連載
posted:2024.12.18 from:北海道岩見沢市 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。
野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。
writer profile
Michiko Kurushima
來嶋路子
くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、『みづゑ』編集長、『美術手帖』副編集長など歴任。2011年に東日本大震災をきっかけに暮らしの拠点を北海道へ移しリモートワークを行う。2015年に独立。〈森の出版社ミチクル〉を立ち上げローカルな本づくりを模索中。岩見沢市の美流渡とその周辺地区の地域活動〈みる・とーぶプロジェクト〉の代表も務める。
https://www.instagram.com/michikokurushima/
ついにあたりが真っ白になり、雪の季節がやってきた。
庭に出て植物を眺めたり、収穫して食べたりできなくなるのは、
とても寂しいのだが、そんな気持ちを慰めてくれるものがある。
それは夏から秋にかけてせっせと集めて、干しておいた植物たちだ。
野に自生しているミントやカキドオシ、必ず畑で育てる
ホーリーバジルなどを乾燥させておけばお茶にできるし、
スゲや豆のツルをとっておけば、しめ飾りやカゴ編みの材料にもなる。
こうした植物のなかで、いちばん活用しているのは、なんといっても赤シソだ。
春になったらポットにタネを撒いて、たくさんの苗をつくり庭や畑に植えている。
こぼれダネから発芽するものもあって、特に手をかけなくてもぐんぐん伸びる。
なぜ、赤シソをこんなに育てるのか。
1番の理由は梅干しに欠かせないからだ。
いつも奈良の農園から、無農薬栽培の梅を10キロ取り寄せている。
7月初めにそれを塩漬けしておいて、赤シソが育つのを待つ。
8月中旬くらいに赤シソの葉っぱをたくさん集める。
梅10キロに対して、赤シソを葉っぱだけで1〜2キロ集めたいと思っていて、
自家栽培したものだけでは足りずに、近隣の農家さんから買ったりもしている。
シソを塩で揉む作業は、ことのほかたいへんだ。
まずは下処理として、茎から葉っぱをとって、それを洗って乾かして、
口当たりをよくするために葉っぱについた軸をとる。
大きなボールに10杯以上はあるだろうか。
軸をとる作業は1日では終わらない。
下処理ができたら塩で2回もんで灰汁をとる。
梅を塩漬けして梅酢の上がったカメにこれを入れると、
鮮やかな赤紫色が広がる(この瞬間が大好き)。
そのまま1週間くらいおいておき、いよいよ梅を干す作業へと移る。
3日間ほど天日で干していくと、シソの色が梅に移って、どんどん赤くなっていく。
シソは天日で半日くらい干して、干しあがった梅干しと一緒にカメに収めて熟成させる。
たっぷりのシソで蓋をしておくことで、梅の腐敗を防ぐ効果もあるという。
確かに梅酢に浸したこの赤シソは、不思議なことに時間が経っても腐らない。
結構前につけた梅干しと一緒に赤シソも出してきて、
ちょっと干してユカリのふりかけにしたり、もちろんそのまま食べてもおいしい
(実際に食べる際には十分にご注意ください)。
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さらに梅干しをつける過程で出る梅酢も、いろいろ使えるアイテム。
サラダのドレッシングに混ぜたり、漬物に活用したりすることも。
ちなみに我が家の息子は、疲れたときにちょっぴり飲んだりしている。
8月に梅干し用に葉っぱをカットした赤シソは、そのまま植えておけば
さらに成長するので、シソジュースをつくることも。
いろいろ試してみたところ、鍋にあふれるくらいたっぷりとシソを入れ、
砂糖も思い切ってたくさん入れるとおいしい
(水1リットルに対して砂糖250グラムくらい)。
煮立ってきたら砂糖を混ぜて、最後にクエン酸を入れると、鮮やかな赤紫になる。
暑さでぐったりした体に活力が戻ってくるので、夏には欠かせない。
秋になってタネがつき始めて、茎がだいぶ硬くなってきたら、
今度は根元からカットして、半分はそのまま吊り下げて干してお茶にする。
もう半分は、今年初めて酵素シロップにしてみた。
酵素シロップとは、野菜や果物の全量に対して、1.1倍の白砂糖を合わせ、
それを混ぜて発酵させてつくるもの。
免疫力アップや抗酸化作用があるという。
今回は、シソの太い茎の部分もタネの部分も葉っぱもすべて、
だいたい5センチくらいの長さにカットし、ほかにミントやタイムなどのハーブも加えた。
保存瓶に葉っぱと砂糖を層にしながら入れていき、最後に砂糖で蓋をする。
1〜2日くらい経つと、水分が出てくるので、手で混ぜる。
その後、毎日朝と晩、2回ずつ混ぜていくと、だんだんと発酵して酵素シロップになる。
完成の目安は、砂糖が完全に溶けて、味がまろやかになった頃。
北海道は気温が低いので2週間くらいかかる。
これをソーダで割ったりすると、シソジュースとはまた違った味わいが楽しめる。
さらに今年はシソの実を醤油でつけて、ご飯にかけたり、
カツオのタタキと一緒に食べたりも。
冬、干しておいて、お茶にしきれなかったシソでリースをつくったりもしていて、
このリースに使ったタネを春にまけば、新しい命としてつながっていくのもうれしい。
指でサヤをもんでタネをとるとき、シソのいい香りがふんわりとしてくる。
そのたびに、お腹がグウとなりそうになって、
私はこの香りと味が本当に好きなんだなと妙に納得してしまう。
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