連載
posted:2013.7.9 from:神奈川県小田原市 genre:ものづくり
sponsored by 貝印
〈 この連載・企画は… 〉
「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。
editor profile
Tetra Tanizaki
谷崎テトラ
たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。http://www.kanatamusic.com/tetra/
photographer
Suzu(Fresco)
スズ
フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/
小田原に本社のある、「ひとり家電メーカー」Bsizeの新商品は、
置くと充電できる充電器だ。
木でできた家具やデスクにとけ込むデザインで、飛騨杉を使用。
中に電磁コイルが入っていて充電できる仕組みだ。
電流を磁場に変える電磁誘導という原理を使っていて、
iPhoneについているジャケットで磁場を電流に変えて充電できるのだ。
これは「Qi」という国際規格によるプロダクト。
同様の仕組みを持つ製品は他社からも出ているが
八木さんはそれを国産間伐材を使った素材で実現したいと考えた。
木の製品は、日本人の美意識や暮らしにも調和するはずだ。
そして林業の再生や地域にも貢献できる。
今、日本の森林の荒廃が進んでいる。
安い輸入材によって日本の木材が使われなくなり、
それによって森林の維持管理がおぼつかなくなっている。
間伐されなくなることで森は荒れ、産業は疲弊し、地域も衰退する。
これを間伐材の積極的な利用によって、
少しでも食い止めていこうというのが八木さんの考えだ。
しかしひとつ問題があった。
杉の間伐材は強度に問題があり、簡単に割れてしまい、
ある程度の強度が求められる家電には使いにくい素材といわれるのだ。
八木さんは岐阜大学教授のある論文に注目する。
通常の倍の厚さに切った木を、熱と蒸気を加えて圧縮し、一枚の板にする技術。
それによって木の強度は3倍になる。
杉の木の圧縮技術を持つ飛騨産業をパートナーに選んだ。
こうして上に置くと充電できる商品のプロトタイプが出来上がった。
そんな八木さんのものづくりのこだわりのポイントは
「デザインとテクノロジーで社会貢献する」ということだ。
社会貢献が製品開発のベースにある。
会社のコンセプトはギリシャ哲学の「真・善・美」だという。
「真=学問」「善=道徳」「美=芸術」
学問と道徳と芸術を極めることで人間の完成を目指す古えの智慧。
2500年前の哲学が今でも説得力があるということは、
今その哲学によってつくられた製品は
きっと2500年後のひとにも受け入れてもらえるはずだ。
であればそれだけ普遍的なプロダクトができるはず。
時代に左右されない商品をつくることができるのではないか。
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八木さんは「真・善・美」を今のものづくりにおきかえると
「真=テクノロジー」「善=社会貢献」「美=デザイン」になると考えた。
「SIN・ZEN・B」という言葉を組み替えたアナグラムから
Bsizeという会社名をつけた。
「技術的にすぐれていて、かっこいいデザインだったとしても
環境にすごく悪影響があるようなものだったり
未来の資源から借金をしているようなものでは意味がない。
現代の時代の自己満足に終わってしまう」と考えた。
「間伐材、省エネ、リサイクル……
環境への配慮は大切な要素、それがないとBsizeの商品ではないと考えています」
これまでメーカーというのは
大きな資本によって支えられるビジネスというのがスタンダードな考え方だった。
しかしデジタル化がすすんでくるなかで、インターネットを利用して
ひとりでもできるという可能性が生まれてくる。
PCを使って設計、プロトタイプも3Dプリンターを使って、
高品質にすばやくできるようになった。
そのようなツールを使って、低コスト・小ロットでつくれる環境が整った。
小ロットでつくれるということは
小さな資本でも始められるということ。
究極は「たったひとりでも」自己資金で
メーカーが起業できるということだ。
またクラウドファンディングの仕組みで
たくさんの個人から少額ずつ資金を集められる。
たくさんの商品をラインナップする必要もない。
年にひとつ、じっくり商品をつくり、それを売る。
大手のメーカーではどう組立てて、どう効率をあげるのか、
どうコストを下げるのかが製品開発の前提となるが、
八木さんは大手が経営判断のなかで淘汰してしまうであろう、
手のかかる商品をあえてつくった。
そして最も重要な要素は
「小規模であれば哲学がぶれない」ということ。
その商品が生まれてきたことで、
もっと良い未来が来るようなプロダクトをつくること
それが八木さんの目指す商品の姿である。
Bsize社長の八木啓太さんは
7月放送の「KAI Presents EARTH RADIO」に
ゲスト出演が決定しました。ぜひお聴きください。
伊勢谷友介がパーソナリテイ、
谷崎テトラが構成を務める「KAI presents EARTH RADIO」。
毎月第4火曜日 22:00(~23:00)インターFM76.1で放送。
http://www.kaitouchearth.jp/radio/
オンタイムでWebでも聴けます。http://radiko.jp/
information
Bsize Inc.
ビーサイズ株式会社
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