連載
posted:2022.3.31 from:北海道三笠市 genre:暮らしと移住 / アート・デザイン・建築
PR 三笠市
〈 この連載・企画は… 〉
ローカルで暮らすことや移住することを選択し、独自のライフスタイルを切り開いている人がいます。
地域で暮らすことで見えてくる、日本のローカルのおもしろさと上質な生活について。
writer profile
Satoko Nakano
仲野聡子
なかの・さとこ●ライター。生まれも育ちも日本一人口の少ない鳥取県。高校卒業後に上京し、東京に20年ほど住んだのち、2017年8月に北海道喜茂別町に家族と移住。羊蹄山麓の澄んだ空気や豪雪を楽しみ、日々人の温かさに触れている。
credit
photographer:安彦 幸枝
撮影協力:
飛騨産業株式会社 北海道工場
stoop
Flower Space Gravel 本店
屋根に積もった雪が、自然に落ちるよう設計された三角屋根の家。
1960年代以降に北海道の建売住宅の定番となり、
同じ形の家が均等に建ち並ぶ風景がそこかしこで見られるようになった。
しかし近年、人口減少や住宅事情の変化などにより、徐々に空き家が目立つように。
そこで北海道三笠市が、この昭和レトロな建物内部を暮らしやすくリフォームした。
スタイリストによる室内のコーディネートで、
理想の北国暮らしを思い描いてもらえるモデルルームに変身。
かわいらしい三角屋根の下で、あなたならどう暮らす?
「いまある空き家を、このまま廃れさせるのではなく、資源として活用したい。
移住希望者のみなさんに『古い家も改装すればレトロでかわいくて住みやすい』ということを
実感していただきたいと思い、この取り組みを始めました」
そう話すのは、三笠市の定住対策係の担当者。
きっかけは、手入れされる前の空き家を見た移住希望者の
「移住後の生活がイメージできない」という言葉だった。
「三笠市でこんな暮らしがしたい」と想像が膨らんで
ワクワクするようなモデルルームがあれば、
もう少し前向きに移住を検討してもらえるのではないか、と思ったという。
「そこで市が、三笠市での暮らし提案として、
空き家を1軒リフォームするプロジェクトを立ち上げました。
その候補として今回挙がってきたのが、
かつて北海道の建売住宅の定番だった三角屋根の家です」
屋根の上の雪を落とすために考えられた合理的な構造だが、
家主が自分の好みで屋根や外壁の色を塗るケースも多く、
カラフルな三角屋根の家が建ち並ぶエリアはまるでおもちゃ箱のよう。
本州からの来訪者は「北欧みたい」と思わずカメラを向ける。
三角屋根の家自体、古い構造のものが多いため、
今回のプロジェクトでは現代のライフスタイルに合わせて間取りから変更させた。
「昔の家は細かく区切られていて、小さい部屋がたくさんありますので、
1階は壁を取り払うなどしてリビング・ダイニング・キッチンを広々とつくりました。
子育て支援にも力を入れている三笠市として、
ご家族で移住される方を想定した間取りにしています」
より魅力的な生活を演出するために、スタイリストの吉田佳世さんにも協力してもらった。
「リフォームの仕方やインテリアの選び方など、
これから三笠市で中古物件を探して改装する際の参考にしてほしい」と担当者は話す。
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今回、吉田さんはインテリアと、部屋の壁紙の色や床材選びなどに協力。
壁は白だが天井はベージュに塗り、空間に変化をつけることでディテールにも個性を表した。
家具のスタイリングで意識したのは、自然由来のものや、
プリミティブな要素を取り入れること。
(※インテリアは撮影用につき、住宅には付属しません。)
「屋根の家や外壁の色をはじめ、北海道のカルチャーとして、
比較的自由な発想が多いという特徴があるような気がします。
ルールがなくてバラバラでも、それがまたかわいいと思える。
そういう前提で家の中を考えたときに、
きれいでモダンというより、
どこか野暮ったさや手しごと感が残ったほうが北海道らしいなと感じました」
ゆったりくつろげる大きなソファーや、
人が集まれるダイニングテーブルなど、居心地の良さはキープ。
そのうえで、近くの山に生えていそうな大きな木の枝を無造作に生けたり、
三笠市のシンボルであるアンモナイトの化石を置いたり、
手しごとの温かみが感じられるキルト作品を壁にかけたりして、
北海道の空気と調和したインテリアで仕上げた。
ダイニングテーブルとチェア2脚、リビングソファは、
三笠市に工場を置く〈飛騨産業〉の製品。
ダイニングテーブルとリビングソファには北海道産カバ材とナラ材、
チェアについては三笠産のアカシアの樹木を使用している。
アカシアは生命力が強い雑木で、まちの至るところに生えていたことから、
切り倒して三笠市内で製材。
地元の素材を使ったインテリアは、部屋にもいっそう馴染んでいるように見える。
旭川市出身の吉田さんは、三角屋根については幼い頃から当たり前にある風景で
特に気に留めたことはなかったというが
「いざ東京に住んで久しぶりに帰郷し、そのかわいさをあらためて感じた」と話す。
「外観のかわいらしさはもちろんですが、こぢんまりした印象とは違い、
中に入ると都会のマンションとは違う開放感があります。
私だったら広いキッチンで料理をつくり、友だちを呼んでホームパーティしたいですね。
おつまみを用意しつつ、キッチンカウンターでワインを出して。
友だちにはダイニングテーブルで食事をしてもらい、
満腹になったら2階に泊まってもらうこともできますよね。
すごく楽しい暮らしをイメージできます」
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今回のプロジェクトをきっかけに
三笠市での暮らしをイメージできたら、
希望する空き家を見つけて思い思いにリフォームしてもらいたい、と話す担当者。
「手をかければ住める家はまだまだたくさんあります。
市としても、活用されないのはもったいないと考えているんです。
空き家バンクのようなシステムを用意して、家探しをお手伝いしたり、
リフォームに関する助成をしたりと、さまざまな支援も行っています。
空き家がこんなにきれいになって、自分の好きなインテリアコーディネートをすれば、
本当にすてきな暮らしができる。
自分でもいろいろとチャレンジしてみようかな、
と思ってもらえるきっかけになればと思います」
札幌や新千歳空港にも近く、交通利便性の高い三笠市。
道内の公立高校で唯一の食物調理科単科校である三笠高校の生徒が
調理・接客を担当する〈三笠高校生レストラン〉をはじめ、
食のまちづくりにも力を入れる、魅力いっぱいのまちだ。
まずは一度訪れて、三笠での暮らしを想像してみてほしい。
※撮影に使用したインテリアは住宅には付属しません。
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