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触れる地球 Part2:
地球儀を通して、地球人をつくる。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.026

posted:2013.11.12   from:東京都千代田区丸の内  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/

credit

取材撮影協力:エコッツェリア

地球をひとつの共感圏にしたい。

「触れる地球」をつくった京都造形芸術大学教授であり、
NPO法人Earth Literacy Program代表の竹村真一先生は、
学校や教育機関など、子どもたちがさわりやすい場所に設置したいという。
オーロラ、流氷、天気図、地球温暖化と、
さまざまな科学的事象をデータベース化して
「触れる地球」上に表示できるが、本当の目的をこう語る。

「こんな地球儀面白いでしょ、ということではなく、
このような地球儀ができる時代に、
なぜ子どもたちは単純な地図だけで勉強しているのか? ということを
疑問に思ってもらいたい」

「触れる地球」は、教育の現場でこそ
最大限のパフォーマンスを発揮するだろう。

「科学とか宇宙などの理系は好きですが、知識を与えて終わりの教育だし、
数値にしてわかったような気になっているだけなんです。
月までの距離が約38万キロといわれて、誰が実感できるのでしょうか。
直径1.28mの『触れる地球』では、
月はちょうど38m離れたところに浮かぶバスケットボール。
大気の層はたった1mm。
そんな薄いところで奇跡が起こっているんだという実感値にすれば、
理科離れも少なくなると思います。そういった橋渡しができればと思います」

科学はすごく面白い時代に突入しているという。
さまざまなことが解明されるようになってきた。
それは“既知の未知化”であるという。
科学はわからないことを解明することと思っているが、
逆に考えると、科学が発達するほど、
今まで常識的にわかっていたつもりのことが、
とても奇跡的で不思議な現象であることに気がつく。

「例えば、かつて地球には酸素がありませんでしたが、
植物の光合成で酸素が生まれ、
その酸素(O2)の一部がオゾン(O3)に変化してオゾン層ができ、
UVカット層が地球にできたおかげで
ようやく植物も動物も“上陸”できるようになって緑の地球になりました。
すべて生き物がつくったんです。
過去のエコロジストは“人間だけが地球を改造している”といいますが、
そうではなく、生物は常に地球を改造してきました。
素晴らしい地球を、人間とコラボして一緒につくってきたのです。
これはここ数十年でわかったことなので、世代によっては、
この地球が生物によってつくられたものであるということを知らず、
もともとあった当たり前のものと認識しています」

こうしたことがわかるようになるすごい時代だが、
それが一般社会に伝わっていない。
「ワンダーに満ちたこの世界を実感していきたい」という思いで、
「触れる地球」は生み出された。

竹村真一先生

ITを駆使して地球環境問題に取り組む竹村真一先生。

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地球規模で感じることのできる地球人を育てる。

次世代に生みだしたいのは、
地球規模で考え、感じるセンスを持った “地球人”であるという。

「地球の体温と体調をリアルに感じられる子どもたちを育てたい。
10年、20年経ったときに、今の延長ではない未来をつくりたい」

「触れる地球」は、他の地域のことを想像するメディアとして優れている。
環境問題や世界の問題を“自分ごと化”できる。
地球に対する新しいセンスを持つ人間が出てくれば、
地球は大きすぎて何もできないなんてことはない。

もっと世界に普及したら、「地球歳時記プロジェクト」をやりたいという。
「春、日本に桜が咲いている。
同じ時期、アフガニスタンではどんな花が咲いているのか?
南米では? アフリカでは? と、それぞれの国でアップしていきます。
それは今でもインターネット上でできるけど、同じこの球を共有しながら、
季節の変化をあちこちで感じることができるのは、
この地球儀があって初めて可能です。
投稿できるという技術と、みんなで地球規模の花見をしたくなるという
モチベーションはまったく別物なのです」

感情や思いを伝えるメディアに進化すると、地球がひとつの共感圏になる。
地球大のセンスをもった地球人が生まれるだろう。
「地球儀をつくっているけど、実際は地球人をつくるプロジェクトです」
と語る竹村先生の真意だ。

「触れる地球」

ものづくりをしているひとたちは、その先のことづくりまで意識しているが、
竹村先生はさらにその先にあるひとづくりにまで想像をふくらませている。

「このインターネット革命でどんなモードの人類が生まれるのだろう。
同時代として生きていられるのはすごく面白い。
世界を見る解像度がこんなに上がり、センス・オブ・ワンダーが進んだ時代に、
それにふさわしい世界を見る窓を
メディア環境としてつくれなかったら、もったいないことです。
私たちのメディアデザインのあり方によって、
21世紀の地球人の質が左右されるという責任感をもって
取り組んでいきたいです」

衛星やインターネットのおかげで、
世界中のできごとをリアルタイムに知ることができるようになった。
しかしそれはまだ他人ごとであり、3人称。
「触れる地球」では、それを2人称としてとらえることが可能になる。

このプロジェクトに関しては、地球スケール=ヒューマンスケールといえる。
アフガニスタンのひとを想像することは、
隣の席にいる友だちを想像することと同じことになっていく。

「そういう地球人がたくさん出てきたら面白いと思いませんか。
人間の可能性って、そういうところにあるのではないでしょうか」

information

map

触れる地球

Web:http://www.tangible-earth.com/

NPO法人 Earth Literacy Program

Web:http://www.elp.or.jp/

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