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連載

アルバス 酒井咲帆さん

PEOPLE
vol.020

posted:2013.8.14  from:福岡県福岡市  genre:活性化と創生 / アート・デザイン・建築

〈 この連載・企画は… 〉  ローカルにはさまざまな人がいます。地域でユニークな活動をしている人。
地元の人気者。新しい働きかたや暮らしかたを編み出した人。そんな人々に会いにいきます。

editor's profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

credit

撮影:Suzu(fresco)

写真の持つ機能。写真屋が担う役割。

『いつかいた場所』というのは、写真家の酒井咲帆さんが、
同じ子どもたちを、そしてその村の変化を、10年間、撮り続けた作品だ。

酒井さんが19歳のとき、ひとり旅で出かけたある村で、
友だちになった小学3年生と4年生の4人組。
声をかけてすぐに仲良くなり、その日、一緒に遊んだという。
それから手紙の交換も始まり、1年に1回、会いに行くようになる。

初めて会った年から数年は、写真という目的でもなく、
ただ“友だち”に会いに行っていただけ。
そのうちに、彼らの兄弟が登場したり、行動範囲も広がるようになる。
同時に、撮っていた写真から変化が見えるようになってきて、
次第に記録ということを意識して写真を撮るようになっていった。

あるとき、彼らの通っていた小学校が閉校することになり、
校長先生から酒井さんに撮影依頼がきた。
同時にこれまで撮りためていた写真の展覧会をさせてもらうことになった。
この準備を一緒に進めた“かつての小学生たち”は、もうハタチ過ぎ。
展覧会では彼らの親とも初めて会い、
「あなたの話を聞いていたのよ」と歓迎される。
地域のひとたちも、自分が写っているわけでもないのに、
写真を観て感動してくれた。
そこには村の懐かしい風景が写っていたのだ。

「この村がどうなっていくか、私にもわかりませんが、
見続けることに意味があると思っています。
削ぎ落とされていったなかに、大事なものがあるんじゃないかと想像しながら」

手紙がメールになり、迎えが車になり、会合が居酒屋になりと、
コミュニケーションのかたちは変わりながらも、
10年以上経った今でも交流は続いている。

写真屋という場所から広がる地域コミュニケーション。

酒井さんはこれらの活動と並行して、子どもとの関わり方を自身の主軸に据え、
大阪のギャラリーや九州大学で働いていた。

「子どもは、未来を担うひと。
社会全体で子どもたちを一緒に育てるということを
考えないといけないと思うんです」という酒井さん。
しかしそれに正解はない。
でも考え続けることが「生きていくこと」だという。

これまでの仕事から学んだことを通して、自分で出来ることを追い求めた結果、
福岡市内に写真屋「アルバス」をオープンした。
アルバスは、
お客様の撮影したフィルムやデジタルデータをプリントするラボと、
家族写真が撮れるスタジオがある。
でもラボは、普通とはちょっと違う。

「現像やプリントを受け付けるとき、
ひとりひとりのお客さんとなるべくじっくり話をします。
撮影時の気持ちを思い出してもらいながら、
そぉっとお客さんの心に入って行く感じで。
写真を焼くことは、
お客さんの思い出に色を乗せているような感覚でもあります」

プリントの注文を受けるときは、実際のサンプルをもとに、明るさや色味などの希望を聞いてくれるのでわかりやすい。

会話を重ね、実際に写真を焼くと、
マイナスの面が見えてきてしまうことだってある。
みんな悩んでいたり、問題を抱えていたり。

「問題を解決するということではないけど、
ちょっとでも寄り添って、受け入れて、
安心できるような場所でありたいなぁと。
そういう意味では、ひととしての関わりのなかから見えてくるものが多いので、
写真屋でよかったと思います」

中古カメラも販売されている。ハーフカメラなどのユニークなカメラもあってカメラ好きにはたまらない。

「写真」そのものを最大限に活用しているように思えるが、
酒井さんはあくまで「写真は手段だ」と言い切る。
「写真屋としての機能でありながらも、
まちづくりの一部として捉えています。
どうすれば暮らしやすくなるのか、この場所で考えていきたい」

たしかに写真は、
コミュニケーションの第一歩としては最適かもしれない。
そして写真屋という場所があることで見えてくることがたくさんあると話す。

「例えば、困ったときに助けてくれるのがお隣さんだったりするように、
アルバス自身が当たり前のことにちゃんと気がつける存在で
いられればと思っています」

黒板にチョークで書かれたメニュー表。フィルムやカメラのイラストがかわいい。

これからも酒井さんは、写真を手段として、広く活動していく。
特に子どものことを考えるのが酒井さんのモチベーションの原点であるため、
現在では、保育園の補助スタッフとしても働いている。

「写真、子ども、居場所ということを合わせて考えたいと思っています。
写真はあらゆる分野に寄り添えるような手段だと思うので、
写真の可能性を広げる意味でも、
多様な考えを持って携わっていきたいと考えています」

information


map

albus
アルバス

住所 福岡県福岡市中央区警固2-9-14
TEL 092-791-9335
営業時間 12:00〜20:00
http://albus.in/

profile

SAKIHO SAKAI
酒井咲帆

1981年兵庫県生まれ。写真家。株式会社アルバス 代表。
まちの人々との対話・交流、特に子どもを取り巻く風景を撮り続ける一方で、2009年福岡市警固に写真ラボ「albus|アルバス」を設立。アルバスとはアルバムの語源。「まちのアルバムとなるように」という想いの下に、写真にまつわる多様な活動を展開している。

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