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少ない食材でも旨みは十分。
群馬〈おっきりこみ〉
アレンジレシピ

日本列島カンタン郷土食
vol.021

posted:2016.7.5   from:群馬県  genre:食・グルメ

〈 この連載・企画は… 〉  地域ごとにさまざまな郷土料理がありますが、なかなか食べないし、伝えられていない。
コロカルはそれをちょっと心配してました。そんなときに郷土料理を後世に伝える全集が編集部で話題になり。
これを教科書に、いろんな人ともつながって、郷土料理を身近にする連載をしよう!ということに。
料理人・後藤しおりさんがアレンジした、家庭でおいしくカンタンに作れる郷土料理を、都道府県別に紹介していきます!

profile

Shiori Goto
後藤しおり

ごとう・しおり●実家は寿司屋を営む。ブータン料理店、野菜料理店などを経て、2012年7月に独立。世田谷を拠点にケータリング、ロケ弁、出張料理人として活動。不定期でアトリエでイベントなども行う。
http://gotoshiori.com/

photographer profile

Tetsuka Tsurusaki
津留崎徹花

つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。『anan』など女性誌を中心に活躍。週末は自然豊かな暮らしを求めて、郊外の古民家を探訪中。コロカルで『美味しいアルバム』も連載中。

writer profile

Yu Ebihara
海老原 悠

えびはら・ゆう●コロカル編集部エディター。生まれも育ちも埼玉県。好きな郷土料理は「群馬のおきりこみ」。麺好き、自炊派。

しおり流手打ちうどんは、
面倒なことはいっさいナシのお手軽レシピ!

上州名物からっ風が吹く群馬は、養蚕と小麦、雑穀がなりわいの柱。
二毛作での小麦の生産量が多く、粉もの料理の多彩さは国内随一です。
養蚕の忙しい時期でも、さっとつくって栄養もとれる麺料理が発展したのは
必然的でもあったのです。

『聞き書 群馬の食事』でもさまざまな麺料理が紹介されていますが、
特に「うどん」の種類の多さには驚きます。

たかがうどんと言うことなかれ。
引き上げうどんに、ひもかわうどん、水沢うどん…… 
麺と汁の組み合わせでこれほどバラエティ豊かだとは!

今回、料理人・後藤しおりさんが『聞き書 群馬の食事』から選んだ料理は、
〈おっきりこみ(おきりこみ)〉。
幅広のもっちりとしたうどんに、野菜や肉をたっぷり入れ、
味噌や醤油などで味つけして煮込む、群馬を代表する郷土食です。

冷房の効きすぎなどで自律神経と胃腸が弱りがちなこの季節、
お部屋でゆっくりとおっきりこみをすするのもいいですね。

おっきりこみのもっちりとした食感は、
麺に塩を入れない、もしくは少量しか入れないため。
また、普通のうどんに比べて加える水の量も少ないため、
ツルツルで噛みごたえのある食感が出て少量でも満腹になりそうです。

さて、しおりさん。まずは麺打ちをします。
麺を打つと言っても身構えることなかれ。
しおりさん流の簡単アレンジで少ない材料で失敗することなく打てます。
さらに、今回はうどん踏みも省略。

「うどんを打つって言うと緊張するんですが、
おっきりこみは“おっきりこみだから大丈夫”っていう
おおらかさがありますよね」としおりさん。

それは、おっきりこみの語源にも表れています。
おっきりこみは、こねたうどん生地をへらの上に乗せ、
直接鍋の中へと「切り込む」調理法からきていると言われています。

養蚕の忙しい時期でも手早くつくれて、
ひと碗で食事が済ませられるように、と生まれたおっきりこみは
まさに群馬の日常食。
切った太さが均一でなくても気にしないというのは
うどん打ち初心者でもうれしいですね。

うどんが自由ならば、入れる具材も自由。
好きなものや冷蔵庫の余りものでOKです。

「根菜類なんかもいいですね」としおりさん。

「とにかく気軽につくってほしい!」ということなので、
今回は具材を少なめに、おだしと手打ちのうどんの味わいをいただく、
基本のレシピをご紹介します。

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最小限の材料でOK。しおり流おっきりこみのレシピはこちらから

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★群馬 おっきりこみ(2人前)

材料

薄力粉 … 130g

強力粉 … 70g ※薄力粉と強力粉は、地粉200gでもOK

ぬるま湯 … 90ml

塩 … 小さじ2

だし … 630ml(昆布と鰹でだしをとる。煮干しなどお好みのものでOK)

味噌 … 大さじ3

しいたけ … 4個

油揚げ … 1枚

白ねぎ … 4分の1

1. 薄力粉と中力粉、塩をボウルに入れ、菜箸でかき混ぜながらぬるま湯を少しずつ加える。

2. ぬるま湯をすべて加え、粉っぽさがなくなったら手でこね始める。手のひらの腹を使って体重をかけながら力強くこねる。

3. ひとまとめにして、濡らした布巾やさらしに包んで30分ほど寝かせる。こねて寝かせての作業を2回繰り返す。

4. まな板に多めに打ち粉(薄力粉/分量外)をし、綿棒で0.5センチほどの厚さにのばす。

5. のばした麺を3つ折りにして、1〜1.5センチ幅くらいに包丁で切る。この太さがおっきりこみの特徴。切ったら麺同士がくっつかないように打ち粉をする。すぐに食べない分は密閉した袋に入れ、冷蔵庫で保存。

6. 沸騰したお湯で麺を茹でる。具材と同じ鍋で下茹でなしでつくってもいいが、手打ち麺は打ち粉が多いため、汁があんかけのようになってしまう。一度別の鍋で茹でることで麺の風味やツルツルモチモチとした食感やだしの味が際立つ。

7. だしに4つ切りにしたしいたけ、油抜きをし、太めの短冊切りにした油揚げを加えてひと煮立ちさせる。

8. 味噌で味を整えて、沸騰直前に茹で上げたうどんを加える。

9. 盛りつけて、小口切りに切った白ねぎをあしらってできあがり。七味を振りかけてもおいしい。

一度麺を茹でてから、だしと合わせて煮ているので、
誰でも食べやすいしおりさん流おっきりこみ。
味噌で煮込んでいてもすっきりとした味わいです。

たっぷりつくっておいて翌日煮返したおっきりこみは、
だし汁がしみてまろやかな味わい。
くたっとした野菜や、だしを吸った手打ち麺のいっそう柔らかくなった食感は、
ご飯とも合いそうです。

しおりさん、おっきりこみはいかがでしたか?

「『聞き書 群馬の食卓』を読んで、
幼いころからけんちん汁に慣れ親しんでいたことを思い出し、
どこか懐かしく思いながらつくりました。
このおっきりこみも、さっとつくれるので日常食として取り入れたいですね。
あくまでも、手打ち麺が主役なので具材はシンプルに。
まずは2種類ほどの食材でつくるのがおすすめですね」

みなさんもぜひお試しください。

書籍情報

『日本の食生活全集10 聞き書 群馬の食事』

著者:「日本の食生活全集 群馬」編集委員会 
出版:農山漁村文化協会(農文協)

日本の食生活全集とは:おばあさんからの聞き書きで、各県の風土と暮らしから生まれた食生活の英知、消え去ろうとする日本の食の源を記録し、各地域の固有の食文化を集大成する書籍。四季の食事に加えて、救荒食、病人食、妊婦食、通過儀礼の食、冠婚葬祭の食事等を記録している。

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