〈 この連載・企画は… 〉
南北に長い日本列島。同じ魚でもおいしい時期も違えば料理法も違います。
季節の花を愛でるように旬の魚を食したいではありませんか。そこが肉食と違う魚食の醍醐味。
魚の食べ方や生態や漁法を漁師、魚屋さん、魚類学者、板前さんなど、魚のプロに教えてもらいます。
writer's profile
Sei Endo
遠藤 成
えんどう・せい●神奈川県川崎市生まれ。出版社を退社後、ヨットで日本一周。漁業、海生生物の生態の面白さに目覚める。東京湾の環境、漁業、海運、港湾土木をテーマにしたエンターテインメントマガジン『TOKYO BAY A GO-GO!!』編集長。
credit
取材協力:瀬川進(東京海洋大学特任教授)
みなさんはイカを食べるとき、
まるごと買って家でさばきますか?
魚屋さんでさばいてもらいますか?
それとも切り身を買ってきますか?
まるごと買ってきて、お子さんや彼氏彼女といっしょに
解体すると楽しいですよ。
包丁が苦手でもキッチンばさみで簡単にできます。
みなさん、理科の授業で解剖はやりましたか?
僕が子どものころはフナやカエルが教材でしたが、
残酷だ、気持ち悪い、あと始末が面倒だと解剖の授業が減っているらしいじゃないですか。
へんなの!
イカは内臓が分かりやすいし、解剖が終わったらおいしく食べられるし、
教材としてはいいと思いますけどね。
というか、授業じゃなくても、家庭で図鑑見ながら調理すれば済む話か。
脊椎動物とは構造がまるで違いますから、イカは面白いですよ。
イカには心臓が3つあります。
いわゆる心臓に加え、左右のエラの付け根に
鰓(えら)心臓というものがあるのです。
以前紹介したようにナマコに心臓はありません。
それなのにイカには心臓が3つもあるなんて!
イカの血液は青色と聞きますが、見たことあります? 青い血。
どうしても見たいというのなら、過酸化水素水をふりかけると
ヘモシアニンが酸素と結びついて、血管が青く浮かび上がるそうです。
イカの口を見てみましょう。
口がカラストンビと呼ばれているのはご存知でしょう。
くちばし状だからそう呼ぶのかと思っていたのですが、
背側の長いのがカラス、腹側の鈎状がトンビなのだとか。
イカは頭と骨だけを残して、きれいに魚を食べます。
鋭いくちばしで肉をちぎり、ヤスリのような歯舌で
細かくすり潰して飲み込むんですって。
素朴な疑問なのですが、どうなんでしょう。
スルメイカとヤリイカの区別って、みなさん、つきます?
(よくわからない、という人は「いいね!」をプッシュ)
僕も自信がないので、一緒におさらいしてみましょう。
なるほどヒレの部分の形が違いますね。
スルメイカは三角でヤリイカは菱形です。
スルメイカは脚がたくましいですな。なかでも触腕が発達しています。
あと眼。
スルメイカは眼球がむきだしですが、
ヤリイカは透明な膜に包まれています。
これは専門用語で開眼性、閉眼性といいます。
軟甲も比べてみましょう。
意外なことにほっそりしているヤリイカのほうが軟甲は幅広でした。
肝心の味の違いですが、ヤリイカのほうが身は柔らかい。
甘味もヤリイカのほうがありますね。
ヤリイカの旬は冬だそうです。
肝はスルメイカのほうがでかいです。
外洋のスルメイカはエサの摂取が不規則なので、
栄養を貯めていると考えられています。
イカの好みは個人、地方で違うようです。
さて、あなたのお好みは?
スルメイカは、日中は海の深いところにいて、
太陽が沈むと海面近くに浮上してくる生き物です。
夏の風物詩でもある漁り火。
沖に煌煌と灯るイカ釣り漁の船。
サンマで紹介した棒受け網漁も光に集まる習性を利用した漁法でした。
近年、棒受け網漁は省エネに向けて集魚灯のLED化が進んでいます。
イカ漁の操業コストの3分の1は燃料代だとか。
LED化への取り組みは始まっているのですが、
サンマほどいい結果は得られていなんですって。
自動イカ釣り機でイカを釣るときの疑餌針で
シェアナンバーワンが「オッパイ針」です。
通称ではなく登録商標が「オッパイ針」。
佐世保にある福島製作所のヒット作。
なぜオッパイというネーミングかというと、
イカは触腕をスルスルと伸ばしてタッチしてエサかどうか確認します。
この疑餌針は柔らかいのでイカがエサと勘違いするらしいのです。
「オッパイ針」の商品コピーは
<オッパイのように柔らかいので、イカが抱きついて離さない!
イカ釣り漁業の定番>
しかし、イカがおっぱい好きとはね。
ナイス、おっぱい。
「オッパイ針」には日本海仕様と外国向け仕様があるそうです。
やはり大きさや硬さの好みがあるのでしょうか。
さて、あなたのお好みは?
実際、このオッパイ針の触感はどんなものなのか
試してみたくなるのが人情。取り寄せてみました。
では、触りますよ♡
あ〜、なんかドキドキ〜♡♡
はあ〜、ぷにゅ〜っといい感触♡♡♡
う〜ん、でも、おっぱいなかなあ?
すっかり忘れてしまったからなあ……。
商品化されたのが1969年というから、
ヌーブラよりもずっと昔にこの疑餌針は開発されていたのだなあ。
やや、ヌーブラで思い出したぞ。
巨乳かつ色っぽい唇で一世を風靡した
グラビアアイドルの撮影をしたときのことです。
タンクトップ姿での撮影だったので、ヌーブラを用意したのですが、
おっぱいが大きすぎて胸が段になってしまい、なんか美しくないのです。
う〜ん、困った……。
すると彼女はスタッフの気持ちを察したのでしょう。
「いいですよ」と笑顔でヌーブラをはずし、撮影に挑んでくれました。
さあ、シューティング開始。
BGMの音量アップ、響くシャッター音、
光るストロボ、浮かび上がるなまめかしい肢体。
フォトグラファー、スタイリスト、ヘアメイク、マネジャー…、
スタッフは撮影に集中しています。
でも、僕は気になって仕方がありません。
机の上にはスタッフの飲みかけの珈琲やおやつとともに
はずしたてのヌーブラが無造作に置かれているのですから。
たぶん、おそらく、いやきっと、まだ、ほやほやと温かいであろう……。
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触腕がスルスルスルと伸びた。
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