連載
posted:2021.1.13 from:秋田県湯沢市 genre:旅行
PR 独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構
〈 この連載・企画は… 〉
秋田県の最南に位置する湯沢市。ここには、「地熱」という自然エネルギーの恩恵を受けながら、
アツく、力強く、たくましく生きる「自熱」を持った地元の人々がいる――。
新しいことがモクモク起きているこのまちの、新しいワクワクを紹介する連載です。
writer profile
Haruna Sato
佐藤春菜
さとう・はるな●北海道出身。国内外の旅行ガイドブックを編集する都内出版社での勤務を経て、2017年より夫の仕事で拠点を東北に移し、フリーランスに。編集・執筆・アテンドなどを行う。暮らしを豊かにしてくれる、旅やものづくりについて勉強の日々です。
photographer profile
Kohei Shikama
志鎌康平
しかま・こうへい●1982年山形市生まれ。写真家小林紀晴氏のアシスタントを経て山形へ帰郷。2016年志鎌康平写真事務所〈六〉設立。人物、食、土地、芸能まで、日本中、世界中を駆け回りながら撮影を行う。最近は中国やラオス、ベトナムなどの少数民族を訪ね写真を撮り歩く。過去3回の山形ビエンナーレでは公式フォトグラファーを務める。移動写真館「カメラ小屋」も日本全国開催予定。 東北芸術工科大学非常勤講師。
http://www.shikamakohei.com/
秋田県の最南に位置する湯沢市。
山形県と宮城県に接し、その県境は国内でも有数の地熱地帯です。
湯沢市の大地をつくりあげたマグマは、いまも「見えない火山」として活動を続け、
観光や産業に生かされています。
湯沢市には、「地熱」という自然エネルギーの恩恵を受けながら、
アツく、力強く、たくましく生きる「自熱」を持った地元の人々がいる——。
新しいことがモクモク起きているこのまちの、新しいワクワクを紹介していきます。
「いで湯の里」と呼ばれる湯沢市は、その名のとおり小安峡温泉、
秋の宮温泉郷、泥湯温泉など、県内でも有数の温泉に恵まれた土地。
一帯に湯を湧き上がらせる地熱の力は、地層から水蒸気や湯が吹き出す
全国でも珍しい「大噴湯(だいふんとう)」や、
日本三大霊地と呼ばれる「川原毛地獄(かわらげじごく)」などで体感することができ、
「日本ジオパーク」としても認定されています。
ジオパークを軸に、観光客に大地の魅力を伝えるだけでなく、
地域の子どもたちへの教育にも熱心な湯沢市。
その見どころを、〈ゆざわジオパークガイドの会〉のジオガイド
渡部彰夫さんと菅英夫さんに案内していただきました。
湯沢駅から車で約40分、小安峡温泉エリアにある「小安峡」は、
深さ60メートルの渓谷です。断層を皆瀬川が削りとり、
岩の割れ目から約98度の温泉と水蒸気が吹き出しています。
「湯沢では見えない火山がまだ活動しているんです。
1分間にドラム缶1本くらいの温泉がどっこんどっこんと湧いているんですよ」
と渡部さん。
この湯が吹き出しているところは「大噴湯」と呼ばれ、約300〜400段の階段を下ると、
遊歩道を散策しながら蒸気のトンネルをくぐることができます。
高温の蒸気や熱水が溜まる「地熱貯留層」の亀裂が露出しているのは全国でも珍しく、
有害なガスも含まれていないため、
大地のエネルギーを間近に感じることができるのも特徴です。
こうした景色が見られるのは、地層に加えて、
湯沢が豪雪地帯であり(2021年1月4日現在、積雪は150センチ超え!)、
雪解け水に恵まれていることにも起因しています。
冬、日本海を流れる対馬海流の影響を受けて流れ込んでくる水蒸気を含んだ空気が、
岩手県境の奥羽山脈にぶつかることで、湯沢には大量の雪が降るのです。
「滝、温泉、酒、米、稲庭うどん……湯沢を代表する産業には
全部おいしい水が必要です。いろんな業種が雪の恩恵を受けている、
湯沢は豪雪のおかげで成り立っているとも言えます」と渡部さん。
紅葉に加えて、新緑も雪景色も美しい小安峡には、日帰り入浴を楽しめる宿や、
四季折々の景色を楽しめる露天風呂を備えた宿もあり、滞在におすすめです。
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小安峡とは打って変わり、いまだ有毒なガスを吹き出し、
草木の生えない地獄のような景色を見せてくれるのは、
湯沢駅より車で約45分のところにある「川原毛地獄」。
虎毛山の噴火の際に堆積した火山灰や土石流が、
噴出する硫化ガスなどの作用によって漂白され、白い山をつくりあげています。
「この足元の下にマグマがあって、かつては有毒ガスや土砂崩れの事故も起きたけど、
硫黄で地域は潤っていた。いまも、マグマがあるから温泉が湧き出るし、
地熱発電もできる。マグマというものはとってもありがたいんです」と菅さん。
川原毛地獄の駐車場から徒歩で約15分下ったところには、
地熱と豪雪の恵みにより生まれた「川原毛大湯滝」があります。
滝壺そのものが温泉になっている、珍しい天然温泉です。
川原毛大滝湯の湯はどこにも引かれていないので、体感できるのはこの滝壺だけ。
たどり着くまでの道のりはちょっとしたトレッキングのようですが、
ぜひ体感してみてほしい地熱スポットです。
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こうした迫力ある景色も、地元の人たちは当たり前のように感じてしまうそう。
湯沢市ではジオパークを軸にした子どもたちへの教育に力を入れ、
渡部さんや菅さんはじめ、市から認定されたジオガイドが、
市内の小・中学生を小安峡へ案内したり、
学校へ湯沢の地質や歴史を解説する授業に赴いたりもしています。
川原毛地獄に生息する植物を調べて研究発表する機会もあるのだとか。
「自分が住んでいる場所のことは知らないより知ったほうがいいですよね。
いいもんだ、いい場所だとわかれば、周りに話していこうと思うし、
私自身ジオガイドになってからは、湯沢も悪くないなと思うようになりました。
それに、小・中学生のガイドは楽しいですね。
いろんなことに興味をもって質問してくるし、
ジオパークの授業をとおして自分たちの住む湯沢を見直したと、
子どもながらにそういう感想を言ってくれる子がけっこう多いんです」と渡部さん。
ガイドを務めてみて、湯沢について再発見したことや好きになったことを尋ねると、
菅さんからは「全部だ、全部!」と力強い答えが返ってきました。
「地元のことは、知る機会がなかったからな。
この間も学校で、いわゆる座学をやったの、パワーポイント使って。
(湯沢が生誕の地とされている)小野小町の一生っていう授業をやったんだけども、
そのときうらやましいって言ったんだ、生徒さんに。
私らが小さいときはふるさとのこと学ぶ機会なんてなかったもの。
だからいまのみなさんは幸せだって。私みたいに大人になってから、
こういうジオガイドみたいな仕事があるってことで勉強して、
地元を知るためにガイドになる人もけっこういるんだよ」
2020年11月現在、51名がジオガイドとして活躍しています。
2019年度には、湯沢市内の小学6年生がジオガイドとして認定される快挙も。
子どもの頃から地域の魅力に気づき、発信できる人材が育まれている
湯沢のこれからが楽しみです。
湯沢駅の観光案内所へ問い合わせると、湯沢愛熱いジオガイドさんが
365日案内してくれます(要予約)。再生可能エネルギーとして注目される
地熱の知識を深めることができる貴重な機会、ぜひ訪ねてみてください。
次回は、湯沢の地熱の恵みを活用した発電所や、温泉水を活用した産業をご紹介します!
information
湯沢駅観光案内所
住所:秋田県湯沢市表町2-2-10
TEL::0183-56-6226(9:00〜16:00)
*ゆざわジオパークガイドの会の予約は1週間前まで
小安峡温泉
川原毛地獄・川原毛大滝湯
Web:http://www.city-yuzawa.jp/midokoro02/711.html
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