colocal コロカル マガジンハウス Local Network Magazine

連載の一覧 記事の検索・都道府県ごとの一覧
記事のカテゴリー

連載

楽しみながら体験できる「醤遊王国」
埼玉・弓削多醤油

醤油ソムリエール黒島慶子の
日本醤油紀行
vol.017

posted:2014.11.26  from:埼玉県坂戸市/日高市  genre:食・グルメ

〈 この連載・企画は… 〉  小豆島の「醤(ひしお)の郷」と呼ばれる地域に生まれ、蔵人を愛する醤油ソムリエールが
真心こもった醤油造りをする全国の蔵人を訪ねます。

writer's profile

Keiko Kuroshima

黒島慶子

くろしま・けいこ●醤油とオリーブオイルのソムリエ&Webとグラフィックのデザイナー。小豆島の醤油のまちに生まれ、蔵人たちと共に育つ。20歳のときに体温が伝わる醤油を造る職人に惚れ込み、小豆島を拠点に全国の蔵人を訪ね続けては、さまざまな人やコトを結びつけ続けている。

埼玉で選ばれるいい蔵元

その名も「醤遊王国」。
聞くだけで惹かれる王国が埼玉の弓削多(ゆげた)醤油にあるという。
「醤油の楽しみが一部屋にぎゅっと詰め込まれていた!」
「社長さんが人当たりのいい誠実な人で、すっかりファンになって使い続けているよ」
という声を、何人の主婦から聞いてきたことか。
醤油業界でも自然食品関係者のあいだでも
弓削多醤油社長・弓削多洋一さんの名前はよく挙がる。
マイナスなことは一度も耳にしたことがない。
何度も聞く好評から、自然と湧いてくる親しみを胸に
「醤遊王国」という王国を訪ねました。

「醤遊王国」では無料で木桶で仕込んだもろみを搾る体験ができ、有料で搾った醤油を持ち帰ることができる。(写真提供:弓削多醤油)

兄弟二人三脚で造る

「蔵人」というより「紳士」。
「人当たりのいい誠実な人」という噂に、
一目で納得する弓削多さんが爽やかに迎えてくれました。
「王国」の名にふさわしい気品あふれる方で
てっきり営業や経営を専任しているかと思いきや
「たしかに営業や経営は僕がやっていますが、麹造りも僕が担当しています。
麹の様子を見ながら、小麦粉が降りかかっている電話に出ていますよ」
というのだから驚き。
経営しながら汚れる製造現場も担っているとは。

50石(1石=1000合)の桶を15本。30石の桶を14本。
業界全体から見ると桶で造る醤油の量だけで多いと言えるところ
「桶はわずかで多くはタンクで仕込んでいます」というのだから相当生産量があります。
造り酒屋の「オーナー杜氏」のように、社長が冬は麹造りに専念し、
夏に営業に打ち込む態勢ならわかるけれど、
「1年中麹を造っています」というのだから、休む間もないに違いありません。
それでも「造りをやっていたほうが、人と話す時に伝わりますから」と
醤油造りにおいて最も重要といわれる工程「麹造り」を社長自ら担っているのです。

このような態勢ができているのは、支える社員あってのことですが、
なかでも弟・真寿さんの存在が大きい。
「品質を弟さんが見てくれていますから」
社員が話す言葉は真寿さんへの信頼を物語っています。
「いい麹あってのいい醤油です」と、真寿さんは兄を立てつつ
日々いい製造ができているかを見定め、対応していることで、
満足のいく醤油ができているのです。

麹は社長自らが責任を持って造る。

「地元で育った材料が、地元の人の体にも合うと思いますから」と、地元の材料も積極的に使う。

お兄さんの弓削多洋一さん(右)と、弟の真寿さん(左)。二人三脚で醤油を造る。

人との絆を育む「醤遊王国」

こうしてできたいい醤油を、一般の人でも気軽に楽しく体験できる場が「醤遊王国」。
一部屋に醤油を楽しめる要素を盛り込んでいます。
ガラス越しに見える木桶で仕込んだもろみを搾って味わい、
さらに持ち帰ることができるという、まさにここに来ないとできない
体験や味わいがあったり、醤油を使った食事やスイーツも堪能できます。
「関東の蔵元から視察も多いですよ」というほどの注目度。

また「醤遊王国」は現場に来ないと体験できないことにこだわっています。
行かないと手に入らない「しぼりたて生醤油」は、
その名の通りまさにもろみを搾ったばかりのもの。
加熱もろ過もされておらず、流通に出せないレアなものです。
「澱(おり)」という大豆や小麦から出る、醤油にならない固形物も入っていて
これがおいしさの要素になっているのは新鮮。ほかの蔵でも見たことがないです。

「目指すのは、埼玉でいい醤油について思い巡らせたときに選ばれること。
昔もいまもお客様の多くが地元の人です。
地元の食に根ざしているので、造る醤油の9割9分が濃口醤油。
お米と合う味わいの深い醤油だと言われます」
長年地元の人に愛される醤油屋としてきてやってきて、
9年前から一段と、人との絆を大切にしようと、
気軽に見学・体験ができる「醤遊王国」を開設したのです。
社員の蔵案内は、蔵見学に慣れた私でも満足できるほど熟練されたもの。
「来た人の口コミで広がっています」という弓削多さんの言葉にも納得します。

卵かけご飯の食べ方を豊かなバリエーションで紹介。

醤油ソフトクリーム。関東で初めてつくったのが弓削多醤油。

売店からガラス越しで醤油が造られている様子が見える。手前のボタンは見たい桶を照らすもの。

「しぼりたての生醤油」はなんと澱まで入っている。ここまでの搾りたてを販売している蔵元はほかに知らない。

まだ菌の生きている醤油を販売

家に帰って、搾ってから加熱もろ過もしていない、
菌が住んでいる醤油「吟醸純生しょうゆ」を楽しみました。
醤油業界では通常、ろ過をした醤油を流通させます。
生きた醤油の菌がいると品質が変化しやすく、
また醤油が発酵して蓋が飛ぶ恐れがあるためです。
しかしながら「抗生物質耐性菌から身を守る方法として、
菌が生きている醤油を日常的に使用したい」というお客様の要望に応えて、
業界では極めて珍しく菌の生きている醤油の販売に力を入れています。
健康面から、そしておいしさからもそんな要望があるといいます。

醤油を味わうと、すっと塩味が効いた後に、濃厚な甘みと旨みが広がります。
かけると優しく甘さが包み込み、火にかけると
一段と食欲をそそる香りを高く出してくれます。
この味わいや香りは一般に流通する醤油ではなかなかなく、
料理をつくった翌日は、今度は何をつくろうかという楽しみが湧きます。
色も品があり、きれいな仕上がりに。

まさにホスピタリティ溢れた社長から出た醤油だな、と調理しながら実感。
弓削多さんの人柄、そして「醤遊王国」の内容、出てくる醤油。
すべてが一貫して気持ちよく楽しませてくれるもの。
使えば使うほど、弓削多さんを好きになる。
リピートしたくなる主婦の気持ちが、使っていてわかりました。

菌の生きている醤油「吟醸純生しょうゆ」が要冷蔵で販売されている。有機JAS認証の材料で仕込む「有機しょうゆ」も弓削多醤油を代表する醤油。

白菜の浅漬けにひとかけ。甘味がぐっと引き立ちます。

いままでで一番おいしい炊き込みご飯が炊けました! お出汁の香りも食材の繊細な風味も色もいかしてくれます。

information


map

弓削多醤油株式会社

住所:埼玉県坂戸市多和目475
TEL:049-286-0811
http://yugeta.com/

information


map

醤遊王国

住所:埼玉県日高市田波目804-1
TEL:042-985-8011
営業時間:9:00〜17:00
http://yugeta.com/oukoku/

Feature  これまでの注目&特集記事

    Tags  この記事のタグ