連載
posted:2013.6.11 from:東京都港区南青山 genre:ものづくり
sponsored by 貝印
〈 この連載・企画は… 〉
「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。
editor profile
Tetra Tanizaki
谷崎テトラ
たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。http://www.kanatamusic.com/tetra/
credit
撮影:上原朋也
『ブラッド・ダイヤモンド』という映画がある。
2006年に公開されたアフリカ内戦での現実を描いたサスペンス映画だ。
「この映画にアフリカの紛争のなかでの
ダイヤモンドの不正売買の問題が描かれていたんです」
と「HASUNA」代表取締役兼チーフデザイナーの白木夏子さんは話す。
国際市場で高値で取引されるダイヤモンドなど宝石は、
産出国にとっては貴重な外貨獲得資源である。
しかしその産出国が内戦など紛争地域だと、
その国は宝石類で得た外貨を武器の購入にあてるため、
内戦が長期化および深刻化することになる。
エシカルジュエリーHASUNAの取り組みは
ものづくりの原点において貧困や紛争や差別を生み出さない
独自のルートでジュエリーをつくろうという試みだ。
HASUNAでは、カナダやボツワナなどからエシカルなダイヤモンドを仕入れている。
「いまはキンバリープロセスという国際的な協定ができて、
紛争をおこなっている地域からは輸出しないという
取り決めができています。
しかしダイヤモンドだけじゃなく、
金やレアメタルをめぐっても同じ問題がおきています。
鉱物が武器輸出の対価になるとか、資金洗浄の温床になるとか、
子どもが洗脳されて少年兵として使われるとか」
ほかにも鉱物の取引きは、貧困や環境破壊を生み出している。
白木さんは新しいビジネスの仕組みが必要と考えた。
パキスタンの石を使ったコレクションが今月発売になる。
「パキスタンの北にはヒマラヤ山脈やカラコルム山脈、
7000メートル級の山々が連なっているんですが、
ここで水晶やルビー、サファイア、アクアマリンが採れるんです」
しかしパキスタン国内で算出される石の90%が
国外に密輸されてしまう現状があるのだという。
「隣国の中国やアフガニスタンからバイヤーが入ってきて
鉱山労働者から買いたたき、原石のまま国外に密輸して
それぞれの国で販売してしまっているんです。
それだとパキスタン国内の経済にもプラスにならない。
現地の少数民族も貧困状態に陥ったままになりますよね」
そこで、白木さんは直接現地にいくことにした。
現地で直接やりとりし、鉱山労働者の方から石を買う。
それを現地に住んでいる貧困層の女性たちに磨いてもらい、
その磨いたものを買いつけ、商品をつくる試みだ。
こうして、地域の女性の雇用も生み出すという。
「パキスタンでは女性がすごく差別されています。
地域によっては女性は外に出ては行けないとされていたり、
黒いブルカをまとうことを、義務づけられているのです。
女性が教育を受けただけで殺されてしまったり、
男性に逆らうと顔をつぶされてしまうという痛ましい事例もあります。
日本のようにバイトしたいと思えばすぐできるという環境ではなく、
女性は仕事自体ができない。教育も受けられない。
そこに対して日本の女性としてできることは
女性の視点で女性が身につけるジュエリーをつくる仕事を一緒にして、
現地の女性の希望を与えることだと思いました」
パキスタン現地でワークショップをおこなう白木さん(写真:白木さん提供)。
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HASUNAのビジネスモデルでは、
ほかのメーカーより高く買いつけることになる。
普通に考えれば、安く買って高く売るのがビジネスの常識である。
はたして採算はとれるのだろうか?
「原価率は高くなります。
わざわざ現地まで行く渡航費用も入ってきます。
でも、ほかで削れる経費は削ります。たとえば広告宣伝費とか。
むしろ高額であるならばジュエリーとして
一流のものをつくりたいと考えています。
本当に良いもの、高価であっても欲しいと思えるものを、
現地のひとと一緒につくっていくことがすごく重要なんです」
高額の商品ではあるがゆえに、
その値段にふさわしい商品を届けたいと考える。
それが、商品へのこだわりだ。
本当の意味で「良いもの」を選ぶエシカルな消費。
そんな消費者の選択が、世界を変えるのかもしれない。
HASUNA本店店内。国産間伐材を使った内装。障がい者雇用によって制作されたショーケースを使用している。
店の一画に、鈍い光を放つジュエリーがあった。
聞けば、水牛の角でつくられたものなのだという。
「ルワンダでは50万人の女性がレイプされ、
父親がわからない子どもが2万人生まれた。
父親のいないなかで、女性ひとりで子どもを育てられず、
ストリートチルドレンがたくさん増えてしまいました」
HASUNAはルワンダで、この水牛の角を使ったジュエリーをつくっている。
ストリートチルドレンの職業の受け皿としてつくられた、
研磨工場からうまれた商品だ。
商品の輸入が増えるとともに現地での雇用も生まれていく仕組みだ。
水牛の角を使ったジュエリー。
ルワンダの牛の角の研磨工場で笑顔を見せる従業員(写真:白木さん提供)。
白木さんはベトナムの国連組織で働いていた経験がある。
なぜNGO活動ではなく、ビジネスとして立ち上げたのだろうか。
「学生の頃やそのあと国連で働いていたときは、
目の前にいるひとを助けることで必死でした。
しかし援助業界にいるひとだけでは、
この世の中って変わっていかないのだと気がついたのです。
国連のひとは皆優秀だけど、
ひと握りのそのひとたちだけでは貧困問題は解決できない。
実際に解決にむかっていない。
それが援助の限界なんだろうと思いました。
援助というのは、与えるひとと受けとるひとの関係。
援助を受けすぎて、援助がなければ成り立たないような
国が出てきてしまっているのも現状です。
自立できない子どもを育てるような援助だったら、
私は援助はやらないほうがいいと思ったのです。
そうではなくてちゃんと肩を並べて、
一緒になにかできることがあればいいと思いました。
魚を与えるのではなくて、道具を与えて魚の穫り方を教える。
宝石をただ買いつけるのではなく、
現地の女性と磨く技術を一緒に開発する。
良いものをつくってお金を稼いで自立できるようにする。
それが一番の貢献だと思うのです」
ベリーズのウィルクス貝とペンダント。現地に貝殻の研磨機を寄付して技術の向上と自立を応援している。
エシカルとはHASUNAの会社としての定義では
“ひとと社会と自然環境に配慮してものづくりを行っている姿”
となる。最後に白木さん自身にとって
「エシカルにものづくりをすること」についてお聴きした。
「私の言葉だと、“ひととして正しいことをする”
“あらゆるひとが笑顔になる”ということなのかな。
エシカルにものづくりをすると皆がハッピーになるという気がするんです。
皆が誇りをもって仕事をしていて、
そして身につけるひとがハッピーになる。
輝きを放っているものの裏側には
しっかりとしたものづくりをしているひとたち、
誇りをもって仕事をしているひとがいる。
そういうものがエシカルな証しと考えています」
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