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TARASUKIN BONKERS
Part1:南伊豆でのライフスタイルから育まれるデザイン性の高い小物たち。

貝印 × colocal
ものづくりビジネスの
未来モデルを訪ねて。
vol.003

posted:2013.5.23   from:静岡県南伊豆町  genre:ものづくり

sponsored by 貝印

〈 この連載・企画は… 〉  「貝印 × colocal ものづくりビジネスの未来モデルを訪ねて。」は、
日本国内、あるいはときに海外の、ものづくりに関わる未来型ビジネスモデルを展開する現場を訪ねていきます。

editor profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Suzu(Fresco)

スズ

フォトグラファー/プロデューサー。2007年、サンフランシスコから東京に拠点を移す。写真、サウンド、グラフィック、と表現の場を選ばず、また国内外でプロジェクトごとにさまざまなチームを組むスタイルで、幅広く活動中。音楽アルバムの総合プロデュースや、Sony BRAVIAの新製品のビジュアルなどを手がけメディアも多岐に渡る。https://fresco-style.com/blog/

小さな集落への移住から、はじまったものづくり。

カラフルなナイロンロープを使ったほうきや、流木を使ったハンガーなど、
自然素材と工業的な素材を組み合わせた雑貨を
デザインしているタラスキンボンカース。
すべて手作業でつくられているが、
都心部のインテリアショップに売っていても
何の違和感もないスタイリッシュなデザイン性が人気を博している。

近藤拓也さんと北田啓之さんの
ふたりからなるユニット、タラスキンボンカース。
その工房兼住居は静岡県南伊豆町にある。
伊豆半島の先端で、
車がなければ生活できないような小さな集落の
小高い丘の上にある工房を訪ねた。

ふたりは当時勤めていたそれぞれの会社を同時期に退職し、
起業するために事務所を探していた。
そのうちに田舎の物件に興味を持ち始め、
空や海、緑の美しさなどに感動し、この場所に決めた。

高台という立地が生かされたアトリエ

高台という立地が生かされた、窓の外に広がる豊かな緑が美しい。

会社勤めをしていたふたりは、もともとものづくりをしていたわけでもなく、
そもそもものづくりを生業にするなんて、
数年前には考えてもいなかったことだという。
しかしこの家に移住したことが、彼らのものづくり哲学の原点となった。
「壁はキツツキの穴だらけだったし、家の改装のために、
自分たちの手でトンカン修繕しました。
そういうことをしている時間も楽しかったですね」と近藤さん。
その作業が現在のものづくりにつながっている。

「お気に入りだった服も、暮らしの変化とともに
もう着ることもなくなりました。かといって捨てるのは忍びないし、
都会のように簡単にゴミが出せる環境でもない。代わりに布巾が必要だけど、
売っている店は何十キロも離れている。そうだ、切って布巾にしよう」
最近では少なくなったかもしれないが、
かつてはどの家庭でもあまった洋服や布を切って縫って布巾などにしていた。
ただそれだけのことだが、
この布巾は後にきちんとした商品となって売り出されることになる。

さらにいろいろなものが必要になっても、
近くにコンビニもスーパーマーケットもない。
「買い物に行くことが、想像以上に大変だったんです。
だからつくれるものはつくってしまおうと、
必要半分、楽しみ半分で始めたようなものです」と北田さんは笑う。

つくった布巾やブランケットと、南伊豆の暮らしを掲載するために、
〈TARASUKIN BONKERS〉という名前のホームページをつくった。
ホームページをつくって3か月ほどしたころ、
それを見た東京・青山にある
インテリアショップ〈CÏBONE〉のある担当者から、
クッションカバーを製作してみないかという仕事の依頼がきた。

試作品第1号のクッション

イスの上にあるクッションが、試作品第1号。

CÏBONEが持っていた布のサンプル見本帳を素材として、
パッチワークのクッションカバーを製作。
この評判が良く、売れ行きも好調。
その後、六本木の国立新美術館にある
〈SOUVENIR FROM TOKYO〉で催事の話が持ち上がり、
それまで自分たちでつくって使用していたほうきやトートバッグなども
アレンジして新たにプロダクトとして発売することにした。
こうして20アイテムを超える商品を持つ
〈TARASUKIN BONKERS〉へとブランド化していく。

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実用が持つ美しさから学んだデザインアプローチ。

タラスキンボンカースのデザイン的なインスピレーションとなるものは、
南伊豆の小さな集落での暮らしそのものだ。
「こっちのひとは老人でもよく働きます。
ひとにお願いするのではなく、すべて自分たちで試行錯誤している。
集落や港で、おじさんが網を編んでいたり、
トタンをパッチーワークしてイノシシ除けにしていたり。
そういうことを見るのが楽しかったですね」と語る近藤さんにとって、
南伊豆の暮らしは、東京の“楽しい”とはまた異なる視点の“楽しい”なのだ。

アトリエ内の階段

実際に使われていた背負カゴなど、アイデアソースやプロダクトの断片が、実際の暮らしに溶け込んでいる。

「ただのロープや網がすごく珍しく見えたりします。
“みかん網の手提げ”というプロダクトがありますが、
直売所に行くと、オレンジ色の網にみかん、黄色にレモン、
緑にキャベツなどが入れられている。
いろいろな色の網がいきいきと使われているんです。
漁港で見かけるロープや網もそう」と近藤さん。
ロープも網も、都会の暮らしでも目にしていたかもしれないけれど、
都会ではそれらの重要度は低く、意識に残らなかったのかもしれない。

一方、北田さんは素材を集めるのが好きなようで、
「あざやかな色の網をたくさん集めてみたり、
浜辺で貝殻や流木を広って集めたりしていました」という。
それらの素材を組み合わせたり、“これをこう使えば便利”という
自分たちなりの工夫が、タラスキンボンカースの商品へと結実していく。

連尺バッグ

北田さんが見せてくれた連尺バッグ。農業用の網と背負カゴの肩ひもである連尺を組み合わせた。

このような考え方は、南伊豆で得た気づきだ。
「おじいさんやおばあさんが、日常的に使っている背負いカゴの肩ひもは、
なんでこんなにもかわいい色なんだろう」と北田さんがいうように、
無駄な装飾はなく、用の美。それら何もかもが、彼らの目に新鮮に映った。

通常のメーカーのようにマーケティングや開発という段階があるわけではなく、
それはみずからのライフスタイルに即している。
暮らしからのインパクトが、
タラスキンボンカースのコンセプトといえるかもしれない。
まさにこの家に引っ越してこなかったならば、
現在の商品は生まれなかっただろう。
次回はものづくりに込められる思いとその先にあるものを紹介する。

お手製ベッド

近藤さんのお手製ベッド。同じ木材が額縁のような商品に活かされる。

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TARASUKIN BONKERS 
タラスキンボンカース

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