連載
posted:2022.1.27 from:北海道函館市、札幌市、稚内市 genre:旅行 / 食・グルメ
sponsored by 道内中核都市観光連携協議会
〈 この連載・企画は… 〉
とにかく広大な北海道を旅するなら、道内各地にある空港をうまく利用するのがおすすめ。
INとOUTのルートを変えることで北海道の魅力を存分に味わえる、新しい旅をご案内します。
writer profile
Satoko Nakano
仲野聡子
なかの・さとこ●ライター。生まれも育ちも日本一人口の少ない鳥取県。高校卒業後に上京し、東京に20年ほど住んだのち、2017年8月に北海道喜茂別町に家族と移住。羊蹄山麓の澄んだ空気や豪雪を楽しみ、日々人の温かさに触れている。
credit
撮影:吉川麻子
さまざまな北海道の魅力を満喫する周遊旅。
今回はまず、函館空港から車で5分というアクセス抜群の湯の川温泉へ。
湯の川温泉から市電に揺られ、函館朝市では、海鮮グルメを堪能。
函館駅から特急で約4時間で札幌へ。
札幌を代表するグルメ、ジンギスカンを味わったら、
ここ数年、新たな定番となっている“シメパフェ”を食べ比べ。
札幌の奥座敷と言われる定山渓温泉、さらに豊平峡温泉まで足を延ばして、
知る人ぞ知るグルメに出合う。
そして新千歳空港から1時間のフライトで稚内空港へ。
最北端の温泉でゆっくり体を癒したら、日本最北端の地を訪れ、
最後は稚内のソウルフード「チャーメン」の名店へ。
各地の特徴ある温泉とグルメを堪能する旅へ、ご案内します!
函館空港から車で5分。
全国でも珍しい、空港に近い温泉街として知られるのが〈函館湯の川温泉〉だ。
飛行機を降りてタクシーに乗り込めば、あっという間に到着する。
短い移動距離で、疲れた体を熱い湯に浸すことができるのはうれしい。
湯の川の語源は、アイヌ語のユ(湯)と、ベツ(川)からきているとされる。
1868年の箱館戦争時には旧幕軍の総裁である榎本武揚が傷病兵を療養させたほか、
自身もたびたび入浴に訪れたという歴史を持つ。
1886年に湯治場が開かれてからは、料理店や宿、土産物屋などが立ち並び、
温泉街として栄え始めた。
いわゆる街場の温泉地で、中心地は市電の路面電車が行き来する。
観光客と地元の人たちの日常が交差する、湯の川温泉らしい風景だ。
市電の「湯の川温泉」停留所からほど近い場所にあるのが、無料開放されている足湯。
こんな中心部に足湯が? と最初は面食らうが、
入れ替わり立ち替わり人が入る姿を見て、
足湯が暮らしの一部になっていることを実感する。
談笑したり読書をしたりと、思い思いに楽しむ人たち。
冬場は少し滞在時間が長くなりそうだ。
そして温泉に入るのは、人間だけではなかった。足湯から歩くこと約10分。
温室の中に約300種類もの南国の珍しい花や木が育つ〈函館市熱帯植物園〉では、
なんと源泉に浸かるニホンザルたちが見られる。
1970年に開園し、「植物園に訪れる人を楽しませたい」と、翌年にサル山が誕生。
かつてこの周辺にたくさん湧いていた源泉をサル山に引いて以来、
約50年もの間、湯の川温泉はニホンザルの体を温め、それを見る人々を和ませてきた。
毎年12月1日から5月の連休最終日までは、
ニホンザルの入浴シーンにお目にかかることができる。
一方、空港だけでなく、海も近いのが湯の川温泉の特徴。
北海道と本州の玄関口である津軽海峡を、
最上階の露天風呂から遮るものなく眺められるのが、
2021年7月にオープンした〈函館湯の川温泉 海と灯〉だ。
特に7月から秋にかけては、真っ暗な海の上にぽつん、ぽつんと
蛍のように光るイカ釣り漁船の漁火が美しい。
冬は雪見風呂、天気が良ければ満月。四季折々の楽しみ方ができる。
そして、温泉といえばおいしい食事。
館内のブッフェレストラン〈月舟〉には、函館周辺の漁港で
その日の朝にとれた新鮮な魚介を中心に、夜は150種類、朝は140種類もの品目が並ぶ。
ブッフェ形式で好きなものを好きなだけ盛れるほか、
焼きたて、つくりたて、握りたてを心ゆくまで堪能できる。
まち歩きもしたいけど、ずっとここにいたい……。
そんな気持ちにさせてくれる宿だ。
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函館湯の川温泉 海と灯
ヒューイットリゾート
住所:北海道函館市湯川町3-9-20
TEL:0138-57-5390
アクセス:函館空港から車で約5分、バス15分(熱帯植物園前下車徒歩1分)
宿泊料金:1泊2食付1室26000円~
日帰り入浴料金:大人1100円、4~12歳550円、3歳以下無料
日帰り入浴時間:14:00~18:00
Web:函館湯の川温泉 海と灯
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湯の川温泉から、市電に揺られて約30分。
函館を語るうえで欠かせない、函館朝市へ向かう。
函館朝市の敷地は、約1万坪。
「函館朝市ひろば」「産直市」「えきに市場」「どんぶり横丁市場」の
4エリアで構成され、約250もの店舗が並ぶ。北海道でも最大規模の市場だ。
冬は6時、夏は5時には店が開き始め、
新鮮な海鮮の朝食を求める人たちが少しずつ訪れる。
だんだんと人数が増え、市場が活気づくのは10時頃だ。
海鮮を販売する店の店頭には、鮭とばや氷下魚(こまい)といった珍味から、
毛ガニやイクラなどの生鮮品、ホッケの干物など、これぞ北海道といった商品がずらり。
夏場は生簀からスルメイカを釣れば、その場で捌いてくれる「イカ釣り」も人気だ。
〈函館カネニ〉は、明治30年より続く老舗。
かつては定置網漁を営んでいたが、
水産加工業を始めて函館朝市にも出店するようになった。
看板商品は、函館の特産品でもあるオリジナルの松前漬。
北海道産のスルメと、粘りの強い函館産のがごめ昆布、
そして数の子が惜しげもなくゴロゴロと入った贅沢な一品だ。
そしてカネニ自慢のテイクアウトグルメが、
ふわふわの生地の中にズワイガニの身がたっぷり詰まった〈かにまん〉。
市場歩きでつかれた体にじわりと染み入る。
小腹を満たしつつ、やはりこのへんでガツンと海鮮丼を入れたいところ。
そこで、函館朝市で最初に海鮮丼を始めたという〈きくよ食堂〉へ向かう。
創業は昭和31年。最初は朝市で働く人のための、カウンター10席ほどの食堂だった。
ショーケースの中から魚や煮物など好きなものを選び、ご飯と味噌汁で食べる。
やがて一般のお客さんも訪れるようになり、
仲買から新鮮な海鮮が手に入っていたことから
「丼をつくってみようか」と、海鮮丼が生まれたそう。
一番人気は、ウニ、イクラ、ホタテがたっぷりのった「元祖函館巴丼」。
ウニには特製のわさびダレをかけて。
昆布と鰹でとった出汁で漬け込んだイクラの味も、創業当初から受け継がれている。
ネタ同様にたっぷり盛られたごはんは、280グラムと大容量。
ガスや電気釜でなく、毎日炭をおこして、昔ながらの蒸しかまどで炊く。
地元・道南産のお米の旨みが凝縮されて、ふっくらモチモチ。
「おいしいものを食べてほしいという気持ちがあるからこそ、手間は惜しみません」
と、2代目店主の戸澤宏美さんが話してくれた。
創業当初からの変わらぬ味を口にするたび「ああ函館に帰ってきた」と思える。
多くの人にとって、きくよ食堂はそんな存在なのかもしれない。
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函館から次に向かうのは札幌。
朝市から徒歩3分の函館駅で特急に乗れば、4時間ほどで到着できる。
札幌は道内一の都市。なかでも大通、すすきのエリアには、
良質な素材を生かした個性あふれるおいしい店が数多く存在する。
北海道グルメの代表格であるジンギスカンも、そのひとつ。
狸小路7丁目のアーケード内で、18年間、鉄鍋に火を灯し続けているのが〈アルコ〉だ。
着席するや否や、目の前の鉄鍋に手際よくラードと野菜が置かれる。
ジンギスカンを注文すると、ロースやバラなど、
ひと皿にさまざまな部位が盛られた厚みのあるマトンが出てきた。
やわらかく、独特の臭みもない。マトンの概念ががらりと変わる。
肉を知り尽くした店主の別所徹一さんが、
ニュージーランド産の羊を一頭買いして店でさばき、しっかりと熟成。
やわらかさと臭みのなさの理由はそこにある。
「ニュージーランド産の羊は赤身にもバランスよく脂肪がのっていて、
鉄分が持つ酸味も少ない。産地によって羊の味に特徴が出るんです」
フレンチのシェフ時代に内臓を使った料理を覚えたことから、
ジンギスカンで出せない部位をトマトと赤ワインで煮込んだ
羊の筋の煮込み(700円)も提供。
意外な場所で味わえる本格フレンチもぜひ楽しみたい。
お腹いっぱいになったあとは、札幌の食文化としてここ数年話題の“シメパフェ”へ。
〈パフェ、珈琲、酒、佐々木〉は、2016年にオープンした
〈パフェ、珈琲、酒、佐藤〉の姉妹店。
小上がり席のある佐藤とは違いカウンター席のみで、
お酒とパフェを静かに楽しみたいひとり客からの人気も高い。
特にシングルモルトなどのお酒が充実しており、
パフェに合うお酒も多く取り揃えている。
酒、肴、パフェ、コーヒーを楽しめるコースも用意されており、
「シメではなく1軒目から」という人も珍しくない。
パフェは4種類。オープン当初からの定番は「塩キャラメルとピスタチオ」だ。
キャラメルアイスとピスタチオアイスの下に待ち受けているのは、
甘酸っぱいカシスムースとほろ苦い珈琲ムース。
カクテルグラスの底にはハーブティにも使われるバタフライピーのジュレが敷かれ、
最後に口の中をさっぱりとさせてくれる。
ひと口ごとに新鮮な驚きがあり、飽きることがない。
食べ進めるにつれて味と食感の変化が楽しめるよう、計算し尽くされたパフェである。
一方、創業27年の老舗が、すすきのにある〈HOKKAIDO ミルク村〉。
ここは、手づくりのアイスクリームにリキュールをかけて食べる少し大人の店だ。
オーナーの岩村宗市さんはもともと洋菓子のパティシエ。
「修業先のパリでは、ケーキをつくるときにいいお酒をたくさん使うんです。
そうすると、とても香りのいいケーキができる。
でもそれを日本の洋菓子でやるとコストが合わないから、
アイスクリームにちょっとだけかけて食べたらどうだろう、と思って始めました」
自慢のアイスクリームは、オーナーが惚れ込んだという十勝産の牛乳がベース。
その日につくった分は、その日のうちに完売するという盛況ぶりだ。
お酒のラインナップは100種類以上にのぼるが、
なかには1本50万円もする高級コニャックも。
そのまま飲むよりもアイスクリームにのせたほうが、
そのお酒の風味や香りが際立ってよくわかるという。
「シメパフェブームの前は『シメはミルク村』と言われるくらいでしたよ」
と笑う岩村さん。札幌のシメパフェは、新旧どちらも捨てがたい。
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アルコ
住所:北海道札幌市中央区南3条西7丁目(狸小路7丁目)
TEL:011-221-7923
アクセス:札幌市電資生館小学校前駅から徒歩3分
営業時間:17:00~22:00(日曜・祝日~21:00)
定休日:月曜
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パフェ、珈琲、酒、佐々木
住所:北海道札幌市中央区南2条西1丁目8-2 アスカビルB1
TEL:011-212-1375
アクセス:地下鉄大通駅、豊水すすきの駅から徒歩2分
営業時間:18:00~24:00(金・土曜・祝前日~26:00)
定休日:不定休
Web:パフェ、珈琲、酒、佐々木
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アイスクリームBAR
HOKKAIDO ミルク村
住所:北海道札幌市中央区南4条西3丁目7-1 ニュー北星ビル6F
TEL:011-219-6455
アクセス:地下鉄すすきの駅から徒歩1分
営業時間:13:00~23:00L.O.(水曜17:00~23:00L.O.)
定休日:月曜
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札幌中心部から、車またはバスで約1時間のところに位置するのが「定山渓温泉」だ。
温泉街には豊平川が流れ、周辺には朝日岳や夕日岳をはじめとする広大な山々が広がる。
この豊かな自然の地中に染み込んだ豊富な地下水が、温泉の源と言われている。
春は桜、初夏は新緑が眩しく、秋には紅葉が見事。
冬は、冷えた体を温めに多くの人が温泉に訪れる。
湯に入り、おいしい食事を楽しみ、宿泊して帰るだけでも十分だが
「さらに心を豊かにしてもらえる時間を」と誕生したのが〈心の里定山〉である。
基本料金1500円を支払えば利用時間に制限なく、
茶菓子や飲み物を味わい、思い思いの時間を過ごすことができる。
もともとは〈ぬくもりの宿ふる川〉が、連泊する常連客のためにつくった施設だったが、
少しずつ認知度が上がり、現在は日帰りの旅行客にも親しまれている。
大きな窓から見えるのは、四季の移り変わりが楽しい庭園。
更地だった場所に定山渓エリアの在来種を植え、5年ほどかけて立派な庭に育て上げた。
庭には8か所の足湯。春先や秋口などの気候がいい時期には、
鳥のさえずりを聞き、季節の花や緑をゆったりと眺めながら、
長い時間湯に足を浸している人もいるという。
喧騒から離れて自然のぬくもりに触れることで、
さまざまな感情や疲れがリセットされていく。
ところで、定山渓の周辺にはいくつかの温泉がある。
豊平川の上流に向かって10分ほど車を走らせると見えてくる
「豊平峡温泉」もそのひとつだ。
日帰り入浴のみの温泉施設で、100%源泉かけ流しが特徴。
札幌市内で唯一貯湯タンクを使わず、地中から源泉を直接浴槽に注いでいる。
51.5度の源泉が地中を通りながら少しずつ冷まされ、
湯船に入れたときにはちょうどいい41度に。夏場も加水せず、
露天風呂に設置された水車にお湯をくぐらせて水温を下げるという徹底ぶりだ。
この豊平峡温泉、その濃厚な泉質に惚れ込んで通う人も多いなか、
実は温泉以上に有名になったものがある。
それが、インドカリーだ。
「なぜ温泉施設にインドカリーが? とよく言われます。
前社長から豊平峡温泉を継いだとき、現社長はインドカリー屋を経営していたんです。
温泉を継ぐからといって、働いてくれている外国人とさようならするのも忍びない。
だったらそのまま店を温泉に移転させて、彼らにも働いてもらおう、
ということだったようです」と話すのは、支配人の馬場順平さん。
これが、ただの人情味あふれる話で終わることなく
「豊平峡温泉のインドカリーが相当うまいらしい」とたちまち話題に。
それもそのはず、社長はカリーの味に相当なこだわりがある。
味の核となるのは、無水でじっくり煮立てたオニオンベースと、
スパイスで辛味を足した濃厚なトマトベース。
これらを調合することで、オニオンベースのまろやかさと、
トマトベースの爽やかさが絶妙に絡み合うのだ。
さらに、特製のセラミック釜で焼き上げたモチモチのナンが人々の舌を唸らせる。
紅葉時期、ピーク時は2時間から3時間待ちの行列ができることもあるのだとか。
「お客さまが何人いらっしゃっても売り切れないくらいの量を仕込みます」
という気合の入れ方が頼もしい。
札幌に来たら、いろいろな意味で一度は訪れたい温泉である。
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新千歳空港から、道内便に乗って1時間ほどで到着したのは、日本最北の地・稚内。
宗谷海峡をはさんで東はオホーツク海、西は日本海に面し、
最北端の宗谷岬からはサハリンの島影が見える国境のまちだ。
春は、日本で最後に届く桜前線。
夏は、ホタテの貝殻が敷きつめられた美しい「白い道」。
冬は犬ぞりレース大会観戦や、最北の地で拝む初日の出。
稚内だからこその楽しみも豊富だ。
海鮮はもちろんのこと、宗谷黒牛などのグルメも堪能できる。
そして景勝地が多いのは、さすが海沿いのまちといったところ。
「ノシャップ岬」もそのひとつだ。
ノシャップとは「岬のそば」「岬がアゴのように突き出たところ」
を意味するアイヌ語“ノッ・シャム”が語源だという。
地平線に沈む夕日は言葉を失うほどの美しさで、
時間を忘れてしばらく海を眺める人も多い。
そこから車を5分ほど走らせたところに、日帰り温泉施設〈稚内温泉 童夢〉がある。
平成9年にオープンして以来、地元の人たちの憩いの場になっており、
開館時間前から列をつくって待つ人もいるほどの人気だ。
源泉は市内のホテルにも供給されているが、温泉施設として楽しめるのは童夢だけ。
いまでこそ1日の利用者数は400~500人ほどだが、
オープン当初は1日に1200人余りの人が訪れたという。
「当時はロシアの船員が多く来ていた時期で、日本人と半々くらいでしたよ」
と、支配人の瀧澤修一さんが話してくれた。
泉質は弱アルカリ性。湯は少し濁りがあり、油分が多くとろりとした肌触りが特徴的だ。
「そのおかげで体が温まり、湯冷めしづらいと言われているんですよ」と瀧澤さん。
高齢者がみんな元気でつやつやしているのも、この温泉のおかげかもしれない。
天気がいい日は、露天風呂の生垣の向こうに礼文島と利尻島が望める。
夕刻になるとふたつの島の真ん中に、きれいに夕日が落ちていくという。
地元の人が見慣れたこの風景も、旅人にとっては大きな癒し。
旅を終えたあとでも、ふと思い出して、また行こう、という気持ちになるだろう。
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ノシャップ岬
住所:北海道稚内市ノシャップ2
アクセス:稚内空港から車で約30分、JR稚内駅から車で約10分
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次にやってきたのは「宗谷岬」。
言わずと知れた、日本最北端のポイントである。
「日本最北端の地の碑」は、北国のシンボルである北極星の一稜をかたどった三角錐。
塔の中央にあるNは北を表し、台座の円形は平和と協調の印だ。
目の前に広がる海を眺め、そう遠くない異国に想いを馳せる。
周辺の土産物屋では、日付と時間入りの
「日本最北端到着証明書」を購入することも可能。思い出にぜひ持ち帰りたい。
続いて向かったのは「稚内港北防波堤ドーム」。
ドームのある北埠頭は、かつて樺太が日本の領土であったとき、
北海道と樺太を結ぶ定期航路「樺太航路」の発着場として
多くの人や貨物で賑わっていた。ところが一年を通して強風が吹き、
人が高波にさらわれて転落する事故が相次いだため、
人や道路、鉄道を守るために防波堤が建設された。
それが北防波堤ドームの原型となっている。
まだコンクリート建築が普及していなかった日本で、3年がかりで完成させた防波堤。
老朽化により1978年に全面改修し、再び独特の景観を蘇らせた。
役目を終えてもなお愛され、大切に保存される貴重な建築物である。
さて、このへんで稚内グルメにお目にかかりたい。
なにやら稚内には「チャーメン」という名前の麺メニューが、古くからあるという。
調べてみると、蒸し麺をフライパンで焼いたり揚げたりして最後に餡をかける、
いわゆるあんかけ焼きそばのことだった。
しかし稚内でその定義を聞いても、誰も明確な答えを持っていない。
何年も前に閉店してしまった中華料理屋〈香蘭〉が発祥、とする説が濃厚だが、
それもはっきりとは言い切れない。
具材の種類や味つけ、中華麺のカリカリ加減も店により微妙に異なるが、
しっかりとした決まりはなさそうだ。
現在、稚内市内でチャーメンを提供する店は10軒ほど。
なかでも55年目を迎える〈大王本店〉は、
チャーメンを出している店のなかで一番の老舗だ。
創業当初から変わらぬ味のチャーメンは、塩と醤油の2種類。
味つけにラーメンスープを使い、野菜たっぷりの餡に仕上げていく。
また、麺は一度茹でてから湯切りし、ちょうどいい塩梅に焦げ目をつける。
蒸し麺を使うより手間がかかるが、おいしさを追求してそこに行き着いた。
噛みごたえのある香ばしい麺に、たっぷりかかった餡がしっかり絡み、
野菜のシャキシャキが小気味良く加わる。
胃袋をじんわりと温めてくれた、稚内のソウルフード。
おかげでほくほくした気持ちのまま、稚内空港から帰路についたのだった。
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宗谷岬
住所:北海道稚内市宗谷岬
アクセス:稚内空港から車で約25分、JR稚内駅から車で約40分
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稚内港北防波堤ドーム
住所:北海道稚内市開運1丁目
アクセス:稚内空港から車で約20分、JR稚内駅から徒歩約10分
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大王本店
住所:北海道稚内市中央3丁目16-26
TEL:0162-23-7766
アクセス:稚内空港から車で約20分、JR稚内駅から徒歩約3分
営業時間:11:30~14:30、17:00~19:00
定休日:不定休
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おもいっきり北海道
とにかく広~い北海道を旅するのに、行きと帰りが同じ空港ではもったいない。北海道の空港を上手に使って、おもいっきり北海道を満喫しよう!
Web:おもいっきり北海道 公式サイト
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