colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

菓子研究家・長田佳子の旅コラム
「奄美大島で、
人間味あふれるユタ神様に会う」

旅からひとつかみ
vol.026

posted:2022.7.8   from:鹿児島県奄美市  genre:旅行

〈 この連載・企画は… 〉  さまざまなクリエイターがローカルを旅したときの「ある断片」を綴ってもらうリレー連載。
自由に、縛られることなく旅をしているクリエイターが持っている旅の視点は、どんなものなのでしょうか?
独特の角度で見つめているかもしれないし、ちいさなものにギュッとフォーカスしているかもしれません。
そんなローカル旅のカタチもあるのです。

text

Kako Osada

長田佳子

さまざまなクリエイターによる旅のリレーコラム連載。
第26回は、菓子研究家の長田佳子さんによる奄美大島の旅。
自然豊かなイメージのある奄美ですが、
長田さんが一番印象に残っているのは
ちょっと違う文化のようです。

奄美大島での旅で得た、生きる感覚

旅には、自らの目的で選んで行くときと、
ご縁で訪問するときと、ふたつのパターンがある。

奄美大島への旅は、
奄美在住の友人が声をかけてくれたことがきっかけ。
彼女は奄美の良さを、手つかずの自然がいいと表現するので、
それを感じてみたいと思った。

島の方に教わりながら泥染め、草木染めを研究したときの手ぬぐい。

島の方に教わりながら泥染め、草木染めを研究したときの手ぬぐい。

事前に大まかなスケジュールを考えるなかで、
友人がごく自然に「ユタ神様には会いにいきますか?」と聞くので
「え! なになに!!?? スピリチュアルな感じ!?」
と気後れし「まだ大丈夫かも……」と返事をしてしまった。

まだって一体……、いつならいいんだろうー。
それから数日、
「まだ」と答えたわたしの現在地と
ユタ神様のことが気になりだしたので、
「やっぱり、ユタ神様にお会いしたいので予約をお願いします」と連絡をした。

島のハレの日にいただく郷土料理。ハンダマという野草の茹で汁で炊いたご飯。

島のハレの日にいただく郷土料理。ハンダマという野草の茹で汁で炊いたご飯。

次のページ
ユタ神様からの3つの助言とは?

Page 2

人間味あふれる奄美の神様

あれこれ悩みだらけの毎日。
ユタ神様に酒と塩をお渡しし、
何についてアドバイスをもらおうかとぼんやり座っていたら、
ユタ神様は開口一番、ここのところずっと考えていたことをズバリ!
柔らかい民謡のようなイントネーションで話し出した。

商店の方がユタ神様への紹介状を書いてくださった。

商店の方がユタ神様への紹介状を書いてくださった。

1 遠くへ引っ越しを考えているでしょう、今より少し東? に行くはずよ

2 今の仕事は頑張って続けていきなさい、いずれ3人になるよ

3 脂肪が多い 

1については、
数年、長野や山梨への移住を考えていたので衝撃的で、
東か、西か、南か大切な部分を忘れてしまった。
2については、山梨に移住をしてから振り返ってみて、
畑やイベントなど主に3人で活動することが多いので
このことかな? と思いながら。
3については、はい! まさにあたりです。
お腹や内蔵の冷え、職業病に注意せよということだそう。

ユタ神様という存在。
本の中でしか出会ったことがなかったので
大袈裟に捉えていたけれど、
島では多くの人が、
進学や引っ越しや結婚など
さまざまなタイミングで気軽に相談に行くのだそう。

待合室もごく普通の和室で、
相談している内容が順番を待つ人に丸聞こえなのも
人間味溢れていていい。
島内には何人かのユタ神様がいらして、
どの方に出会えるかも全くのご縁だという。

夕暮れどきの空が藍のようにきれい。

夕暮れどきの空が藍のようにきれい。

奄美大島で、思いがけずサイコロを振られるような経験をし、
それからは、頭で考えすぎず、
子どものように直感に従ってみようと思えるようになった。

奄美大島は豊かな海や森のほか、
土着的な要素のものが多く残っているのも魅力。
ご縁で始まった奄美大島への旅だけれど、
繰り返し訪れたくなるのは、
わたしの生きる力を確認したいからなのかもしれない。

profile

Kako Osada 
長田佳子

菓子研究家。〈foodremedies〉としてお菓子の動画配信レッスンやレシピ開発などを行う。近著に『季節を味わう癒しのお菓子』(扶桑社)。『&Premium web』でも毎月連載中。

Web:foodremedies

Feature  特集記事&おすすめ記事

Tags  この記事のタグ