〈アーティストインレジデンス
あさひかわ〉元ミュージシャンが故郷に
つくったカルチャーの拠点〈VKTR〉
野村パターソンかずたか vol.7
北海道旭川市で、リノベーションや不動産事業を営みながら、
アーティストインレジデンスなど地域の文化事業を企画・運営する、
野村パターソンかずたかさんの連載です。
元ミュージシャンで世界の都市を巡った背景から、
地元・旭川市にて多様なコンテンツをしかけています。
今回は、野村さんが自社事業として始めた芸術家受け入れプログラム
〈アーティストインレジデンスあさひかわ〉と、
その拠点施設で、元印鑑屋の店舗をリノベーションして生まれた
〈VKTR(ヴィクタ)〉をご紹介します。

アーティストインレジデンスとは、芸術家を一定期間にわたって招き入れ、アーティストがその土地に滞在しながら作品制作を行う事業のこと。〈VKTR〉はその拠点として誕生した。
旭川市がユネスコ創造都市ネットワークに加盟
先週、物件活用事例をまとめて紹介する機会をいただいた。
「Placemaking Week Japan」という名前のこのイベントは、
文字通り、場所(Place)をつくる(Making)活動を実践している人々が
世界中から集合し、それぞれの物語を共有する一大イベントだ。
都市計画や建築の博士号などを持っているような博識なスピーカーに紛れて、
僕も旭川市の事例を共有させてもらった。
コロナ禍でオンライン開催となったが、
その分さらにグローバルな事例を自宅にいながら学ぶことができた。
2年前の2019年にも同様のイベントに参加した。
クアラルンプールで行われた「City at Eye Level Asia」は
オランダの機関〈STIPO〉が主催するプレイスメイキングのイベントで、
コロナ禍前の開催だったので、世界各国からプレイスメーカーが集っていた。
このイベントとちょうど同じ頃、旭川市がユネスコ創造都市ネットワークに
デザイン分野で加盟するというニュースが飛び込んできた。
このネットワークは、加盟都市間の文化芸術を通した交流や、
都市の活性化、文化多様性について理解の増進が目的とされている。
ユネスコに旭川市が提出した申請書の中に
「アーティストインレジデンス(通称AIR)の推進」の文言があったことから、
僕が長年温めていた構想が急ピッチで動き出すことになった。

アメリカでのミュージシャン時代の様子。18歳で渡米し、ソロミュージシャンとして全米デビュー。600本以上の公演を行ってきた。
故郷にアーティストインレジデンスをつくりたい
初めてAIRのようなものを訪れたのは、2005年頃のニューヨークだった。
当時20歳だった自分は、シアトルで出会った日本人ふたりと
ノイズ即興の音楽をやっていた。
ツアーの中でたまたま演奏会場だったNYCの〈ABC No Rio〉。
ここは1980年から続くアーティストハブであり、
NYCのパンク・ハードコア音楽の震源地でもあった。
もしかするとAIRという呼び方は適切ではないかもしれないが、
常にアーティストが入り乱れ、建物の中で勝手に寝泊まりして活動する様子が
脳裏に焼きついている。
次に演奏で訪れたのは、アメリカ東北部のロードアイランド州にある〈AS220〉だ。
ここは4階建の建物で、1階にレストラン&ライブハウス、
2階から上がアーティストのスタジオ兼生活場所になっていた。
ツアーで訪れるたびに何度も世話になり、
いつかこんな場所をつくりたいと思い続けてきた。
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