連載
posted:2022.1.20 from:京都府福知山市、綾部市、舞鶴市 genre:食・グルメ
PR 京都府中丹広域振興局
〈 この連載・企画は… 〉
日本のローカルにはおいしいものがたくさん。
地元で愛されるお店から、お取り寄せできる食材まで、その味わい方はいろいろ。
心をこめてつくる生産者や料理する人、それらを届ける人など全国のローカルフードのストーリーをお届けします。
writer profile
Yumiko Ikeda
池田祐美子
いけだゆみこ●ライター。テイクアウトやお取り寄せをはじめ“飲み&食い”情報を担当。高校時代、自由な校風(だったと思い込んでいる)に恵まれ、昼休みのチャイムとともに自転車をかっとばし、ランチを求めて都内を右往左往したのを皮切りに、日々外食な生活にどっぷりつかっている。
photographer profile
Kenya Abe
阿部ケンヤ
あべけんや●フォトグラファー。東京都三鷹市出身。大学卒業後、渡米。木寺紀雄氏に師事後、独立。雑誌、広告を中心に活動中。
突然ですが、「中丹(ちゅうたん)」と呼ばれるエリアをご存じですか?
京都府の北西部に位置する福知山市(ふくちやまし)、
舞鶴市(まいづるし)、綾部市(あやべし)の3市からなる地域で、
丹後と丹波の真ん中(丹後地方南部と丹波地方北部)にあるから中丹。
JR京都駅から特急で1時間〜1時間半ほどで行けるほか、
府内を南北に走る京都縦貫自動車道と、
福井県敦賀市・兵庫県三木市を結ぶ舞鶴若狭自動車道がクロスする地帯のため、
車でのアクセスにも優れている。
舞鶴港へと続く人工の水路、吉原入江では昔ながらの漁港の風景が残る。
海と山の豊かな自然に恵まれた中丹エリアはまさに食材の宝庫。
とくに、寒さが厳しくなるこの時期はジビエや真牡蠣(まがき)など、
冬の味覚がおいしさのピークを迎える。
京都の中心地からほんの少し足を延ばしただけなのに、
この地だからこそ出合える、
とびきりの山海の幸を巡るプチトリップへナビゲート!
2020年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』の
主人公・明智光秀の丹波平定以来、城下町として栄えた福知山。
福知山盆地を中心にぐるりと山に囲まれた地形で、
冬場は濃い朝霧に包まれることがしばしばある。
猟師歴21年の中島健太郎さん。有名レストランのシェフなどプロの料理人からも信頼が厚い。左は、昨年に狩猟免許を取得した息子の紳之介さん。
福知山市夜久野町(やくのちょう)で〈夜久野ジビエ〉の看板を掲げ、
自ら狩猟をして鹿を仕留め、食肉加工、販売までを手がけているのが、
猟師であり料理人の中島健太郎さん。
オレンジのベストと帽子はハンターの印。健太郎さんは、ジビエや農産物加工品の販売を行う有限会社〈田舎暮らし〉の代表も務める。
今から21年前の2001年、飲食店勤務などを経て
父の農業を手伝うべく就農研修を受けていた際、
畑の作物を食べ荒らす鹿や猪を駆除するために狩猟免許を取ったのが
猟師になるきっかけだった。
猟銃のほかに罠を仕掛けて猟を行う。猟の合間のメンテナンスも怠らない紳之介さん。
「当初は害獣を駆除することが目的でしたが、
環境を守り、食べるための狩猟へとシフトしました。
命を無駄にするのではなく、
きちんとさばいておいしくいただくべきとの思いで、
2013年に食肉処理場であり、加工場である
〈夜久野ジビエ〉をつくったんです」
仕留めた鹿はすぐに血抜きをして食肉処理場に運ばれてくる。内臓処理と解体を担当するのは、中島さんの妹のともこさん。40分ほどで1頭を解体していく。*解体前の汚染防止のため、直腸結紮により衛生管理を徹底。この後、解体処理は吊り下げて行われます。
中島さんが扱うジビエは、京都や東京のフレンチ、和食店などに卸すほか、
ECサイト、ふるさと納税を利用して購入することができる。
一度食べてリピートする人も多く、
「クセがなくて食べやすく、おいしい」「臭みがなくて驚いた」という声が多い。
血抜きがきちんと施された鹿肉は、この通りの美しさ。精肉や加工品の購入は、有限会社〈田舎暮らし〉のサイトから問い合わせできる。
少しでもよい状態のものをおいしく味わってもらうために、
中島さんが大切にしているのが処理スピード。
罠や猟銃で仕留めたら全身に血が回らないようにすぐに血抜きをして、
1時間以内に内臓を取り除くことで鮮度をキープしているのだという。
「何よりも、寒暖の差が激しく肥沃なこの土地自体の力が大きい。
丹波の栗や黒豆に代表されるように、畑で育てる作物だけではなく
野山の芝栗なども栄養価が高いはず。
それを餌にしている鹿がおいしくないわけがないですよね」
鹿肉のロースト、燻製、ハム、低温調理肉などが入った〈健太郎の京都ジビエ〉(6480円)。福知山市のふるさと納税やぐるなびの「接待の手土産」などで購入できる。
実際に狩猟に同行して見学する体験ツアーも随時実施している。
狩猟見学と市内のフレンチ〈ビストロq〉の鹿肉ディナーコースがセットに。
中島さんの取り組みや思いに興味がある人はぜひ!
information
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福知山市役所のほど近く、小高い丘の上にそびえる〈福知山城〉。
明智光秀が丹波平定後に築いた城だ。
山崎の戦いで光秀が羽柴秀吉に討たれた後、
城主が変わりながらも改修や増築を重ね、
江戸の頃には現在まで伝わる城郭ができあがっていたと考えられている。
明治6(1873)年の廃城令により城の大半は失われたが、
1986年、市民の力で再建されて今の姿に。
天守閣内部には、光秀や歴代城主の資料を多数展示。
なかには、光秀が謀反を起こす1年前に記した
「家中軍法」なる貴重な資料も残っている。
information
写真中央、芝生広場を囲むようにして7つのショップが建っているのが〈ゆらのガーデン〉。
〈福知山城〉へと人々を誘う昇龍橋(しょうりゅうきょう)のたもとにあるのは、
約1000平方メートルの芝生広場を囲んで、
7つのショップが並ぶ複合施設〈ゆらのガーデン〉。
揚げパン専門店、焼き肉店、アパレルショップなどがあり、
ティーブレイクやランチをするにも便利なスポットだ。
information
ゆらのガーデン
information
福知山観光協会
TEL:0773-22-2228
Web:ドッコイセ観光ガイド
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福知山市の東、舞鶴市の南に位置する綾部市。
かつては養蚕業が盛んで、日本を代表する
繊維製品メーカー〈グンゼ〉誕生の地として知られる。
また、豊かな自然にも恵まれ、市内にある標高582メートルの君尾山と、
同じく標高201メートルの藤山は、秋から冬にかけて
眼下に広がる雲海を手軽に楽しめるスポットとして人気だ。
〈綾部ふれあい牧場〉オーナーの由良修一さん。
高台に建つ風車が目印の〈綾部ふれあい牧場〉は、
気軽に動物と触れあえると人気のスポット。
入園は無料で、広大な敷地で飼育されている、馬や羊、
ヤギやウサギをのんびりと眺めたり、餌やりもできる。
つやつやとした赤身が美しい鹿焼き肉セット(1400円)。サラダ、焼き野菜、ご飯、漬け物がついている。
牧場内にあるレストラン〈ハイジのキッチン〉で
腕を振るうのは、オーナーの由良修一さん。
地元産をメインに、全国から取り寄せる
おいしい食材を使ったメニューが自慢だ。
なかでも人気なのがジビエを代表する鹿肉料理。
福知山市の猟師・中島健太郎さんから仕入れたものを使っている。
鹿と地元野菜の土鍋シチューセット(1480円)。サラダ、パンかご飯つき。口の中でホロホロとほどける鹿肉が美味。
「クセのないおいしさは、まず焼き肉で味わってほしいですね。
両面を焼いてから塩をつけてどうぞ。
カボチャやニンジンなど地元野菜と鹿肉を、
自家製デミグラスソースで煮込んだ土鍋シチューもおすすめです。
じっくりと時間をかけて柔らかく煮込んだ鹿のスネ肉は、
濃厚な旨みが口いっぱいに広がりますよ」
information
information
第5回森の京都ジビエフェア
ジビエの魅力発信と消費拡大のために2022年2月13日まで開催中。中丹はじめ、京都府内の6市町33店舗で、鹿肉を使ったオリジナルメニューが提供される。この機会にジビエを味わおう!
Web:第5回森の京都ジビエフェア
綾部駅から車で約10分。
由良川近くに、綾部市内で唯一の酒蔵〈若宮酒造〉がある。
前身の〈三丹酒造〉を引き継ぎ、〈若宮酒造〉に社名を変更して、
今年で創業102年を迎える老舗だ。
風格ただよう〈若宮酒造〉の酒蔵は築120年ほど。前身の〈三丹酒造〉からそのまま受け継いだという。
蔵元杜氏の木内康雄さんは、静岡で祖父の代から続く
酒問屋に生まれ育ったが、〈若宮酒造〉の商品を扱っていた縁で、
19年前にこちらの当主になり酒づくりをしている。
蔵の中で、説明してくれる木内さん。昔ながらの、内部を琺瑯(ほうろう)でコーティングした鉄製の貯蔵タンクが並ぶ。
一から酒づくりを学ぶために、丹波の杜氏に2年、但馬の杜氏に5年。
ふたりの杜氏に計7年ついて学び、今年で独立12年目となる。
つくりたい酒に合わせて、仕込み方を変えたり、融合させることで、
〈若宮酒造〉らしい味を出しているという。
酒米を蒸す際に使われる巨大な蒸し器。
〈綾小町〉の銘柄で、約20種類がラインナップ。
なかでも、長年のファンから支持されているのが〈綾部の四季〉だ。
京都産の酒米〈五百万石〉を使った純米原酒で、
力強さはあるもののくどくなく、冷やしても常温でも美味。
ラベルを貼るのも一枚一枚、手作業。
「同じ銘柄でも年ごとに味を微妙に変えるなど、
大手ではできないことができるのが強みだと思っています。
少量生産だからこそできる味わいを楽しんでほしいですね」
左から、〈綾部の四季〉1485円、純米酒1320円、純米吟醸〈綾音(あやね)〉2200円、純米大吟醸2750円(いずれも720ml)。〈綾音〉は、木内さんの娘さんの名前から命名したという。
店頭では、購入の前に試飲ができるほか、
事前に予約をすれば酒造見学も可能だ。
綾部の特産品が揃う〈あやべ特産館〉。
綾部で創業した〈グンゼ〉の歩みを知るだけでなく、
同市の観光情報などを入手できる場として、
人気の複合施設〈あやべグンゼスクエア〉。
同社の歴史やかつて使用していた機械などを展示する〈グンゼ博物苑〉、
綾部の特産品やお土産が豊富にそろう〈あやべ特産館〉、
春と秋に美しいバラを咲かせる〈綾部バラ園〉の3つの施設からなり、
お土産を探したり、休憩スポットとして重宝する。
information
あやべグンゼスクエア
住所:京都府綾部市青野町亀無1-2
TEL:077-43-0811(あやべ特産館)
アクセス:JR綾部駅から徒歩約10分
開園時間:特産館9:00~17:00、博物苑10:00~15:00、バラ園9:00~17:00
休園日:火曜
Web:あやべグンゼスクエア
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京都府の北東部、若狭湾の一部をなす舞鶴湾がある舞鶴市は、
豊富な海産物が水揚げされる流通拠点。
ここでの楽しみは、もちろん海の幸!
天然の真牡蠣や京鰆(きょうさわら)など、冬の味覚を求めて出かけよう。
〈舞鶴湾かき小屋 美味星(おいすたぁ)〉の漁師が勢揃い。前列、右から2人目が代表の濱内喜久男さん。総勢13人が働いている。
最初に訪れたのは、舞鶴港に面して建つ
〈舞鶴湾かき小屋 美味星(おいすたぁ)〉。
冬と夏に期間限定でオープンする牡蠣小屋だ。
12月初旬から3月下旬までの冬季は、
漁師が素潜りでとる2〜3年物の天然真牡蠣が主役に。
養殖が一般的な真牡蠣だけに、
巨大な天然ものが味わえるとあって、府内外から多くの人が訪れる。
舞鶴湾内の岩場で水深2~3メートルのところに群生している天然の真牡蠣。2~3年もので身が大きいものをとってくるという。
漁業用倉庫を改装した店舗に入り、
正方形の鉄板を設置したテーブルを囲むように座ると、
漁師たちがとってきたばかりの牡蠣を殻ごと
鉄板にごろごろと並べ始める。
巨大なふたをかぶせて待つこと約20分。
ふたを開けて湯気とともに現れた蒸し牡蠣を、
端からスタッフが手際よく殻を外していく。
ふたを開けると、アツアツの牡蠣が登場! 磯の香りが一面に広がる。かきは1人前10個で2000円。カキクリームコロッケ(3個、1000円)、カキグラタン(600円)などもある。
蒸したてアツアツの牡蠣は、まずはそのまま何もつけずに食べるのが鉄則。
プリッと膨らんだ身からあふれだす、旨みがとにかく濃い!
ブラックペッパーをミルで挽いてかければ、さらにパンチのある味になり、
ほんの少しレモンを搾れば爽やかに。
難しい殻むきは、スタッフがやってくれるから安心。夏は、天然の岩牡蠣がお目見えするので、また違う味わいが楽しめる。
漁師のひとり、北村俊雄さん曰く
「伊佐津川(いさづがわ)が山から運ぶ栄養分たっぷりの清水が
舞鶴湾に流れ込むことで、牡蠣がおいしくなる。
年が明ければ、雪が降ったあとの雪解け水がさらに加わり、
日に日に身が大きくなっていきますよ」
北村さんによると、旬のはしりである12月の牡蠣はまだ小ぶり。日に日に大きくなっていくとのことなので、年明けに乞うご期待!
information
舞鶴湾かき小屋 美味星
住所:京都府舞鶴市下安久552-6
TEL:080-6166-1158
アクセス:JR西舞鶴駅から車で約5分
営業日:土・日曜、祝日
営業時間:11:00、12:30、14:00、15:30(日曜のみ)、17:00(土曜のみ)、18:30(土曜のみ)。各回70分、完全予約制
Web:舞鶴湾かき小屋 美味星
北陸から山陰にかけて日本海側で水揚げが多い鰆(さわら)は、
身に脂がのり、旨みが増す晩秋から初春にかけてが旬。
京都府漁業協同組合では、府内の定置網でとれた1.5キロ以上のものを〈京鰆〉、
さらに上をいくサイズの、3キロ以上で身の脂の割合が
10パーセントを超えるものを〈特選京鰆〉と認定している。
体育館のような広さの〈舞鶴港とれとれセンター〉。
そんな〈京鰆〉を手軽に味わうなら、
舞鶴港のすぐそばにある〈舞鶴港とれとれセンター〉へ。
鮮魚店3軒、かまぼこ店、土産物店、寿司店など、
8店舗が軒を連ねる道の駅で、仲買人の資格を持つ店主が
市場で競り落としたばかりの鮮魚がわずか数十分で店先へと運ばれてくる。
道の駅の理事長を務める〈魚たつ〉の会長・藤元達雄さん。「ここにきたら〈京鰆〉をぜひ食べてほしい。脂のおいしさ、身の甘さに驚きますよ」
大きいものだと1メートル以上にもなる〈京鰆〉(写真左)。1尾のサイズが大きいため、半身や切り身になっていないときに対応してもらえるかは各店で応相談。
ここでの楽しみは、店頭で選んだ鮮魚をその場で調理してもらい、
共有スペースですぐに味わえること。
たとえば、アオリイカの身は刺身にしてゲソを焼いてもらったり、
寿司店で購入した酢飯に、鮮魚店の刺身盛り合わせを載せて
ちらし寿司にすることもできる。
場内にある〈とれとれ寿司〉で、酢飯(300円)を買って、好きな刺身をトッピング! 赤だしは150円。
〈京鰆〉が並んでいたら、
迷わず注文して刺身やあぶりで味わうのがオススメ。
身が柔らかく繊細な鰆は傷みが早く、
水揚げ地から遠くなればなるほど生で味わうのが難しくなる。
一般的な西京漬けや干物とはひと味違う、
新鮮な風味を堪能するためだけにでも、
舞鶴を訪れる価値はあるのだ。
淡泊ながらもしっかりとした旨みを持つ身は、
口の中でネットリととろけていくような感覚。
ワサビ醤油が一般的だが、塩やポン酢で食べると
脂の甘さをしっかりと味わうことができる。
場内では、しこしことした食感と魚介の旨みが詰まった名産品の〈舞鶴かまぼこ〉を買うことも。お土産にどうぞ。
冬が旬のジビエに海の幸。
このエリアならではの食材を求めて、中丹へ。
あなたの知らない京都府の“美味”が待っている。
information
舞鶴港とれとれセンター
住所:京都府舞鶴市下福井905
TEL:0773-75-6125
アクセス:JR西舞鶴駅から車で約5分
営業時間:9:00~18:00(平日~17:00)
定休日:水曜、ほかに不定休あり
Web:舞鶴港とれとれセンター
国内で現存するれんが建造物のなかでも貴重な近代化遺産の建造物群。
舞鶴市内には、明治期から大正期にかけて建設された
赤れんが建造物が数多く残っている。
もともとは、海軍の軍需品保管庫として使われていた倉庫で、
観光交流施設として2012年にオープンしたのが〈舞鶴赤れんがパーク〉。
全12棟のうち8棟が国の重要文化財に指定され、
舞鶴の歴史を知るための展示、多目的ホール、カフェなどに利用されている。
海軍のレシピを再現したレトルトカレーや、
海上自衛隊のグッズなどお土産品も人気だ。
information
information
海の京都DMO
TEL:0772-68-5055
Web:海の京都オフィシャルサイト
*価格はすべて税込です。
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