連載
posted:2016.1.25 from:香川県小豆郡土庄町 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
海と山の美しい自然に恵まれた、瀬戸内海で2番目に大きな島、小豆島。
この島での暮らしを選び、家族とともに移住した三村ひかりが綴る、日々の出来事、地域やアートのこと。
writer profile
Hikari Mimura
三村ひかり
みむら・ひかり●愛知県生まれ。2012年瀬戸内海の小豆島へ家族で移住。島の中でもコアな場所、地元の結束力が強く、昔ながらの伝統が残り続けている「肥土山(ひとやま)」という里山の集落で暮らす。移住後に夫と共同で「HOMEMAKERS」を立ちあげ、畑で野菜や果樹を育てながら、築120年の農村民家(自宅)を改装したカフェを週2日営業中。
http://homemakers.jp/
昨年春から始まった〈EATBEAT! in 高松〉。
地元高松の食材を使った料理をEAT(料理)担当の堀田裕介さんがつくり、
その調理の際に出る音をBEAT(音)担当のヘンリーワークさんが集めて
ひとつの音楽をつくっていくライブパフォーマンス。
私たちはその過程を見て楽しみ、聞いて楽しみ、
完成した料理を味わって楽しむ、そんなイベントです。
春に開催されたプレス・関係者向けのイベントから始まり、
夏は高松からフェリーで20分ほどのところにある女木島(めぎしま)、
秋は高松市中央卸市場を舞台に。
そして最後の回となる冬は、高松を走る電車〈ことでん〉の車内で。
私は小豆島カメラとしてこの1年を通したイベントの撮影のお手伝いをしてきました。
寒い1月の朝、フェリーの上から朝焼けを眺めながら小豆島から高松へ。
スタッフ集合場所の仏生山(ぶっしょうざん)駅までことでんに乗って行きます。
小豆島に鉄道はないので、電車に乗るのはけっこう新鮮だったりします。
今回のメイン会場は、仏生山駅のすぐ隣にある仏生山車両倉庫とことでん車内。
車両倉庫に着くと、料理スタッフの皆さんがすでにお餅用のもち米を蒸したり、
あんこを丸めたり準備をしていました。
なかなか遭遇できないシチュエーション。
電車の整備工場で料理(笑)。
何やらおもしろいことが始まりそうです。
そしてもうひとつの会場、EATBEAT! 特別列車へ。
2両編成の列車を貸切り、その日は特別ダイヤで運行します。
吊り広告ももちろん、EATBEAT!
つり革には干し柿がぶら下がっていたりして、もうそれだけでワクワク。
いよいよ電車はお客さんをお迎えに高松築港(たかまつちっこう)駅に向かいます。
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この日は本当にいいお天気で、電車の窓からは
暖かい太陽の光がたっぷりと差し込んでいました。
ガタンゴトンと列車に揺られ、これから起こることにワクワクしつつ、
いったん電車を降りて先ほどの車両倉庫へ。
そこで始まったのが、餅つき!
ぺったんぺったん杵で餅をつき、その音を収集します。
そしてその日最初の料理は「あんもち雑煮」。
香川県のお雑煮は白味噌にあんこの入ったお餅を入れるそうで、私自身初体験!
おいしい~。甘いお餅と甘めの白味噌がたまらない。
まさに冬の香川・高松が、がつーんと来た感じでした(笑)。
そしてふただび列車へ。
ヘンリーくんの合図で「出発進行~」。
走る列車の中で、キャベツのせん切り、かつお節削り。
料理の仕上げをしつつ、音を収集。
車窓からは高松のまち並みや時折畑も見える。
「このあたりにもワケギ畑がちらほらあるんですよ」
という話を聞きながら、その風景を見ながら、
車内でワケギを使った料理を食べるというのはなんて心に残る掛けあわせだろう。
車内の長机には完成した料理が並べられ、
それをお弁当箱につめてオリジナルの駅弁づくり。
はい、ではみなさん手を合わせて、
「いただきまーす!」
まるで遠足でお弁当を食べる子どもたちのように、
みなさんほんとに楽しそうに食べていました。
移動しながらのイベントはあっという間に終わりの時間に。
ただ楽しんだだけじゃなくて、その土地のこと、土地の食のことについて
「へー」っていう発見があったり、
「おいしかったなー、また食べたいなー」という気持ちが残ったり、
お客さんそれぞれにきっと何かあったと思います。
1年を通して開催されてきた〈EATBEAT! in 高松〉が終わり、
続いて今年3月から開催される瀬戸内国際芸術祭のテーマも「食」です。
高松もその舞台のひとつ。もちろん小豆島も!
今年はおもしろくておいしいイベントがまだまだ続きそうです。
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