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FabCafe Part1:
つくりかたの未来系 
デジタルものづくり共有スペース。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.015

posted:2013.8.20   from:東京都渋谷区  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tetra Tanizaki

谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。http://www.kanatamusic.com/tetra/

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/

世界に広がるFabカルチャー。

いま、ものづくりの世界に革命がおきている。
3Dプリンター、レーザーカッターなど
デジタルテクノロジーにともない発展した「工業の個人化」。
大企業が簡単には成しえない商品の開発に、
デジタルテクノロジーを有効的に利用して
アイデアを持った個人やグループが参入できる環境が生まれている。
それが、“デジタルファブリケーション”と呼ばれる動きだ。

デジタルファブリケーションとは、
パソコンと接続されたデジタル技術を駆使したものづくりのこと。
この場合、消費者が設計者・製造者となれるようなものづくりが多く、
必要な商品を自分でつくることを意味している。

個人がものづくりのネットワークのなかで、
つくるための知識を交換し、共有しながら、
自由な発想で、ものづくりの世界に変化をおこしている。
製造業のあり方やビジネスの方法、マーケティングの手法も
まったく違ったものに変っていくと考えられる。

そんなデジタルファブリケーションの
拠点となるスペースが渋谷の道玄坂上に構える「FabCafe」だ。

FabCafeはそんなデジタルファブリケーションのものづくりの実験場だ。

「ものづくり」の新しいアイデアが生まれる
デジタル工作機械を備えたコミュニティカフェ。

レーザーカッターやカッティングマシーン、3Dプリンターなどのデバイスを置き、
購入した「Fabチケット」で各種デジタル工作機械を使用できる場を提供している
FabCafeは、インターネット回線と電源を無料開放。
コワーキングスペースとしても使うことができるほか、
これらのデバイスを使ったさまざまなワークショップや
クリエーターが集まるパーティなど、毎月さまざまなイベントが企画されている。
また実際にFabCafeで制作された作品なども販売されている。

「FabCafe」店内

レーザーカッターで素材を切り抜く

レーザーカッターで素材を切り抜く。コンピュータ上のデータ通りにレーザー光によって素材を切断したり、彫刻したり、表面に刻印することができる。

Page 2

世界50か国、250か所にひろがる
FabLabのネットワーク。

FabCafeは、「FabLab」の世界的ネットワークのひとつとしてスタートした。
FabLabの定義は、デジタル工作機械を備えた市民工房の世界的ネットワーク。
現在、世界で50か国、250か所に広がっている
「ものづくり革命」のムーブメントだ。

もともとはMIT(マサチューセッツ工科大学)の
ニール・ガーシェンフェルド教授のプロジェクトに端を発する。
『FAB: ものづくり革命 パーソナル・ファブリケーションの夜明け』
という著書で世界的に知られている。

著書のなかで語られるパーソナル・ファブリケーションとは
「あらゆるものを自分でつくれる時代」のこと。
ひとはそういった新しいものづくりに触れた時、
どういったアクションをしていくのか。
そんな実験をおこなう場所=FabLab(ファブラボ)。
大学の研究室ではなく、まちのなかにつくっていく試みである。

岩岡孝太郎さんと川井敏昌さん

FabLab Japan発足時からのメンバーである岩岡孝太郎さん(右)と川井敏昌さん(左)。2010年春にFABの考え方に共感する人たちが集い、FabLab Japanを設立。

日本にFabLabを紹介したのは慶応義塾大学SFCの田中浩也准教授。
2010年春にFabLabの考え方に共感する人たちが集い、
FabLab Japanが創設された。
現在、鎌倉、筑波、渋谷にFabLabが開設され、
各施設は特色ある独自の運営を行なっている。

FabCafeはFabLab Japan発足時からのメンバーである岩岡孝太郎さんが、
クリエイターコミュニティを運営するロフトワークにFab Cafeプランを提案。
一般市民が気軽に利用できることをめざし、カフェ形態で運営している。

単に「デジタル工作機械」が置かれた共有スペースということだけでなく、
「ものづくり」の新しいアイデアが生まれるコミュニティとして機能している。
岩岡さんはFabLabの理念を個人をエンパワーすることでもあると語る。

「かつてインターネットが普及しはじめた時代に
誰もがインターネットにアクセスすることができる場所として
図書館などにインターネットルームがつくられたように、
FabCafeはデジタルファブリケーションの時代において
市民がいろんな知見を得たり、学ぶための共有スペースです」

「最初のFabLabはボストンの裕福な地域ではなく、
比較的所得が低い層が集まるエリアにつくられたんです。
家庭でコンピュータを買い与えられなかった人でも、
FabLabでコンピュータの使い方を学び、
スキルを覚え、レーザーカッターや
3Dプリンターなどを使えるようになりました」

スイーツの飾り付けをレーザーカッターで切り出す

カフェで提供されるスイーツの飾り付けをレーザーカッターで制作中。

FabLabは個人をエンパワーする社会実験でもあった。
ボストンからはじまったFabLabはインドや、
アフリカ、アフガニスタンのような途上国にできていく。
途上国においての社会支援であり、先端技術に関する学びの場であり、
起業のチャンスを生み出すものでもある。

アートや建築、デザインと結びついたりアートコミュニティとなっていったり、
デザインの学校になっていくなど、FabLabは文化そのものの発信地となり、
20世紀型の大量生産、大量消費社会から、
多品種少量のオンデマンド型のものづくり文化を育てる場となっているのだ。

次回はFabCafeで制作された作品などについてお伝えします。

造形されたフィギュア

最新の全身3Dスキャナによるスキャニングを行い、そのスキャンデータを使ってデジタルクレイモデラーで造形されたフィギュア。

information

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FabCafe

住所:東京都渋谷区道玄坂1-22-7 道玄坂ピア1F

営業時間:月〜金 10:00 〜 20:00 土・日 11:00 〜 20:00

定休日:祝日

Web:http://tokyo.fabcafe.com/

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