colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

ソーラーシェアリング農業で
ぶどう&ブルーベリーづくりに挑む。
「自分でつくること」を楽しむ暮らし

わが家が楽しすぎる! BESS × colocal
vol.016

posted:2022.8.31   from:神奈川県秦野市  genre:食・グルメ / アート・デザイン・建築

sponsored by BESS

〈 この連載・企画は… 〉  ライフスタイルの基本は、やはり「家」。
ログハウスなど木の家を得意とする住宅ブランド〈BESS〉とともに、
わが家に好きなものをつめこんで、
最大限に暮らしをおもしろがっている人たちをご紹介します。

writer profile

Tomohiro Okusa

大草朋宏

おおくさ・ともひろ●エディター/ライター。東京生まれ、千葉育ち。自転車ですぐ東京都内に入れる立地に育ったため、青春時代の千葉で培われたものといえば、落花生への愛情でもなく、パワーライスクルーからの影響でもなく、都内への強く激しいコンプレックスのみ。いまだにそれがすべての原動力。

photographer

Kentaro Oshio

押尾健太郎

おしお・けんたろう●写真家。千葉県千葉市出身。スタジオアシスタントを経て渡英。帰国後、都内でフリーランスになる。雑誌、広告、WEBを中心に幅広く活動中。2022年、ロンドン留学時にホームレスになってしまった友人を撮影した写真集『PLOUGH YARD 517』を刊行する。 http://oshiokentaro.com

ソーラーシェアリングの農業

特にフルーツの産地というわけではない神奈川県秦野市というエリアで、
ぶどう(シャインマスカット)とブルーベリーを育てている佐藤岳さん・美紗子さん夫妻。
しかも、ふたりとも農業経験がないところからのスタートだった。

農業のなかでもハードルが高いフルーツを選んだ理由を岳さんに尋ねると
「好きだから」と単純明快な答えが返ってくる。
好きなものには、一直線。

佐藤岳さんと美紗子さん、シャインマスカットの下で。

佐藤岳さんと美紗子さん、シャインマスカットの下で。

約1年前からBESSの「G-LOG イスカ」モデルに住んでいる佐藤さん一家。
以前の借家アパートに住んでいたときから、
なんとプランターでブルーベリーを育てていたという。

「ブルーベリーは4年前からつくっています。
当時住んでいた家にちょっとした敷地があって、
そこにたくさんプランターを置いて育てていました。
ご近所さんに売りものと勘違いされるくらい(笑)。
でも、当時は自分で食べたり、ジャムをつくったり、
自分で消費するだけでした」(岳さん)

ブルーベリーは20種類以上の品種を育てている。

ブルーベリーは20種類以上の品種を育てている。

その後、現在の農地を借りる縁を得て、
本格的に生業としてブルーベリーとシャインマスカットの農家を始めることとなる。
農地は約2反(約600坪)。
その半分には屋根を設置して、その下の「棚」でシャインマスカットを育て、
地面でブルーベリーを育てている。
もう半分はなんと、太陽光パネルの下でシャインマスカットを育てている。

ソーラーパネルの下にぶどう棚がある。ほどよく日と雨を遮ってくれる。

ソーラーパネルの下にぶどう棚がある。ほどよく日と雨を遮ってくれる。

最近では、太陽光パネルの下で農作物を育てる
ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)と呼ばれる農業スタイルも増えてきている。

当時、農地を探していた佐藤さん。
その頃からソーラーシェアリングでシャインマスカットを育てることも念頭にあった。
そこに現在の地主さんがソーラーパネルをつけることになり、
その土地を借りることになった。
だから佐藤さんは発電には関与していないが、
実は日光をほどよく遮ることは、シャインマスカットの生育にとって意味がある。

「シャインマスカットのように緑のぶどうは、
あまり陽に当てすぎると日焼けして黄色っぽくなってしまうんです。
巨峰のような赤系ぶどうはどんどん陽に当てても構わないのですが」

背の高い岳さんの身長に合わせた高さになっているが、それでも実がなってくると前屈みに。

背の高い岳さんの身長に合わせた高さになっているが、それでも実がなってくると前屈みに。

シャインマスカットは現在4年目。
木が大人になりきるのに6年くらいかかるようで、
それまでは実をつけ過ぎないないほうがいいという。
人間でいうなれば、まだ完全に体ができていない高校生のようなもの。
“木の体力”と相談しながら育てていかないと、来年以降に実が採れなくなってしまう。
いまの収穫量は約3000房だが、6年目になると2倍近く増えるという。

現在は、まだ規模も小さく、夫婦ふたりのみで作業を行っている。
去年までは収穫量も多くなかったので、家に持ち帰って梱包などをしていた。
それらの資材も家に置いていたという。

しかしそれでは間に合わなくなり、今年になって畑の前に作業・物置小屋を建てた。
BESSの家を建てたときに出た端材を一部利用しているという。
畑自体の柵も前面が木で囲われており、
家も畑も、木を身近に感じる暮らしを楽しんでいるようだ。

BESSの家を建てたときに出た端材を利用した壁面。

BESSの家を建てたときに出た端材を利用した壁面。

次のページ
シャインマスカットの弱点とは?

Page 2

シャインマスカットを育てる

取材時は、ブルーベリーはあらかた出荷が終わってしまった後で、
シャインマスカットの作業を見せてもらった。
雨で濡れないように一房ずつ紙の袋をかけていく地道な作業。
そして重要なのが枝の管理だ。

「この1本の太い幹から、どんどん新しい幹が生えてくるんです。
それを間引いていきます。ぶどうは“1粒に対して葉が1枚”と言われていて、
天気がいいと1週間で1メートルも伸びます。放っておくとジャングルになる。
風通しを良くしないと、病気になるし虫もつきやすくなります」

ぶどう生産といえば山梨が有名だが、
このあたりにはぶどう生産者がいないので「逆にいいかな」と言う岳さん。

「山梨のほうが晴れの日が多いようですが、
ここでは雨を避ける工夫をしながらやるしかないですね」とあっけらかん。
どちらにしろ、雨にあたるのは良くない。

「雨にあたるとすぐ病気になるんです。
ひとつ病気になると蔓延してしまうし、翌年も発病しやすいんです」

野菜と違って1年ごとに採りきるわけではなく、翌年も同じ木なので病原菌が残りやすい。
「本当はあまり先のことまで考えるのは得意ではないんですが」と笑うが、
実の前に、長く木を育てていくという大前提があるのだ。

次のページ
同じ地域に住むBESSユーザーの軒数は?

Page 3

ご近所で「共有する」暮らし

この場所に家を建てる前は、神奈川県海老名市に住んでいた。
よく海老名から江ノ島まで、サイクリングに出かけていたという。
そのとき、BESSに出会った。

「途中に藤沢のLOGWAY(ログウェイ・展示場)があるんです。
当時はまだ結婚前でしたし、買うつもりはなかったけど、『まあ見るだけ見てみよう』と」

その後も、特に家を買うという予定は立てていなかったが、
藤沢方面に行く用事があれば、なにかとLOGWAYに立ち寄っていた。

そしてさまざまなタイミングも重なり、「G-LOG イスカ」モデルを建てた佐藤夫妻。
奥様の美紗子さんは、「薪ストーブがあると、冬は帰ってくるのが楽しみ」と言う。

「朝起きて、“火を起こさなきゃ”という感じとか、冬に家にいる時間が好きになりました。
いつも火がパチパチしている音がして、薪ストーブ、大好きです」

薪ストーブは美紗子さんのお気に入り。

薪ストーブは美紗子さんのお気に入り。

そうなると、気を揉むのが薪の調達だが、まだほとんど購入しなくて済んでいるという。
実は佐藤さんが住むエリアには、並び5軒、向かい5軒、
合計10軒のBESSユーザーの家が並んでいる。
そのほとんどは薪ストーブを設置している。

「どこどこで剪定木が出るとなると、周囲で声をかけ合ったりして、
一緒に行ったりしていますね」

日中に、薪を集める作業などを一緒に行うと、
その夜はそのままバーベキューになったりする。多いときは月2回。

「毎週のようにやったときもあったかな。
例えば誰かの家で七輪で焼き鳥を焼いて、どこどこの家はサラダつくって」と、
持ち寄ることが多いという。
だいたい2、3家族は集まり、大きときは4、5家族集まる。

「それぞれの生活リズムがあるので、なかなか会えない人はいますが、
10家族すべて知っていますし、会って話さないということはありませんね」

10軒の入居は、長くても前後1年違い。
だから近い感覚でコミュニケーションがとれるようだ。
BESSユーザー歴も近いので、必要な作業も似てくるし、同じような問題が発生する。

「住み始めたのが近かったから、仲良くなれたのもあると思います。
特にこちら5軒とは、情報交換が密になりますね。裏の農道の話とか、日当たりの話。
玄関が横並びになるので、暮らしの息遣いを感じますね」と美紗子さん。

「道具のシェアもできますよ」と言うのは岳さん。
「全員が同じ道具をそれぞれ揃えるのって意味ないですよね。
ちょうど今日の朝も芝刈り機を貸しました」

同じBESSを選ぶだけあって、感覚の似た者同士が住んでいる。
そこには仲良く暮らす、ということ以上の「生活の共通言語」があるようだ。

次のページ
以前の職業は……?

Page 4

自分で決めて、自分で動く

実は岳さんは、今年の3月まで高校教師だった。
それまでは畑は趣味であり、教師と並行して作業していたのだ。

「日中は学校で授業して、夜は畑に行く。土日も畑。そんな生活をしていました」

アイランドキッチンに併設したダイニングテーブルにて。

アイランドキッチンに併設したダイニングテーブルにて。

そこから大きく舵を切って、
シャインマスカット・ブルーベリー農家へと転身することになる。

「特に若い頃から農業をやりたいと思っていたわけではないのですが、
やはり自然や植物が好きなんでしょうね。
あと家族と一緒にできて、外でする仕事をやりたいと思って」

「外でも、特に夏が好き。できれば太陽の時間に合わせて仕事したい」という岳さん。
それに対して「本当に冬は元気がなくなる」と笑う美紗子さん。

「夏は朝4時過ぎには明るいじゃないですか。
4時からでも働けます。夏は12時間働いても大丈夫です」

共通の趣味である植物。屋内の鉢植えは、かつて園芸店で働いていた美紗子さんの担当。

共通の趣味である植物。屋内の鉢植えは、かつて園芸店で働いていた美紗子さんの担当。

バイタリティあふれる岳さんだが、教師をやっていた当時、
少しもやもやする気持ちがあったという。
この先、あと30年以上、教師をやっていくのかと自分自身に問うたとき、
「自分の足で立つ」ことを思い立った。
自分の責任で事業を起こし、成功も失敗も、すべて自分の働き方次第。
そういうことに「挑戦」をしたかったのだ。

「だからやる気にあふれています。経済的には苦しいですけど」と笑う。

生業としての農業に踏み込んで、まだ数か月。
安定したレールではなく、「自分でイチからつくっていく」という道へと、
佐藤さんは新たな一歩を踏み出した。

植物モチーフのオブジェ。

植物モチーフのオブジェ。

information

わが家が楽しすぎる! BESS × colocal

Feature  特集記事&おすすめ記事