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COS KYOTO×竹影堂
Part1:伝統産業から、文化ビジネスへ
京都で「リデザイン」する。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.035

posted:2014.1.21   from:京都府京都市  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tetra Tanizaki

谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。http://www.kanatamusic.com/tetra/

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/

これまでの〈伝統産業〉という枠組みを外したい

京都で培ってきた職人さんの技を日常で使えるものにしたい。
まず自分が欲しいと思えるものをつくりたい。

そんなデザインチームが「COS KYOTO」だ。
社長の北林 功さんにお話を伺った。

「僕らが知っている職人さんの、かっこいい技術や素材とデザインを結びつけたい」

COSとは「漉す」こと。

京都が培ってきた感性でエッセンスを抽出し、
現代に合った「本当によきもの」を生み出す。

箸置「コンテ」

美濃焼に起源を持つ多治見タイルの素材・技術を、COS KYOTOがリデザインした箸置「コンテ」。本年度『JCD PRODUCT OF THE YEAR in Chubu “タイル編”』準グランプリ受賞」」(写真提供:COS KYOTO)

木版画の手摺りの風合いを西陣織の技術で表現した帯地

木版画の手摺りの風合いを西陣織の技術で表現した帯地。ファブリック素材として多様な用途に用いることができる。(写真提供:COS KYOTO)

COS KYOTOは、伝統産業とコラボレーションすることで
新たな価値を提案しようと考えている。

織物、染物、陶磁器、漆器、竹製品、木工品、仏壇、人形、和紙、金工品など、
伝統産業の多くは後継者不足などの問題を抱える。

伝統産業を保護するために、伝産法という法律があり
伝統的工芸品産業は守られてきた。

しかし「認定されることで進化がストップしてしまう面もある」と北林さん。

「いろいろ要件を満たすことで保護されてきました。
しかしここに認定されるということは、
言い換えれば“絶滅危惧”業種ということでもあるんですね」

国が保護しないと産業が衰退する一方で、
税金をつぎ込めばつぎ込むほど、産業としての活力を失ってしまう側面もある。

北林功さん

COS KYOTO代表の北林 功さん。TEDxKyotoのディレクターでもある。

伝統産業を絶滅危惧種にしてはいけない。
新たな価値を生み出し、文化ビジネスに成長させること。
北林さんはそう考えた。

「伝統産業として昔からのものをただ受け継いで、守り抜いて、
絶滅危惧種的に生きながらえるというのではなく、
今もなお価値を提供しつづけ、循環させたいです。
そのためには新しいプロダクツを生み出し続けることが必要です」

「伝統工芸×COS」あるいは「伝統工芸×テクノロジー×COS」
そんなかけ算から、さまざまな商品が生み出されている。

実際にCOS KYOTOがコラボレーションする
金属工芸の制作現場を見せていただくことにした。

寛政年代より彫金錺金具を制作してきた京都の錺り(かざり)匠、金属工芸工房 竹影堂。

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京都の錺り匠、竹影堂。

竹影堂は江戸中期、寛政年代から200余年、
代々京都で錺金具(かざりかなぐ)を制作している。

京錺の四世竹影堂 榮眞(中村佳永)さんは、
鍛金、彫金を主流に伝統的な技術を、
今に伝える錺りの匠。

「もともとはうちは刀の錺りものの職人でした。
日本刀の目貫や小柄のハバキ(*)などを制作していたのですが、
明治に入ってから、刀の錺りものの需要は少なくなり、
四代目の竹次郎氏が金、銀を使った錺り物をはじめました」

*小柄(こづか)のハバキ:小柄とは小刀のこと。ハバキは刀身をさやに固定する金具。

故有栖川宮殿下の御用命を受け御寵遇をこうむり、「竹影堂榮真」の号を賜った。

海外向けの飾り物、置物の制作をはじめる。
茶道具、香道具、仏具、装飾品、引手や掛け軸の軸先などを
金、銀、銅、赤銅、四分一など、さまざまな金属素材で制作している。

金槌で壷状に形成

一枚の銀版から金槌で壷状に形成していく。

厚さを計測中

薄さ0.5mm。淵のところは厚く、内側は薄く仕上げる。

現在制作中の作品。釣香炉のように2年以上かけて、数千万円以上のオーダーのものもある。

数々の金槌

制作物の素材、大きさ、形状によって道具を使い分ける。

COS×竹影堂

京都の北に位置する古い町家を改修した、I.S.D.Aという
オリジナルの革製品の工房がある。

「ここで制作されるスタイリッシュな革の製品に
京都の伝統的な彫金技術による金属飾りを着けたい」

現代のライダーが愛好するレザーに京都のエッセンスを加える。
北林さんは京都で神社仏閣の錺りの老舗、
金属工芸の竹影堂さんとのコラボを考えた。
そうして出来たのがレザーカードホルダー。
COS KYOTOと竹影堂によるオリジナル商品である。

「若い世代に任せるところは、任せたい。そのうえで相談にのるところはのる」
と、竹影堂の中村さん。
若い世代の発想に伝統の智恵をアドバイスする。

「もともと皮と金属の組み合わせは馬具などにも使われる。
明治の頃は金唐革のタバコ入れに金具を使っていました。
タバコ入れというのは昔、武士が腰につけるものが無くなって寂しいから
キセルに鞘をつけて、腰に挿したんです」

北林さんからのアイデアを、伝統的な技法や歴史的な視点でさらにとらえなおす。
カードケースに加えるデザインは、扉八双と言われる伝統的な文様をモチーフとした。

榮眞(中村佳永)さん

COS KYOTOのパートナー、京錺の四世竹影堂 榮眞(中村佳永)さん。京都伝統工芸大学校総合工芸コース金属工芸科講師として後継者の育成に努めるべく学生の指導にあたっている。

「その時代におけるベストをつくす姿勢。
それが京都の「伝統」というものをかたちづくってきたと思います」

「伝統」はすべて、同時代の暮らしのなかにあってこそ。
既成概念にとらわれない。北林さんの姿勢である。

カードケース

京都の神社仏閣の錺り(金属工芸)の技術によって仕上げたカードケース。(写真提供:COS KYOTO)

カードケースの角の装飾

扉八双と言われる伝統的な文様をアレンジ。(写真提供:COS KYOTO)

次週はCOSがプロデユースした、
西陣織のランプシェード「十六夜」の開発の過程を追って、
西陣の工房を取材する。

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COS-KYOTO

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竹影堂

住所:京都府京都市中京区押小路通麩屋町西入ル橘町621

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