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廃校をリノベして新たにオープンする
〈HOMEMAKERSカフェ〉。
壁や天井に土地の色を取り入れる

小豆島日記
vol.334

posted:2024.5.27   from:香川県小豆郡土庄町  genre:暮らしと移住

〈 この連載・企画は… 〉  海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。

writer profile

Hikari Mimura

三村ひかり

みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島のなかでもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
https://homemakers.jp/

新たな〈HOMEMAKERSカフェ〉を工事中

2023年12月をもってこれまでの場所での営業を終えた
〈HOMEMAKERSカフェ〉。現在(2024年5月)、
新しい場所での移転オープンを目指して工事の真っ最中です!
だいぶかたちが見えてきたので、今日はどんなふうに
カフェの工事をしているかお伝えしよう思います。

これまでのHOMEMAKERSカフェは、
農村民家を改修した自宅の一部をカフェとして開いてきました。
週に1日、土曜日のみオープンしていて、
全席14席ほどの小さなお店でした。

もうその場所でカフェを開くことはないんだなぁと思うと
なんだかちょっとさみしいですが、今はHOMEMAKERSスタッフが
お茶休憩したり、お昼ごはんを食べたりする場所として使っています。

新しいHOMEMAKERSカフェは、現在工事中の
宿泊施設〈NOTEL(ノーテル)〉の1階にオープンします。
2024年6月末のオープンを目指して、工事を進めています。
もうすぐです(汗)。

窓枠を塗装するために、窓を外して掃除。この建物が小学校だった頃からあるレンガ壁が、とてもいい雰囲気。

窓枠を塗装するために、窓を外して掃除。この建物が小学校だった頃からあるレンガ壁が、とてもいい雰囲気。

カフェのエントランス工事。既存のアルミサッシの引き戸を外して、新しく木製の大きな扉をつくります。

カフェのエントランス工事。既存のアルミサッシの引き戸を外して、新しく木製の大きな扉をつくります。

この建物は、もともと小学校だった建物。
2005年に閉校し、その後、建物を分割、改修工事し、
公民館および介護施設として使用されていたのですが、介護施設は移転し、
2018年頃から分割された半分の建物は空き家状態でした。

建物全体は小学校の雰囲気を残しつつも、一時的に介護施設として
使われていたので、エレベーターがついていたり、
大きな介護用の浴室があったり、病院みたいな雰囲気の
引き戸や壁紙が使われていたりします。
まずは不要なものを取り外し、元の古い小学校だった頃に
戻していくような作業から始まりました。

HOMEMAKERSカフェとなるスペース。工事が始まった当初の様子。

HOMEMAKERSカフェとなるスペース。工事が始まった当初の様子。

新しい扉が取りつけられ、天井や窓枠の塗装が進み、だいぶいい雰囲気になってきました。

新しい扉が取りつけられ、天井や窓枠の塗装が進み、だいぶいい雰囲気になってきました。

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岩肌をイメージしたカラーとは?

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みんなでつくりあげていく空間

今回、新しいHOMEMAKERSカフェをつくりあげていくにあたって、
いいなぁと感じていることがいくつかあります。

ひとつめは、この場がみんなの手でつくられていくこと。
これまでのカフェは私たち夫婦ふたりで設計し、
大工さんと相談しながらつくりましたが、
新しいカフェは、この10年、小豆島でつながった友人や知人たちに
たくさんの力を貸してもらっています。

設計、家具制作、壁の塗装など、自分たちだけではできないことを
相談できる仲間が私たちのまわりにはたくさんいてほんとうに心強い。
私たちだけじゃできないことが、みんなの力でできていくことが
すごくうれしくてワクワクします。

天井や壁の塗装を手伝ってくれている友人。材料や塗料のこと、塗り方などいろんなことを教えてもらっています。

天井や壁の塗装を手伝ってくれている友人。材料や塗料のこと、塗り方などいろんなことを教えてもらっています。

ふたつめは、新しいものをできる限り買わずにあるものを生かすこと。
カウンターやテーブル、ベンチをつくるための木材は古材を使っています。
閉業した宿泊施設から譲っていただいた立派な松の木や、
倉庫で眠っていた木材などです。

木が反っていたり、大きさがばらばらだったりして、
古材を使うのはとても難しいです。
その古材でつくれるものは何か、その古材ならどこで使えるか、
現場で調整しながら、ひとつずつ仕上げていってくれる
地元の大工さんがいることが本当にありがたいです。

大きさや状態が異なる古材。まずはどんな材が手元にあって何ができるかを考えます。

大きさや状態が異なる古材。まずはどんな材が手元にあって何ができるかを考えます。

カウンターテーブルを支える脚となる立派な松の木。

カウンターテーブルを支える脚となる立派な松の木。

古材を使って工事を進めてくれる地元の大工さんたち。本当にありがたいです。

古材を使って工事を進めてくれる地元の大工さんたち。本当にありがたいです。

3つめは、この土地のカラーを探して、壁の色を決めたこと。
カフェの壁や天井の色を何色にしようか考えていたとき、
私たちが暮らす肥土山集落を囲む山の岩肌が、秋の夕暮れの太陽に照らされて
赤く染まる姿とてもいいんだよねという話をしていました。
山の上で赤土が見えているところがあるのですが、
その赤土を少し混ぜて、壁に塗ることに。
何度かサンプルを作成し、ようやく決まった色で壁と天井を塗っていくと、
少しずつイメージする空気感が部屋の中に漂い始めてきました。

私たちが暮らす肥土山集落を囲む山の上の赤土。

私たちが暮らす肥土山集落を囲む山の上の赤土。

手ですりつぶすと赤茶に染まるほど。

手ですりつぶすと赤茶に染まるほど。

塗り試した天井と壁。仕上がりが楽しみ。

塗り試した天井と壁。仕上がりが楽しみ。

カフェの工事はもうしばらく続きます。
照明設備や家具、細かな備品など、決めないといけないこと、
やらないといけないことがまだたくさんあり、
これから1か月で全部やり切れるのか。

この場所で、いつものHOMEMAKERSのカレーを、ジンジャーエールを、
デザートをみなさんに楽しんでもらえる日をイメージしながら、
ひとつひとつ、つくりあげていきます。

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