連載
posted:2023.4.11 from:北海道岩見沢市 genre:暮らしと移住
〈 この連載・企画は… 〉
北海道にエコビレッジをつくりたい。そこにずっと住んでもいいし、ときどき遊びに来てもいい。
野菜を育ててみんなで食べ、あんまりお金を使わずに暮らす。そんな「新しい家族のカタチ」を探ります。
writer profile
Michiko Kurushima
來嶋路子
くるしま・みちこ●東京都出身。1994年に美術出版社で働き始め、『みづゑ』編集長、『美術手帖』副編集長など歴任。2011年に東日本大震災をきっかけに暮らしの拠点を北海道へ移しリモートワークを行う。2015年に独立。〈森の出版社ミチクル〉を立ち上げローカルな本づくりを模索中。岩見沢市の美流渡とその周辺地区の地域活動〈みる・とーぶプロジェクト〉の代表も務める。
https://www.instagram.com/michikokurushima/
https://www.facebook.com/michikuru
北海道にきてから、素材が手に入ると、ときどきカゴを編んでいた。
初めて体験したのは5年前。
カゴ作家で埼玉・秩父在住の長谷川美和子さんが、美流渡(みると)地区で
カゴ編みのワークショップを開催してくれたときのこと。
このときはブドウのツルを主に使ったカゴ編みと、
クルミの木の皮など山での素材の採取方法も教えてくれた。
その後は年に1、2回、気が向いたときにつくっていたが、
昨年末ごろ、急にカゴ編み熱が高まって、たくさん編むようになった。
きっかけは、私が代表を務める地域PR団体〈みる・とーぶ〉で、
近隣の閉校した中学校の校舎の活用プロジェクトを始めたことだ。
校舎の脇には木が茂っていて、カゴ編みの素材になるツル植物もたくさんあった。
朝、何気なくそれを何本か切って持って帰り、その場ですぐにカゴを編んだことがあった。
編み物よりも自由度があって、特に規則的に編まなくてもかたちが決まる。
30分ほどで、なかなか立派なものができあがった。
私は編集や執筆の仕事をしており、ほとんど一日中パソコンにむかっている。
夕方になると脳みそだけがクタクタになっていて、体はほとんど動かさないため、
心身のバランスが悪い状態になってしまう。
そんななかで、カゴ編みの素材を採取しに外に出たり、自然素材に触れたりしながら、
指を使って編む業に集中すると、スーッと心が休まる感じがする。
この作業を体が欲しているのではないか!
最近では、だんだんカゴ編みの時間が長くなっていて、
「あっ、原稿の締め切りだった!」と気づいて慌ててパソコン作業に戻ることもある。
家にどんどん作品が溜まっているので、今年はこれらを販売したいと考えている。
私たちの団体が企画している、地域のつくり手の作品を集めた『みる・とーぶ展』。
春に旧美流渡中学校で行われる、この展覧会に出品しようと準備中だ。
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わたしの編み方は、ランダムなもので、ツルが曲がりたいと思っている方向を考えながら、
全体に丸いかたちにしていくというもの(乱れ編みというそう)。
手順はとても簡単で、ツルを一昼夜、水につけておき、
持ち手と縁となる部分の骨組みをつくったら、あとは自由にツルを這わせていけばOK。
ツルは乾くとそのかたちに固まってくれるので、接着剤や紐などは使わなくても大丈夫なのだ。
細いツルはギュッときつく縛れるので、持ち手と縁とを固定させるときに使うのがコツ。
また、乾いて何か月か経つとツルが痩せてゆるんでくるので、ツルを少し引っ張ったり、
足したりして微調整するとしっかりする(ツルを十分に乾燥させてから使うとベスト)。
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素材となるツルも種類を変えると表情も変わってくる。
校舎付近に生えているものの多くは、
ツルウメモドキとコクワ(ほかにも名前のわからないツルが……)。
これ以外にノブドウでもカゴを編んでみた。
力を入れると崩れてしまいそうな折れやすい素材だが、おもしろい表情が出た。
また、草でもカゴを編んでみた。
庭にたくさん生えているアカツメクサは、茎に弾力性があって折れにくい性質。
実験してみたら、小さなカゴができた。
さらに、昨年そばを育て、その茎がとてもしっかりとしていたことから、
これもカゴが編めるんじゃないかとやってみた。
思った以上にいろんな植物でカゴが編めることがわかり、部屋中素材だらけに……。
カゴ編みに出合う以前は、毛糸で帽子やマフラーを編んだりしていたが、
ランダムに編んでかたちにできるカゴのほうが、自分の性格には合っているように思う。
北海道に移住しなければ、きっとカゴ編みはやっていなかっただろう。
あそこにもそこにも素材があって、それらがすぐに手に入る環境に身を置くと、
アイデアがふくらんでくるし、新たな素材で日々実験できるから、
どんどんつくってみたくなる。
いま、北の大地には遅い春が訪れようとしている。
草木が芽吹いてきたら、また新たなカゴ編みの素材を探し、
それらを手でかたちにする喜びを存分に味わいたいと思う。
4月29日から始まる『みる・とーぶ展』で展示販売するので、
お近くの方はぜひおいでいただけたら幸いです。
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