連載
posted:2018.8.14 from:福岡県糸島市 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
田舎へ移住を考えている人、すでに移住した人。
そんな方の、暮らしの参考やアイデアになるはずです。農業、狩猟、人とのつながり、四季のこと。
福岡県糸島で自給自足生活を営む〈いとしまシェアハウス〉の暮らしをお届けします。
writer profile
CHIHARU HATAKEYAMA
畠山千春
はたけやま・ちはる●新米猟師兼ライター。3.11をきっかけに「自分の暮らしを自分でつくる」活動をスタート。2011年より鳥を絞めて食べるワークショップを開催。2013年狩猟免許取得、狩猟・皮なめしを行う。現在は福岡県にて食べもの、エネルギー、仕事を自分たちでつくる〈いとしまシェアハウス〉を運営。2014年『わたし、解体はじめました―狩猟女子の暮らしづくり』(木楽舎)。第9回ロハスデザイン大賞2014ヒト部門大賞受賞。
ブログ:ちはるの森
こんにちは。〈いとしまシェアハウス〉のちはるです。
キラキラと木漏れ日の射しこむ縁側でゆっくり本を読む。
そんな風景を思い浮かべて
「移住したら古民家に住んでみたいなあ」
と思う方も多いんじゃないでしょうか。
けれど、家は人が住まないとあっという間に傷んでしまうもの。
今、空き家になっているような古民家の多くは、掃除や改修が必要な状態です。
3年人が住んでいなかった我が家も、最初は草木がぼうぼうで、
庭に植えられたバラは野生化し、そのツルは屋根まで達して
部屋が薄暗くなっていました。
優雅な縁側の時間を手に入れるためには、
まず荒れ果てた古民家を自分たちの手で直していかなければなりません。
さらに、その家に住んでいる間にも家は傷んでいきますから、
この場所で長く暮らしていくために、DIYは田舎暮らしに欠かせない技術です。
そこで今回は、お金もない、スキルもない私たちが、
どうやってこの築80年の古民家をリノベーションしていったのか、その方法を紹介します。
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この家をスタートしたばかりの私たちは、とにかくお金がありませんでした。
今でこそ、シェアハウスをスタートさせてからの5年間の積み立てがあるので、
工具も材料も“買う”という選択肢がありますが、
当時は「あるものを使ってなんとかする」のが基本。
近所で古民家が解体されると聞けば、軽トラックを飛ばして現場へ向かい、
椅子や縁台、木材や赤土まで、使えそうなものは全部積んで家に持って帰っていました。
あっという間に家の納屋は廃材でいっぱいになり、
あちこちから廃材を集めまくる夫に「こんなにいらないでしょ!」と言って
喧嘩になることもありました。
しかし、その廃材たちがのちのち我が家の大事な資源になるのです……。
例えば、薪置き場の骨組みや、屋根裏をリノベーションするときの床材、
イベントに重宝する看板や椅子、本棚、ニホンミツバチの巣箱など
あらゆる場面で活躍してくれました。
DIYでも、材料を買うとなると意外とお金がかかります。
そういった意味では、金銭面的な部分で失敗することをあまり気負わずに、
気軽にDIYに挑戦できるのも廃材のいいところかもしれません。
屋根裏の床張りでは、木材をすべて購入するとなると
数万円のコストがかかってしまうので、
ストックしていた木材のおかげで材料費を大幅に節約することができました。
廃材が持つ独特の風合いが、温かい雰囲気の屋根裏にぴったり馴染んで、
いい空間に仕上がったと思います。
個人的には、どこかで役目を終えた木材たちが
別の場所でまた新しい役割を与えられ、
そこで生き生きと活躍する姿がなんともすてきだなあと思っていて、
そういった古材が生み出すやさしい空間が大好きなのです。
そういった面で、廃材でリノベをするメリットは
・お金がかからないこと
・愛着が湧くこと
・素材がいい感じに経年変化しているため、新品では醸し出せない雰囲気が出ること
でしょうか。
ですが、デメリットもあります。
・時間がかかること(すぐに必要な廃材が手に入るとは限らないので)
・場所をとること(そして夫と喧嘩に)
・いつでも動ける身軽さが必要なこと(解体現場へすぐ行けるかどうかが肝!)
・手間がかかること(板に打ちつけられた釘を抜いたり、拭いたり、乾燥させたり……)
なあんだ、時間がかかるくらいへっちゃら。と思っているあなた! 侮るなかれ。
時間がかかるとモチベーションを維持していくのが大変ですし、
そこで「暮らし」が始まってしまうと、リノベーションが一時中断したまま
数年が経過してしまう、なんてこともざらにあります。
我が家のキッチンがまさにそうでした。
基本的には自分たちのDIYをメインとしながらも、
技術や時間などの面で、自分たちだけではどうしても難しいというところは
プロの力に頼るのも、バランスのいい方法なのかなあと感じます。
最終的には自分が集中力を持って関われるやり方を
探っていくことが大事なのかもしれませんね。
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できるだけあるもので済ませるといっても、工具や漆喰、ペンキなど、
DIYを進めるうえで買わなければいけないものは多々あります。
そのため、我が家でリノベーションをする際には
ワークショップを同時に企画しています。
そこでは、参加者は普段体験できない大がかりなリノベーションを学ぶことができ、
私たちも参加費をいただくことで経費を賄うことができます。
屋根裏や米蔵、リビングの床暖房などは
数日の泊まり込みワークショップを企画し、
廃材の利用や、ワークショップ参加者のみなさんのおかげもあって、
できる限りコストをかけずに進めてこれたと思います。
さらに、別団体とコラボして合宿を組んだり、
いとしまシェアハウスや私たちの暮らしに共感してくれる企業から
協賛金をいただいたりすることで、外部から講師を呼び
専門的な作業や、大がかりなリノベーションにも挑戦してきました。
ワークショップ形式で行うリノベーションを企画してきて、いいなあと思うのは、
ふとした瞬間に「ああ、ここは●●さんが塗ってくれた壁だったなあ」と思い出すところ。
暮らしのなかで誰かの顔が思い浮かぶと、なんともいえない幸せを感じるのです。
振り返ってみると、この家はたくさんの人の手によって生まれ変わったのだなあ、としみじみ。
次回開催予定のリノベーションは、玄関に「たたき土間」をつくるワークショップです。
たたき土間とは、古くから日本の民家の土間をつくる際用いられていた手法で、
土に石灰、苦汁などを混ぜ合わせ、叩いてかためて仕上げたもののこと。
施工が簡単なセメントが使われるようになってからは見かけなくなってしまいましたが、
今回はその伝統的手法を使った土間づくりにチャレンジしようと思います。
我が家の玄関は、もともと土間だったところに薄いベニヤ板が貼られ、
洋風の応接間がつくられています。周りのお家を見てもそういう家が多いので
きっとそのスタイルが流行した時代があったんでしょうね。
ただ、5年の間に穴が開いたり凹んだりとだいぶ傷んできたので、
この際、床を全部剥がして新たにたたき土間をつくろう! ということに。
床板を盛大に壊して土間をつくるまでを、3日間でやりきります!
私たちも初めてのことなので、今から準備を頑張らねば……。
古民家での土間づくり、興味がある方は一緒につくってみませんか?
(こんなマニアックなことに興味のあるコロカル読者さんにいらっしゃるのか? という疑問を抱きつつ)
糸島でお待ちしています!
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意外に思われるかもしれませんが、夏は鹿が旬の季節!
脂がのっていておいしいのです。
唐揚げにしていただきました!
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