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数日限りのプレミアム野外レストラン〈ダイニングアウト〉が
鳥取県八頭町で見せた進化と、
地域へのノウハウの還元

Local Action
vol.141

posted:2018.10.25  from:鳥取県八頭町  genre:旅行 / 食・グルメ

〈 この連載・企画は… 〉  ひとつのまちの、ささやかな動きかもしれないけれど、創造性や楽しさに富んだ、
注目したい試みがあります。コロカルが見つけた、新しいローカルアクションのかたち。

photo & text

Yu Ebihara

海老原 悠

えびはら・ゆう●コロカル編集部エディター。生まれも育ちも埼玉県。酒・食・野球をこよなく愛する昭和人。ダイニングアウトは4回目の参加となった。

数日限りのプレミアムレストラン、
ダイニングアウトが鳥取・八頭町で開催。
ミラノの人気店〈Ristorante TOKUYOSHI〉
徳吉洋二シェフ凱旋登板の夜

鳥取県八頭町。鳥取市内から10キロほど南に位置する小さなまちが、
2018年9月7日からの3日間ちょっとしたお祭り騒ぎになった。
プレミアムな野外レストラン〈DINING OUT with LEXUS〉(以下、ダイニングアウト)の
八頭町での開催。
それはずっとダイニングアウトチームを誘致していた鳥取県としても
念願叶ってのことだった。

これまでダイニングアウトは、北は北海道ニセコ町、南は沖縄県八重山諸島まで、
さまざまなロケーションで開催され、13回という回数を重ねてきた。
国内外の超一流シェフが、あたかもその“まち”を調理するように、地域の食材を厳選し、
ライブ感たっぷりに惜しげもなくその腕をふるう。
そのダイナミックさとプレミアム感、
当日まで参加者には「どこ」で「どんな料理を食べられるのか」といった
詳細が伝えられないというミステリーツアー感覚が、
全国の美食家のみならず、“食”や“ツアー”を地域おこしの目玉にと考えている
行政担当者の地域創生のヒントとしても注目されているのだ。

今回の舞台となった八頭町は、緩やかに流れる八東川とそこに沿うように走る若桜鉄道、
いにしえの伝説残す霊石山、気持ちよく広がる田園風景の傍らでは、
名産の花御所柿がたわわに実り、秋の空に彩りを添えるという、
昔ながらの日本の風景を今に残す小さなまち。

天照大神が八上郡(現八頭郡)に降臨した際に、
霊石山への道案内をしたのが白兎だったという「白兎伝説」が今日も伝えられており、
町内に3社あるという「白兎神社」をはじめ、
数多くの寺院や古墳の存在が古代の栄華を物語っている。
八頭は、古来よりのパワースポットでもあったのだ。

成田山青龍寺の社殿の中にある白兎神社。内陣(ないじん)の厨子に、波うさぎを見ることができる。

成田山青龍寺の社殿の中にある白兎神社。内陣(ないじん)の厨子に、波うさぎを見ることができる。

そんな八頭で開催するダイニングアウトのテーマは「Energy Flow〜古からの記憶を辿る〜」。
八頭という地に宿る、“生命力”や“自然の神秘”を、食だけでなく、
場所、人からも感じとれるプログラムを用意。
ミラノの人気店〈Ristorante TOKUYOSHI〉の徳吉洋二シェフが
ニセコ編に続き2回目の登場。
東洋文化研究家のアレックス・カーさんがホストとして会を進行し、
レストランプロデューサーの大橋直誉さんがサービス統括に着いた。

大橋直誉さん(左)がワインのセレクトを託され、アレックス・カーさん(右)が軽快なトークで場をあたためる。

大橋直誉さん(左)がワインのセレクトを託され、アレックス・カーさん(右)が軽快なトークで場をあたためる。

ところが、開催期間は秋の集中豪雨のまっただなか。
残念ながら9月10日は野外での食事は中止に。
その代わりとして築130年を超える古民家・太田邸で開かれることになった。
この日のためにロケハンを重ね、お客さんに喜んでもらおうと
最高のプログラムとロケーションを用意してきた運営スタッフたちの気持ちを考えると、
お天道さんへの恨み節しか出てこないのだが、
「弁当忘れても傘忘れるな」という標語が伝えられている地域だけあって、
じっとりと雨に濡れてほんのりと薄暗い景色は、
回想するといつもの八頭の風景ではあったのかもしれない。

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ダイニングアウト、次のフェーズへ

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初物づくしのダイニングアウト

さて、今回のダイニングアウトは、
過去の13回とは少し趣が異なるということを強調しておきたい。
地域との関係性がより濃く近いものとなった。

① 鳥取出身の徳吉洋二シェフの“凱旋ダイニングアウト”であるということ

鳥取に生まれ育ち、ミラノで修業を重ね、2015年〈Ristorante TOKUYOSHI〉を開業。
オープンからわずか10か月でミシュラン1つ星を獲得した、
今、注目のシェフのひとりでもある徳吉シェフ。

「15年ミラノで必死に働いてきて、
この凱旋ダイニングアウトで、やっと“家に帰ってきたな”という感覚です。
もう一度日本や鳥取のいいところを見直すという意味でもいい機会となりました。
故郷をどう料理で表現するかーーこれはとても悩みました。
生産者をまわって、聞いて、試食して、“やっぱり違うな”と白紙に戻すこともありましたし、
ガラッと料理の構成を変えることもありました。
それはそれでチャレンジしてるって感じでおもしろかったのですが」

徳吉シェフのアイデアと経験で、郷土の料理を分析して、概念を解体して、
また再構築した料理たち。
幼少期を過ごした鳥取の思い出と、
15年のミラノでの経験があったからこそ振る舞えたものだった。

② 3日間のうち初日は地元の人を招いた、地元枠

2日目、3日目は一般のお客さんによる申し込み制だったが、
初日は、地元の人限定で開催したスペシャルデーとしたのも初めての試み。
「徳吉シェフの凱旋も合わせて、地元の方々が地元に誇りを持つきっかけになったのでは」
とダイニングアウト総合プロデューサーの大類知樹さん。
実は、3つ子で次男の徳吉シェフ。
今回はご兄弟も招いてのディナーとなったそうで、
鳥取とイタリアの味と文化のフュージョンは、徳吉シェフの歩んできた道のりを、
皿の上でシンプルに親族にも紹介するものとなった。

③ これまで以上に徹底した、地元のレストランやボランティアによるサービス

これまでのダイニングアウトでも、地元スタッフの協力が欠かせないものとなっていたが、
今回も八頭町やその周辺地域から、約100名の地元スタッフが調理やサービスで参加。
お客さんと積極的にコミュニケーションをとっていた。
料理のこと、お酒のことだけでなく、地元の“いいところ”の話も弾んでいるテーブルも。
料理をサーブをしていた女性に話を聞くと、普段は医療事務をしているのだと言う。

「慣れないことばかりで、しかも会場も変わってすごく大変でしたが楽しかったです。
お客様の喜んでいる顔を見れたことが、私たちにとっても大きな喜びでした。
いつもプロのサービスの人たちはこうした喜びを感じているんだなぁと。
徳吉シェフは私たちの緊張をほぐそうと、
フレンドリーに接してくださったのもとても印象に残っています」

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鳥取をイメージした料理に舌鼓

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「鳥取」を独自の解釈で調理する

目にも美しい徳吉シェフの料理、その一部を紹介していきたい。

「白兎伝説」にちなんで、白で統一されたひと皿。
鳥取の白イカ、イタリアのラルド(豚の背脂のラード)、白身の魚を柑橘で爽やかに。
最後にイカのブロードをそえて、鳥取の海の幸を白兎の白いイメージで表現した。
「白兎の“白”を、純粋な世界と解釈しました」と徳吉シェフ。

その名も〈骨と肉〉。牛の肋骨に牛肉と鳥取名産のスイカを巻きつけたアイデア料理。
スイカはオーブンで水分を飛ばすことで表面がなめらかになり、驚きのプルプル食感に。

鳥取のご当地ラーメン「牛骨ラーメン」にインスピレーションを得たという一品。
湖山池でとれる大粒のしじみの凝縮しただしと、鳥取和牛のだし、牛脂を合わせて、
パスタに合わせた。湖山池のしじみは徳吉シェフが特に印象に残った食材で、
「発見だった」と言う。

田中農場のコシヒカリを岩井窯(岩美町)の土鍋で炊き、
大江ノ郷自然牧場の親鶏からとったブロードを染み込ませてから、卵と混ぜて、
リゾットのように提供。イタリア風卵かけご飯、あるいは親子飯といった具合か。

徳吉シェフが幼少の頃から慣れ親しんだ思い入れのある食材、
20世紀梨をメインにしたデザート。
丸ごとの梨をくりぬいて、中身をゼリーにしたものと、
シチリアのワイン醸造家のワインビネガーでマリネしたルバーブ、
バジリコのグラニテで、日伊の融合を見事に表現。

ダイニングアウトに登場するシェフが毎回そうであるように、
徳吉シェフも食材を探すことから始めたのだが、特に、卵の黄身のコクに、
「トゥーマッチ・エナジー。ジャングルにいるような原始的なエナジーを感じた」
のだと言う。
同じくアレックス・カーさんと梨畑の中でデザートで使う梨を試食したときにも
食材に大地の息遣いを存分に感じ、
「八頭のエネルギーを感じられる料理を」という当初のテーマからブレることなく、
全12皿を完走し切った。

左から、ダイニングアウト総合プロデューサーの大類さん、ホストのアレックスカーさん、徳吉シェフ。サービス統括の大橋さん、レクサスプロジェクト・ゼネラルマネージャーの沖野さん。

左から、ダイニングアウト総合プロデューサーの大類さん、ホストのアレックスカーさん、徳吉シェフ。サービス統括の大橋さん、レクサスプロジェクト・ゼネラルマネージャーの沖野さん。

イベント終了後にスタッフ大集合! 疲れと安堵が入り混じった表情で。

イベント終了後にスタッフ大集合! 疲れと安堵が入り混じった表情で。

今後も「凱旋シリーズ」をやっていきたいかという問いに対して、
プロデューサーの大類さんも、
2013年から協賛に入っている〈レクサス〉の沖野和雄さんも「もちろん!」という回答。

「サービスする地元のスタッフが、自分たちの言葉で八頭を表現していたのが印象的で、
この会をきっかけに地元へのプライドや郷土愛が刺激され、
より地元を誇りに感じられたのではないでしょうか」(大類さん)

「回を重ねるにつれ、認知度が上がってきていると実感していて、
地方×食といえばダイニングアウト、レクサスといえばダイニングアウト、
というイメージを持っていただけていると思います。
毎回が唯一無二の体験。その“時間と空間を設計する”というのは、
ラグジュアリーライフスタイルブランドをうたうレクサスの、
哲学やメッセージと重なる部分があると思います」(沖野さん)

「今回は、徳吉シェフの登板で、鳥取・八頭の地域性を
参加者に強く印象付けたダイニングアウトになりましたが、
次回以降も、より地域を感じさせ、土地と人と食のつながりを意識させる会に
していきたいと思います」(大類さん)

第15回の舞台は沖縄県南城市。
〈DINING OUT RYUKYU-NANJO with LEXUS〉の開催が11月に決定している。
琉球の文化と信仰を読み解く2日限りの野外レストラン。こちらの情報もぜひチェックを。

information

DINING OUT RYUKYU-NANJO with LEXUS 

日程:2018年11月23日(金・祝)、24日(土)※2日間限定

場所:沖縄県南城市

募集人数:各回40名、計80名限定

出演:シェフ・樋口 宏江(「志摩観光ホテル」総料理長) 、ホスト・中村 孝則(コラムニスト)

内容:志摩観光ホテルで初の女性料理長に抜擢され、2016年のG7首脳会議でディナーを担当し各国の要人から称賛を受けた、今世界で最も注目を集める樋口宏江シェフが登場。沖縄食材を用いて、女性ならではの視点で琉球の文化と信仰を紐解くコース料理を、「神の島」久高島と琉球開闢の祖アマミキヨのゆかりの地を舞台に、五感のすべてで堪能する野外レストラン。

主催:株式会社ONESTORY

オフィシャルパートナー:LEXUS

YEBISU

特設ページ:

https://lexus.jp/brand/dining_out/

後援:沖縄県 ・平成30年度 沖縄観光コンテンツ支援事業

協力:南城市

販売:10月5日(金)18:00より、JTB沖縄で販売開始。WEB購入が可能です。

オフィシャルサイト:

http://www.onestory-media.jp/

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