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ABOVE BIKE STORE Part1:
“一台の自転車との出合い”
から始まった、
ものづくりのこだわりと起業の
ストーリー。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.001

posted:2013.5.14   from:神奈川県川崎市  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tetra Tanizaki

谷崎テトラ

たにざき・てとら●アースラジオ構成作家。音楽プロデューサー。ワールドシフトネットワークジャパン代表理事。環境・平和・社会貢献・フェアトレードなどをテーマにしたTV、ラジオ番組、出版を企画・構成するかたわら、新しい価値観(パラダイムシフト)や、持続可能な社会の転換(ワールドシフト)の 発信者&コーディネーターとして活動中。リオ+20など国際会議のNGO参加・運営・社会提言に関わるなど、持続可能な社会システムに関して深い知見を持つ。http://www.kanatamusic.com/tetra/

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/

ないからつくらなきゃというのが、ものづくりの始まり。
日本発のオリジナルバイク。

こだわりを持ってオリジナルバイクを自作するメーカーがある。
Starfuckers bike。
たえず変化し続けるストリートシーンの中心で、
オリジナルバイクを製作し販売している。
そのスタンスはエンドユーザーの目線でバイクをつくることだ。

東京の中心地よりほど近い神奈川県 二子新地に、
Starfuckers bikeのコンセプトストア
「ABOVE BIKE STORE」を構える。

ショップであり工房であるABOVE BIKE STOREに
オーナーの須崎真也さんを訪ねた。

こだわりのオリジナルフレームを持つ須崎真也さん

Starfuckers bikeのこだわりのオリジナルフレームを持つ須崎真也さん。

「ABOVE BIKE STORE」外観

Starfuckers bikeのコンセプトストア「ABOVE BIKE STORE」。

須崎さんの人生を変えた一台のバイク。

須崎さんの人生を変えたのは、
あるとき出会った一台の自転車だった。
 
もともとアパレルの仕事をしていた須崎さん。
起業のお金をためるために会社をやめ、
当時は産業廃棄物の処理の仕事をしていたという。

「あるとき都内の皇居の周りを4tトラックで走っていたら、
時速60kmで走っている僕のトラックに、並走してくるメッセンジャーがいるんですよ。
メーター壊れてないはずなのに、速いんですよね」

それが2008年メッセンジャーの世界大会CMWC優勝者、SINOさんだった。
SINOさんの自転車はハンドルが特徴的で、のちに須崎さんと知り合うことになる。
当時は珍しいメッセンジャーのピストバイクに須崎さんは魅了された。

「アパレルで経験を培っていたけれども、
一回離れたことで少し世界観が広がった。
アパレルにこだわらず、自分の経験を活かして
何かもっとライフスタイルが提案できないか、
自分たちがわかるような商材で、
なおかつみんなの気持ちがリッチになるようなものを
提供できるようなビジネスができるんじゃないかと思ったところで、
ピストバイクに出合ったんです」

たったひとりの起業リサーチ。

そこからリサーチがはじまった。
自転車の業界のこと、価格のこと、製造工程のこと。
自転車の世界のOEM(受託製造)の拠点は、台湾だということで、
仕事が終わった後、台湾について調べた。
メールを書いて、何度も台湾に通った。

「イメージしたデザインをノートに書いて、
最初からある程度準備して持って行きました。
原宿でリサーチしたブックレットなどをつくって、
プレゼンテーションで、日本でこういう自転車が流行っているからと
アピールしました」
しかし言葉の壁もあった。

「OEMを申し込んだ先は、最初は全然自転車をつくってくれなかったんですよ。
“こいつ大丈夫か?”と思われていたと思います。
1回目の時は、いろいろ話しても
なかなかコミュニケーションが取れなかった。
2回目に行ったときに、“なんとかお願いします”と言って。
相手は“OK”と答えてくれるんですけど、つくってくれない。
3回通って、もうダメだと思って、
“このままでは帰れない。いつできるのか? この書面にサインしてくれ”
と言ったら、“それじゃあわかった。それならつくろう”
とやっと重い腰が上がったんですよ」

こうして須崎さんが待ち望んだ最初の100台のスターファッカーズが生まれた。

誰よりも早くやる。誰もが動いていないうちにやる。

大手の自転車会社が圧倒的なシェアをほこる業界だが、
新規の起業に秘策はあったのだろうか?

Page 2

「いちからオリジナルでつくることにこだわりました。
最初からかたちになっているものを色だけ塗り替えるという世界だと、
最終的に大手の方が来て、足元すくわれるというのが
今までの経験であったんですよ。
なので、誰よりも早くやる。誰もが動いていないうちにやる
ということにお金をたくさん注ぎ込みました」

スターファッカーズはオリジナルの商品をつくると同時に
ストリートシーンの絶え間ない変化に迅速に対応し
ユーザーの要望に確実に答えていくものづくりを展開する。

「大手さんが舵取りに追われているときに、
僕たちは、僕ひとりの頭の中で決定すればすぐ行動に移せる。
そういうような強みをフルに活かすためには、
もう即決断しかなかったんですね」

変速なし、ペダルと車輪の動きが常に直結する自転車。
シンプルで壊れにくい、そして独特の乗り心地がある。

ピストとは一般的な自転車には必ずある
「フリーギア」と呼ばれるものがない自転車のこと。
固定ギアで、ペダルの動きと後輪の動きが直結しているのが特徴。
シンプルで壊れにくい。
そして地面をしっかり感じることができる独特の乗り心地がある。
もともとは日本の競輪選手が乗っていた自転車が原型で、
海外のメッセンジャーなどで流行し、日本に逆輸入された。

「2008年くらいにSNSやBLOGで広がっていって、
興味を持つ人が爆発的に増えた。しかし事故も増えたんですね。
間違った情報がひとり歩きもした。
そこで発信できるベースをつくろうと考えたんです」

須崎さんは二子新地に自転車文化の発信拠点として、
10坪ほどのショールームをつくった。
そこで自転車の乗り方をしっかり伝えつつ、
タイヤなどの商品を置くようにし、
そこから現在のABOVE BIKE STOREにつながるショップが生まれた。

オリジナル自転車をつくるアトリエであると同時に
ストリートと直結するバイク文化の発信拠点、
そしてライフスタイルを提案する須崎さんのものづくりの現場である。
(次回に続く)

カスタム中

ストリートに直結したものづくりを通して、自転車の楽しみ方やライフタイルを提案する。

さまざまなパーツを取り揃える

カスタムメイドのさまざまなパーツを取り揃える店内。

フレームが並ぶ

タイヤのパーツ

information

map

ABOVE BIKE STORE 
アバブバイクストア

住所:神奈川県川崎市高津区二子1-25-18

TEL:044-712-0074

Web:http://www.abovebike.com/ http://starfuckers.jp/

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