連載
posted:2021.3.18 from:山口県周南市 genre:暮らしと移住 / 食・グルメ
PR 山口県
〈 この連載・企画は… 〉
山口県で思い出すものといえば、錦帯橋、松下村塾、ふぐ、秋吉台など。自然や文化遺産、
おいしい食まで、さまざまな魅力が揃っています。そんな山口県には、移住して、新しい働き方を実践している人たちがいます。
「UJIターン」し、仕事と働き方に新しい価値を見いだしている人たちは、みんなワイワイと楽しそう。
仕事がかたちづくる、山口県での生き方と暮らしをうかがいます。
writer profile
Yuriko Tateno
立野由利子
たての・ゆりこ●福岡の制作会社に勤める傍ら、フリーランスのライターとして活動中。取材記事からパンフレットまで幅広く執筆。アイドル、ZARD、給水塔を愛する95年生まれのみずがめ座。
photographer profile
Yousuke Yamamoto
山本陽介
やまもと・ようすけ●山本写真機店店主。まちの写真屋としての撮影業務に加え、プロアマ問わず全国からフィルムスキャニングの依頼を受けるラボマンとして活躍中。
http://yamamotocamera.jp/
山口県内に6つのカフェを展開している〈徳山コーヒーボーイ〉。
店によって異なる外観や内装などチェーン店らしからぬつくり込みと、
こだわりの焙煎から生まれる甘みのあるコーヒーで、
県内外のカフェやコーヒー好きから愛されている。
その副社長を務めているのが、山本統さん。入社7年目で異例の抜擢を受けた。
いかにもやり手に思えるが、
社会に出たばかりの頃は無力感に苛まれ、惰性で日々を生きていたこともあるという。
そんな彼が、徳山コーヒーボーイに入社し、副社長を務めるようになるまでには、
どんな道のりと出会いがあったのだろうか。
山口県上関町(かみのせきちょう)で生まれ育ち、大分の大学に進学した山本さん。
大学時代は、とにかく海外に行くのが好きで東南アジアを旅したほか、
1年間オーストラリアにも留学している。
さらに、卒業旅行では7か国を経て、日本へ戻ってくる壮大なひとり旅を経験。
異国の地を気ままに歩き、まち並みや食文化の違いを楽しみながらさまざまな人と交流した。
コーヒーもこの頃からの大切な人生の相棒。海外でさまざまなカフェスタイルに触れた。
また、家でも学校でもない「サードプレイス」という考え方に共感して
スターバックスでアルバイトもした。
旅好きを生かせる仕事として地理の教員になることを志し、教員免許を取得。
そして新卒でまずは大手旅行会社に就職した。
「僕が高校の頃に出会った地理の先生は、
自分が行った国や地域の話になるととても生き生きと授業をしていました。
聞いている側にもそれが伝わってきて、ああなりたいなと。
添乗員としていろんな場所に行くことで、
のちに教員になったときに実感のこもった授業ができるのではないかと考えました」
そうして6年ほど勤めた。しかし次第に、ルールやノルマが課せられる職場の窮屈さが、
山本さん自身の気力を削いでいった。
教員になるという夢も諦め、
どこかやり切れなさを抱えながら数字と向き合う日々を送っていた。
そして東日本大震災が起こり、生き方に向き合う気持ちが変化していった。
「このまま会社にいていいのか、もっと納得できる生き方があるのではないかと考え、
会社を辞めることにしたんです」
もう誰かの下で働くのは嫌だ。
大好きなコーヒーに関わりながら、自分のペースで暮らしたい。
そう思った山本さんは当時結婚したばかりの奥さんと上関町で生活を営む準備を始めた。
当時は空き家になっており、幼少期を過ごしていた祖母の家を借りて、
コーヒー豆を売って生計を立てていこうと計画。
会社を辞めるまでの1年間はその準備に費やした。
こうして7年勤めた会社を2012年に辞めた山本さんだったが、
すぐにある転機が訪れる。
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会社を辞めて数日後、
山本さんは〈まちあい徳山〉という周南市で
まちづくりを行う団体の臨時職員として働いていた。
きっかけは、前職の団体旅行でお世話になった人に挨拶に行ったところ、
「コーヒーが好きなら、これからまちあい徳山が立ち上げるカフェを手伝ってほしい」と
誘われたこと。自分もいずれ近しい仕事をするのだから、経験を積んで損はない。
そんなつもりで1年間、もともと精肉屋だった場所をカフェにするべく壁を塗ったり、
運営スタッフの募集をしたりと奮闘した。
「遅くまで働くこともありましたが、気の合う仲間たちとわいわいと話しながら、
カフェをつくっていくのは楽しい時間でした」と山本さんは当時を振り返る。
そして1年後、やっと自分の店が持てると思った山本さんの前に
思わぬ障壁が立ちはだかった。
上関町で借りる予定だった空き家が、道路の拡張工事で取り壊しを余儀なくされたのだ。
計画が白紙になった山本さんが思い出したのは、
〈まちあい徳山〉の役員を務めていた徳山コーヒーボーイの社長・河内山嘉浩さんだった。
実は〈まちあい徳山〉で働いていた頃に、
河内山さんから「うちの社員にならないか」と誘われていた山本さん。
当時は断っていたが、状況が変わったことを相談したところ、
「それならぜひうちで働かないか」と再び誘ってもらえた。
別の場所で独立するか、徳山コーヒーボーイに入社するか。
後者の決断を促したのは、何よりも河内山さんの存在が大きかった。
「この社長の下なら働きたい、と思えたのが何よりの理由です。
河内山さんは自分の信念を持ちながらも、一緒に働く仲間にきちんと裁量を持たせて、
成功も失敗も一緒に受け止めてくれる人。その柔軟さ、度量の大きさに憧れました」
また、旅行代理店で働いていた頃から、COFFEEBOY PH通り店に週に1、2回通い、
普段の店の様子をよく知っていたことも決断をあと押しした。
「社会人になってから県外のカフェを巡ったこともありますが、
徳山コーヒーボーイは小粋でしゃれている印象がありました。
山口にもこんなカフェがあるんだな、いいな、と。
コーヒーがおいしいことはもちろん、プライベートの相談にも乗ってくれる
スタッフのフレンドリーさも相まって、自分の生活に欠かせないすてきな存在でした」
憧れの人のもとで大好きなコーヒーに携わる仕事ができる。
きっとこれまでの仕事とは何かが違う。そんな予感を抱きながら、
山本さんは徳山コーヒーボーイの社員としてのキャリアをスタートさせた。
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徳山コーヒーボーイに入社した山本さんが担当したのが、新下関店と下松店の新規立ち上げ。
かつて憧れたバリスタの仕事ではなかったが、
自分には店舗立ち上げのほうが向いていると山本さんは言う。
「徳山コーヒーボーイは、各店舗の担当者が個性的で、
それぞれカラーやオリジナルメニューを持っています。
担当者と話し合いながらレイアウトや内装を決めていくのは、
実験しているようでおもしろいですね。
担当者の個性を生かしたお店がつくれたら、
何か新しいことが始まるんじゃないかとワクワクします」
旅に焦がれた性格だからか、ひとところに留まるよりも
いろいろな場所をフラフラしているほうが性に合う、と話す山本さん。
この土地に合った店になっているか、地元の人が訪れやすいかといった、
店舗立ち上げに欠かせない視点は、そういった性分から生まれるものかもしれない。
ほかにも、飲食店へ営業する法人担当など、
徳山コーヒーボーイのコーヒーを広めるべく働いてきた。
風通しのいい職場でのびのびと働いていた山本さんに、ある日辞令が言い渡される。
「副社長になってほしい」と社長に告げられたのだ。
年次が長い社員も多くいるなか、入社7年目で異例の昇格。
本人も驚いたというが、周囲からの反発はなかったという。
「自分が能力的にほかの人よりもすぐれている、とは思いません。
強いて心がけていることを挙げるならば『初心を忘れない』ことでしょうか。
事あるごとに、なぜ自分がこの仕事を任せてもらっているのか、
なぜ自分はこの仕事を選んだのか、
立ち止まって考えるようにしています」
最初に入った旅行会社で、業務や数字に追われ、
惰性でこなしてしまった苦い経験を経たからこそ、
いまの職場では主体的に、前向きに仕事に取り組むことができている。
その姿勢が評価された結果の、昇格なのだろう。
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山本さんはいま、徳山コーヒーボーイの副社長として働くかたわら、
家族と一緒に小さな店も経営している。
山本さんと奥さん、奥さんのお母さん、そして近所の知人と
「好きなものを売るお店をつくりたい」という志で立ち上げた。
徳山コーヒーボーイの社長も
「うちとは違う体制だからこそ発見できることを
会社に還元してほしい」と快く承諾してくれた。
週に2回、お店に立つなかでオンラインの可能性を感じることもある。
「LINEで『いまメンチカツが揚がりました』とかリアルタイムな情報を発信していたら、
結構お客さんが来てくれるようになったんです。
リアルな場を活性化するためにオンラインが使えるんだなって。
地域の小さな経済圏で生きる店だからかもしれないけど、
徳山コーヒーボーイでも同じようなことができたらいいですよね」
リアルとオンラインの融合は、コロナ禍が収束したあとの社会でも必ず求められる。
これまで実店舗での営業が主だったが、オンラインも大きな軸になるはずだ。
しかし、単なる販売や宣伝をするツールとしてのみではない。
現在計画しているのは、お客さんを交えた少人数のSNSグループでの商品づくり。
憩いの場であったカフェがこれまでのように使えなくなっても、
人と人との交流を生み出したい。
そんな思いが根底にはある。
コーヒーを売って暮らしたい、と周りに公言していたからこそ不思議と縁がつながり、
いま徳山コーヒーボーイで働いている。その道のりが持つ説得力は大きい。
「自分の周りの物事を良くしたい、
人に幸せになってほしいと思える範囲をどんどん広げていきたいと思って、
これまで店舗の立ち上げやコーヒーの営業を行ってきました。
周りの人とサポートし合いながら、思いをひとつひとつの仕事でかたちにしたいです」
かつて自信をなくしたこともあった山本さん。
しかし、自分の価値観や直感にしたがって転職した徳山コーヒーボーイで、
自由でのびやかな性格を生かすことができ、副社長にも抜擢された。
きっとこれからもさまざまな人の思いに耳を傾けながら、
コーヒーを媒介として、人や地域をつなげていくのだろう。
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