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触れる地球 Part1:
新丸ビルで、地球の胎動に“触れる”。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.025

posted:2013.11.5  from:東京都千代田区丸の内  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
伊勢谷友介さんがパーソナリティをつとめ、谷崎テトラさんが構成作家をつとめる「KAI presents EARTH RADIO」と連携して、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。
http://fresco-style.com/blog/

credit

取材撮影協力:エコッツェリア

実感として感じるための「小さな地球」。

東京駅近くにある新丸ビルのエコッツェリアには「触れる地球」がある。
1千万分の1スケール、直径1.28mほどの、見た目はまさに地球。
この縮尺だと大気の層はたった1mmしかなく、
太陽は丸の内から15km離れたディズニーランドに位置するということになる。

目の前に日本がある。
地球儀を回すように手で右にスライドしていくと、
中国、中東へとちゃんと回っていく。
手でさわって、感覚的に操作できる地球だ。

この地球儀を発案したのは京都造形芸術大学教授であり、
NPO法人Earth Literacy Programの竹村真一先生。
内側からプロジェクターで投影された地球には、
平面地図でのデータをセッティングすれば、
さまざまなコンテンツを表示することができる。
ほとんどのデータは専門家から提供してもらったもの。
ウェザーニュースやJAXAなど、無償に近いかたちでデータを提供してくれている。
現在、コンテンツはすべて合わせれば100程度あり、
まるで科学のショーケースだ。

竹村先生は「共感のネットワーク」と呼んでいる。
「こちらのクリエイティビティとしては、プラットフォームをつくっただけ。
そこにいろいろな経験資源や知恵や専門性といった
地球大のデータベースが流れ込むと、新しいものが生まれます」

例えば過去20年分の世界の地震データ。
地震が起こった場所を黄色くマークしていくと、
自然とプレートの境界が浮き上がってくる。日本列島はまっ黄色だ。

ザトウクジラにGPSをつけて観測したデータもある。
ハワイからアラスカへと移動する彼らは、餌とともに動くのだろう。
その仮説は、プランクトンの増殖地図と重ね合わせることで証明される。
ザトウクジラの動きと、ぴったり重なりあうのだ。

渡り鳥にGPSを付けて観測したデータでは、北極を飛び立った2羽の鳥が、
大西洋上のそれぞれ違うルートを経由しながら、
最終的に南極で落ちあうというロマンチックな旅をしていることがわかった。
もちろん餌を追い求めての行動であり、
これもプランクトンの増殖とマッチする。

新丸ビル・エコッツェリアにある「触れる地球」。

阪神大震災の体験から地震のデータベースを可視化。

竹村先生は「触れる地球」にいたる前に、
まずは1996年に「sensorium」というインターネットサイトを立ち上げた。
そのコンテンツのひとつ「BREATHING EARTH」は、
世界の地震データベースを集めて可視化したもの。
前年95年に阪神大震災を体験し、考えついたものだ。

「まさかこんなに大きな地震がくると
思っていなかったひとがたくさんいました。
大陸移動説が実証されて何十年も経ち、
日本はプレートの境界上にある国だと知っていたはずなのに。
自分たちがどんな星に生きて、どんな列島に住んでいるのか。
知識でわかっていても、
それを実感値に落とし込むコモンセンスが決定的に欠けているのだと思います。
だから新しい地球感に基づいて、
毎日、地震活動を実感できるようなウェブサイトをつくりました」

地球の胎動を可視化できる素晴らしいサイトである。
インターネットの有用な活用法として、
97年にヨーロッパのメディアアートのイベント「アルス・エレクトロニカ」で、
グランプリであるゴールデン・ニカ賞(ネットワーク部門)を受賞した。

しかしいくら可視化できたとはいえ、
最終的なアウトプットが二次元のCGであるということに矛盾を感じ、
「触れる地球」というプロダクト製作に着手した。

「理屈上は、ただ球体にするだけだろうと自分でも思っていましたが、
実際に立体にしてみると、まったく違う体験が生まれました。
自分がつくろうと思っていたものをはるかに越える、
まったく新しいメディアとしての可能性を持つものになりました」

“触れる”カタチになったことで
「本当に生きた地球にさわれて、
呼吸がゆっくりになる。意識が深くなる」感覚があったという。
壮大なものを見て息を呑む経験に近い。

多くの理論や実証は、言葉ではずっと語われてきた。
しかしプロダクトになると、もうひとつのリアルが生まれる。

「自分が住んでいる星を俯瞰して見るということは、
人類にとって新しいモードなのかもしれません。
言語コミュニケーション、科学、思想などとは違う次元の
経験のイノベーションだと思います」

気象情報などリアルタイムの情報は、1時間ごとにアップデートされる。
生きている地球とシンクロするように「触れる地球」上で動いていく。

「生きたITシステムの使い方になったと思います。
データはこの地球の血液みたいなものです」
と竹村先生はいう。
「インターネットは人間がつくった地球規模の神経系ですが、
人間社会を結ぶだけではもったいない。
人間と地球がコミュニケーションする神経系として
機能できるのではないかと思います。
これを感性のインフラとして、もっとデザインしていきたい」

いまはまだもらったデータを重ねてみているだけで、
そこからまったく新たな価値を創造して、
本当に異なる視点で地球を発見するツールに進化させることがこれからの課題。
お店で売られている魚や肉の育った環境を調べたり、
農作物のトレーサビリティや、背景の物語を勉強することもできるだろう。
可能性はまだまだ広がりがある。

常に呼吸し、刻一刻と変化し続ける地球をリアルタイムで表現する。
科学を理屈で見せるのではなく、インターネットの力をうまく活用することで、
躍動する地球に生きているという実感を得ることができる。
本物より本物を感じることができる小さな地球である。

information

map

触れる地球

http://www.tangible-earth.com/

NPO法人 Earth Literacy Program
http://www.elp.or.jp/

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