〈入谷Yes工房〉 スギ間伐材と震災被害木を活用し、 南三陸を元気に。

入谷Yes工房からつながる宮城の森のはなし

県土の約58%=約42万ヘクタールが森林に覆われている宮城県。
6500万平方メートルの森林から、毎年50万平方メートルが伐採され
木材として生産されている。
山々はスギやアカマツなどの針葉樹を中心に、
ブナやナラなどの広葉樹も広く分布している。
鳴子杉や津山杉など、美しい文様のスギが育つことでも知られている。

被災地で雇用を生むために

のどかな里山の風景が広がる宮城県南三陸町入谷地区。
その小高い丘の上、廃校になった小学校の木造校舎の中に
〈入谷Yes工房〉はある。

南三陸町は、東日本大震災の津波で大きな被害を受けた。
住宅の7割が浸水し、いまも多くの人が
仮設住宅などでの避難生活を余儀なくされている。
入谷Yes工房は、そんな方たちの働く場所をつくれないかとスタートした。

「どこかに来て、誰かと働くことは生きるための大切なモチベーションになります。
たくさんの人がこの工房でいきいき働いてくれるのは、とてもうれしいことです」
そう話すのは工房の広報を担当する大森丈広さん。

2011年5月に3名からスタートした工房は、
現在まで、のべ20人以上の雇用を生み出した。

毎日数名のスタッフが工房に通い、作業に精を出している。

オクトパス君から木工製品の開発へ

入谷Yes工房(南三陸復興ダコの会)では、
南三陸を元気にするために、特産品や木工製品の開発、農園の運営など、
まちに雇用を生み、復興していくための活動をしている。

その製品の中で人気が高いのが南三陸町の名産、タコをモチーフにした
南三陸町のゆるキャラ〈オクトパス君〉のグッズ。
“置く”と“パス”する、という語呂合わせで、
震災前からひそかな人気を集めていた。

「一番の売れ筋は文鎮。受験シーズンになると、
1週間で1000個売り上げることもあるんです。
震災後3年間で7万個の売り上げを達成しました」と大森さん。

年輪の風合いが生きた〈5を書く定規〉。間伐材はスギが中心。震災直後はほかにもさまざまな震災被害木を使用した。

文鎮以外にも、力を入れているのが木工製品の開発だ。
海のイメージが強い南三陸だが、
実は町の面積の8割を森林が占めている森のまちでもある。
間伐材などの木資源が豊富だが、被災直後は、
津波をかぶった塩害木などが大量にあった。

「塩害木や倒壊した木などの震災被害木は、活用して製品にすることで、
震災の記憶を風化させないことにもつながります。
災害廃棄物の焼却施設の解体記念品を受注したこともあります」と大森さん。

「縁があって木工製品の開発に携わることができたので、
まずは地元の木に目を向けてみようと思いました。
いろいろな製品を売り出して、南三陸に木資源があることを
多くの人に知っていただけたらと思っています」

工房の一画にあるオクトパス君神社。

さまざまなオーダーに柔軟に対応

「木工製品をつくるには、企画、デザイン、加工など、
さまざまなスキルと技術が必要です。私たちは、その工程すべてを
工房の中で完結できたらいいなと考えています」と大森さん。

当初はスタッフが手作業でちょっとしたノベルティなどをつくっていたが、
2013年には、レーザー加工機を導入。
高い品質の製品を大量に生産することが可能になった。
レーザー加工機では、イメージした絵柄を正確に焼きつけることができる。
商品の展開にも幅が生まれたという。

「木工製品は、絵やかたちを比較的自由にデザインすることができるので、
さまざまな要望に応えることができるようになりました。
小ロットのご依頼や、ちょっとユニークなデザインにも対応できます」

細かい図案も正確に再現できるレーザー加工機。デザインから加工まで請け負うことで、小ロットのオリジナル品をつくりやすくなった。

入谷Yes工房の依頼主は、南三陸の企業やゆかりの人などが中心。
オクトパス君をアレンジしたデザインの依頼も多い。
南三陸町役場のネームプレートも入谷Yes工房の製品。
小学校の卒業文集や結婚式のウェルカムプレート、
会社の記念品などの依頼も増えている。

結婚式のウェルカムボードとして使われたオクトパス君のグッズ。

戸倉中学校の卒業記念品には、写真の画像を焼きつけた。

最後のひとカケラまで南三陸の人のために

加工で出た廃材も、薪を必要とする近隣の住宅に配布したり、
学生のレクリエーションやワークショップに利用したり、
最後まで大切に利用している。

廃材は薪などとして活用。入谷地区には、暖房などに薪を使っている家が、まだ少なくない軒数残っている。

記念品として配られる予定のしおり。地元企業からの発注がますます増えている。

「南三陸で育った木材ですから、南三陸の人たちのために活用できたら一番いいですね。
お客さまのどんな要望にも、迅速に対応できるのが私たちの強み。
ここ数年で想いをかたちにするお手伝いが
少しずつできるようになってきたと実感しています。
南三陸町は、震災でたくさんのコミュニティがなくなってしまいました。
南三陸の木材でできたグッズを渡したり、もらったりという過程で、
もっとさまざまなコミュニケーションが生まれたらいいと思っています」

広報の大森丈広さん。工房の見学も随時受け付けている。

緑に恵まれた山のふもとにある木造の工房。

木のある暮らし 宮城・入谷Yes工房のいいもの

5を書く定規 価格:500円(税込) スギの間伐材を用い、オクトパス君を描いたお守り。五画と合格をかけた定規は受験生のお守りとして人気。

information


map

入谷Yes工房

住所:宮城県本吉郡南三陸町入谷字中の町227

TEL:0226-46-5153

http://ms-octopus.jp/project/introduce.html#p02

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