さんや
〈Patisserie Noliette〉オーナーシェフ永井紀之さんをはじめ、
プロのパティシエとして活躍されている審査員が、
ときに鋭い眼光を光らせながら、調理台の間を歩いている。
さすがにプロの視線を浴びながらのケーキづくりは緊張しそうなものだが、
意外と生徒たちは落ち着いているようだった。
何度も練習して繰り返してきたケーキづくり。自然と体が動くのだろう。

大阪府の太成学院大学高校「ミラクルGirls」は飴細工で“時計”を製作中。

大阪府の太成学院大学高校「ミラクルGirls」は飴細工で“時計”を製作中。

「ミラクルGirls」の3人をモデルにした(!?)マジパンの成形技術はお見事。

「ミラクルGirls」の3人をモデルにした(!?)マジパンの成形技術はお見事。

前半は製作工程を見ていても、まだまだ全体像がわからない。
しかし土台をつくっているはずなので、
「正確さが重要です」と永井シェフも注意点を教えてくれた。
鎧塚シェフも「ここからどう変化していくのか。楽しみですね」と言う。

大会アドバイザー大森由紀子先生に話しかけられる生徒。

大会アドバイザー大森由紀子先生に話しかけられる生徒。

生徒たちはお互いに声をかけ合い、製作に励んでいる。
チームプレイはどの学校も抜群だ。ときに、笑い声もあがる。
集中しているなかにも、思わず楽しさが上回る瞬間がある。
ゲスト審査員の関根勤さんに、
ロールケーキの美しい断面をドヤ顔で見せた生徒もいた。
成功して思わず自慢したくなったのだろう。

ゲスト審査員「貝印スイーツ甲子園絆サポーター」として参加していた関根勤さんは場をやわらげてくれた。

ゲスト審査員「貝印スイーツ甲子園絆サポーター」として参加していた関根勤さんは場をやわらげてくれた。

とにかく作業台の上をきれいに保っていたのが印象的だ。
洗いものも手が空いた人がすぐに洗ってほとんどためないので、
常に清潔感がある。こうした丁寧さや衛生観念なども審査対象に含まれるのだ。

北海道三笠高校「北の国から」チーム。

北海道三笠高校「北の国から」チーム。

どの学校も順調に進んでいるように見えた。
しかし終了5分前になってもどの学校からも「できました!」の声が上がらない。
周囲からも不安の声が上がり始めるが、残り2分を切るころ、
続々とケーキが完成し始めた。
名古屋調理師専門学校の「I’ll」は、なんと5秒前に完成。
見ているこちらがヒヤヒヤしたが、生徒たちのタイムマネージメントは完璧だった。

その後、各チームは審査員たちに実際に食べてもらいながら、
プレゼンテーションを行った。
最後のアピールを終え、とうとう優勝校の発表を迎えることになった。

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決勝戦3日前、熊本県の慶誠高校を訪ねた

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笑顔が似合う慶誠高校チームの練習風景

スイーツ甲子園決勝大会の3日前。予選大会を勝ち抜いた4校のなかから、
熊本県の慶誠高校普通科パティシエコースを訪れた。
ちょうどケーキ製作工程の最終確認を行っているところだ。

学校の門には貝印スイーツ甲子園全国大会出場の祝福とエールが。

学校の門には貝印スイーツ甲子園全国大会出場の祝福とエールが。

メンバーは寺本希来(きら)さん、木部青空さん、西山萌花さん。
3人とも慶誠高校が過去に貝印スイーツ甲子園で
優勝経験のある学校だと知っていたうえで、
「中学生の頃からスイーツ甲子園に憧れていて、
絶対に出てみたいと思って慶誠高校に進学しました」と熱意のある返答。

笑顔で楽しく練習に励んでいた3人。

笑顔で楽しく練習に励んでいた3人。

彼女たち3人は今年2月、2年生のときに、
指導する築島詩織先生(実習助手)による試験で選ばれた選抜チームだ。
「練習時間も全員平等になるように“2週間後にテストをする”と伝えたんです。
それ以降、よく練習に来ていたのがこの3人ですね」という築島先生。

「ナッペと絞りを1日に何時間も練習しました」という寺本さん。
貝印スイーツ甲子園の予選大会では、自由作品のほかに課題作品がある。
各チーム共通の課題で、ジェノワーズ(スポンジケーキ)づくり、
ナッペ(クリームを泡だててケーキに塗る作業)、クリーム絞り、
断面・食感などが審査される。
見た目の良さや発想力のみならず、それを支える基本的な技術も要求されるのだ。

「慶誠高校は普通科の中にあるパティシエコースなので、実習の時間はそう多くなく、
生クリームをきれいに塗るという基本すらうまくはありません。
彼女たちが大会に向けて特訓したからできるようになったこと。
最初は見てられませんでしたよ」と笑って振り返る築島先生。

木部青空さん(左)と寺本希来さん(右)。

木部青空さん(左)と寺本希来さん(右)。

チームが結成されてから、まずは食材を探し始めた。
地元、熊本県産の材料をふんだんに使ったケーキにしたいと考えたからだ。
「熊本でショウガやゴマがつくられているなんて知りませんでした。
熊本って実はいろいろな食材にあふれていたんです」と驚く木部さん。

西山萌花さんはケーキの土台を製作中。

西山萌花さんはケーキの土台を製作中。

今回の自由作品のテーマは「わたしたちの“極上”スイーツ」。
少し抽象的なテーマだ。

「難しかったです。まず辞書で“極上”という単語の意味を調べたくらい(笑)。
とにかく自分たちにとっての極上、
わたしたちがおいしいと思えるケーキをつくろうと思いました」

テーマが発表されてからはたくさんの試作、練習の日々。
そして完成した3人のケーキは「Harmonie(アルモニー)」と名付けられた。

「ショウガやゴマ、晩柑など、個性の強いパーツが使われていますが、
それらが融合するとおいしい調和が生まれるケーキです。
そこでフランス語で調和を意味する『Harmonie』という作品名にしました」

晩柑という柑橘系のジュース。

晩柑という柑橘系のジュース。

迎えた西日本予選大会では、常に笑顔でケーキづくりに没頭できたようだ。

「会場に着くまではすごく緊張していました。でもいざ始まってみると、すごく楽しくて。
3人の世界に入って、周りなんてまったく見えていませんでした」
と言う木部さんに対して、築島先生は「遅れているのに笑みが漏れていて……!
こっちが心配になるくらいでしたよ」と返す。
先生も含めてみんな仲良くチームワークもバッチリ。

手づくりカウントダウンカレンダーがかわいい。

手づくりカウントダウンカレンダーがかわいい。

この「Harmonie」を引っさげて、西日本予選大会も突破。
予選では時間が足りなくなってケーキが少しやわらかくなってしまったこと、
ショウガの味が強過ぎたことなどを反省し、
決勝戦には改良を施したケーキで臨むことにした。
「緊張よりも楽しみのほうが大きいです」と心強い。

やさしく厳しい(!?)築島詩織先生に指導してもらった。

やさしく厳しい(!?)築島詩織先生に指導してもらった。

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優勝は……

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さて4チームの中から優勝したのはどの高校か?

さて決勝大会の結果は……、なんと慶誠高校「educate」が優勝!
決勝でも笑顔を絶やさず楽しそうだった。
だから「できました!」の声と同時に3人が涙を流したのには驚いた。
緊張していないといっても、
知らないうちにプレッシャーを感じていたのかもしれない。

優勝した慶誠高校「educate」のケーキには、金魚、風鈴、朝顔など日本の夏が飴細工で表現されていた。

優勝した慶誠高校「educate」のケーキには、金魚、風鈴、朝顔など日本の夏が飴細工で表現されていた。

喜びを爆発させた3人。優勝おめでとう!

喜びを爆発させた3人。優勝おめでとう!

3人のうち、寺本さんはケーキ店への就職を目指している。
「大会が終わってからゆっくりと考えようと思いますが、すぐにでも働きたい」

そして木部さんと西山さんは
福岡の同じ調理・製菓系専門学校に進むことが決まっている。

「みんなを笑顔にするパティシエになりたいです。
将来はケーキ屋さんかカフェで働きたい」と西山さん。

木部さんは「私はパンの道に進みます。実は家業がパン屋なんですが、
家を継ぐかどうかはまだわかりません(笑)」と言うが、
パンの道に進むのは親の背中を見て感じたこともあるのだろう。

ここからどれだけのパティシエが育っていくだろうか。

ここからどれだけのパティシエが育っていくだろうか。

3人らしく笑顔で楽しく、お互いを信頼してやり切った。
春には副賞のパリ旅行が待っている。
本場の空気を感じて、さらなる刺激を受けるのだろう。
優勝したチームだけではなく、貝印スイーツ甲子園は、
将来有望なパティシエを生みだす土壌になっているようだ。

審査員たちと記念撮影。

審査員たちと記念撮影。

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貝印スイーツ甲子園

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貝印株式会社

1908年、刀鍛冶の町・岐阜県関市で生まれた貝印は、刃物を中心に、調理器具、化粧小物、生活用品、医療器具まで、生活のさまざまなシーンに密着した多彩なアイテムを製造・販売。現在は、日本だけでなく、欧米やアジア諸国など世界中に製造・販売拠点を持つグローバル企業に発展しています。
http://www.kai-group.com/

貝印が発行する小冊子『FACT MAGAZINE』

http://www.kai-group.com/factmagazine/ja/issue/3/

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