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TESニューエナジー Part1:
たき火で携帯を充電!?
熱を電気に変える発電鍋。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.021

posted:2013.10.8   from:大阪府  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tetra Tanizaki

谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。http://www.kanatamusic.com/tetra/

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/

たき火の熱を電気に変える技術。

いま「発電鍋」が、話題になっている。
鍋を火にかけることで発電でき、
煮炊きしながら携帯電話の充電ができるなど、電源として使えるのだ。

この熱を直接電気に変える発電鍋を開発したのは、
ベンチャー企業のTESニューエナジーだ。
藤田和博社長に話を聞いてみた。

藤田和博社長

TESニューエナジーの藤田和博社長

きっかけは東日本大震災。

2011年3月11日。
その日の朝、つくば市に行っていた藤田さん。
飛行機で羽田から大阪へ向かう帰路で東日本大震災が起きた。
大阪空港に近づくも上空を3周して着陸した。
空港のモニターでは東北の震災の様子が伝えられていた。

夜になってから被災地の映像が伝わってきた。
被災者の方がドラム缶に木材をいれて火を起こし、暖をとっている。
まだ寒い東北。雪も降っている。

その映像を観た時に「この火でなにかできないか」と藤田さんは考えた。
被災者は安否情報を携帯電話で確認している。
電気が来ていない地域では携帯電話のバッテリーはすぐになくなっていた。

藤田さんの会社は「熱を電気に変える技術」を持っていた。
主に産業界からの受注で工場の廃熱を電気に変える仕事を請け負っていた。

寒い東北に温かい食べものをつくれる「鍋」を送りたい。
それに自社の熱電技術を取り入れたら、
被災地の電力供給に役立てるのではないかと藤田さんは思いついたのだ。

鍋底に熱発電板を組み込み、たき火などの炎で熱すると、水との温度差で電圧が生じる。
これにより発電できれば、携帯電話などが充電できるというしくみだ。

その決断は早かった。
夕方思いついて、その夜の10時には開発を始めた。
鍋を30個近く買ってきて、使えるものを試した。
鍋底の外側に熱発電板を取りつけ、鉄のカバーで覆った。
鍋の内側と外側の温度差が電気に変換される。
3か月ほど試行を繰り返し、ついに完成した。

発電中

約10秒後に青いランプが点灯し発電が始まる。約1時間で充電できる。

Page 2

発電のしくみ。

鍋のなかに水や具材を入れた状態で、たき火やガス台などの火にかけると熱ができる。

鍋のなかで沸騰した水は約100度。
一方、直火にあたる鍋の外側は500度くらいまであがる。
この「温度差」を使って発電する。

実際に発電鍋でiPhoneの充電をしてみた。
水を張った発電鍋を火にかけると、約10秒で発電が始まる。
発電鍋の取っ手の部分から充電が始まったことを示す青いライトが点灯。
USBケーブルでつないだ携帯電話の画面に充電中のマークが表示された。

発電鍋で発生する電気は7ワットほどで、
携帯電話や小型ラジオなどのフル充電までは約1時間だという。

熱発電は導電材料の両端に温度差をつけることで発生する電圧を利用した発電方式。この現象はゼーベック効果と呼ばれる。

温度差を使うと熱いコーヒーでも短時間なら、ほんのわずかであるが発電することができる。独立行政法人 物質・材料研究機構(NIMS)が熱電発電の技術を動画で紹介している。

商品企画のチャレンジ。

技術を商品化して消費者へと届けるためにはいくつかのハードルがあった。
藤田さんの会社はもともと工業炉や船舶のエンジンの廃熱を
電気に変える技術を提供していた。
発電の原理はシンプルで、その技術はある。
しかしこれまで一般消費者向けの商品をつくったことはなかったのだ。

被災地のことを考えるとなるべく早く商品を届けたい。
藤田さんは「iPhoneを充電できる鍋」を開発の目標においた。
携帯電話に充電するしくみは1か月でできた。
しかしiPhoneの充電のしくみが特殊でさらに2か月かかった。
世界を目指したいと考えたのでiPhoneの充電にこだわりたかったという。

3か月後、ようやく商品が完成した。
しかし、販路があるわけではないし、
大きな宣伝予算をかけられるわけでもなかった。

しかしこれまでにない技術を使った商品である。
メディアに伝われば注目されるはずだと考えた。
藤田さんは記者クラブで「発電鍋」の記者発表をおこなった。
その日のうちにNHKからスタジオでの実演の依頼が来た。

それを見た視聴者がTwitterで拡散した。
「発電鍋」は、口コミやSNSで広がっていった。

こうして世界で知られることとなった「発電鍋」。
次回は世界各国からの反応や使われ方、
藤田さんのベンチャーとしての歩みをお伝えします。

産業技術総合研究所の外観

独立行政法人 産業技術総合研究所。ここからのベンチャー企業としてTESニューエナジーはスタートした。

TESニューエナジーの研究室

TESニューエナジーの研究室。ここから新たなイノベーションが生まれます。内部は撮影禁止でした。

information

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株式会社TESニューエナジー TES New Energy Co.

独立行政法人 産業技術総合研究所 技術移転ベンチャー

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