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山形の郷土食。
炊飯器でできる
〈三五八漬〉と〈おかやつめ〉

日本列島カンタン郷土食
vol.019

posted:2015.10.14  from:山形県  genre:食・グルメ

〈 この連載・企画は… 〉  地域ごとにさまざまな郷土料理がありますが、なかなか食べないし、伝えられていない。
コロカルはそれをちょっと心配してました。そんなときに郷土料理を後世に伝える全集が編集部で話題になり。
これを教科書に、いろんな人ともつながって、郷土料理を身近にする連載をしよう!ということに。
料理人・後藤しおりさんがアレンジした、家庭でおいしくカンタンに作れる郷土料理を、都道府県別に紹介していきます!

profile

Shiori Goto
後藤しおり

ごとう・しおり●実家は寿司屋を営む。ブータン料理店、野菜料理店などを経て、2012年7月に独立。世田谷を拠点にケータリング、ロケ弁、出張料理人として活動。不定期でアトリエでイベントなども行う。
http://gotoshiori.com/

photographer profile

Tetsuka Tsurusaki
津留崎徹花

つるさき・てつか●フォトグラファー。東京生まれ。『anan』など女性誌を中心に活躍。週末は自然豊かな暮らしを求めて、郊外の古民家を探訪中。コロカルで『美味しいアルバム』も連載中。

writer profile

Yu Ebihara
海老原 悠

えびはら・ゆう●コロカル編集部エディター。生まれも育ちも埼玉県。好きな郷土料理は「群馬のおきりこみ」。麺好き、自炊派。

郷土食を日本の隅々から掘り起こし、記録した名著
『日本の食生活全集』全50巻(農文協)から
料理人・後藤しおりさんが現代の家庭でもおいしく
カンタンにつくれるよう再現したレシピをお届けしている本連載。
ぜひ一緒につくってみましょう!

野菜の旨味を上手に引き出す、山形の郷土食

日に日に秋も深まってきました。
寒さを増すごとにぐっとおいしくなってくる野菜の味そのものを生かしつつ、
毎日食べても飽きないように調理する知恵が、郷土食にはあります。
特に、秋冬は“食材の保存”という役目を持ったレシピが目立ちますが、
雪深い山形でも、漬け物や乾物などは秋冬の郷土食レシピの主役級。

『日本の食生活全集 聞き書山形の食事』でも、
かぶ漬けや、おみ漬け、青菜(せいさい)漬けなど、数多くの漬け物が紹介されています。
また、山の国であり、川の国である山形の食は、
食材の幅の広さと調理法の奥行きの深さが特徴。
山形県の背骨、月山・湯殿山・羽黒山の出羽三山は修験道の山として知られており、
修験者がつらく厳しい修行中、食の制限が多いなりに、
知恵と工夫をこらして食事をしていたことと関係あるのでは、と書かれていました。

今回、後藤しおりさんに教わるのは、
山形の郷土食にして保存食〈三五八漬(さごはちづけ)〉と
箸休めにぴったりな〈おかやつめ〉の再現レシピです。
どちらもお好みの野菜にひと手間かけるだけで、ついつい手が伸びるおかずに大変身。
もう一品食べたいというときのために常備しておきたいですね!

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それでは、三五八漬をつくってみましょう!

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塩3:米5:米麹8。炊飯器でできる〈三五八漬〉の床

塩3:米5:米麹8の割合で床をつくるから三五八漬。
「塩麹で野菜を漬ける」と言えばなんとなくその味が想像できるのではないでしょうか。
山形だけでなく、しおりさんの故郷の福島や秋田など東北の幅広い地域でつくられています。
にんじん、なす、大根などの漬け物の定番野菜のほかに、
秋田ではハタハタ、日本海側ではイカなど、地域や家庭によって漬けるものも異なります。
山形では郷土食の青菜漬けで使われる青菜を、三五八漬にする家庭もあるのだとか。
「一度この連載で三五八漬を紹介したいと思っていました!」としおりさん。
満を持してのレシピ登場です。

福島県出身のしおりさんにとって、三五八漬は“家庭の味”そのもの。
しおりさんの麹好きは、三五八漬の影響だったのですね。

「上京するまでぬか漬けを食べたことがなかったくらい!
いつも食卓には三五八漬があって、おやつ代わりにもポリポリと。
三五八漬で育ったといっても過言ではないでしょうね」と、しおりさん。
しおりさんの実家では野菜の端切れなども余すことなく床に入れていたそう。
「麹の自然な甘さがいいですよね。野菜をサラダ感覚でたくさん食べられます」

今回は、旬のサンマも漬けました。魚も漬け物に!?
「半日から1日漬け込んで焼きます。
塩分が均等につくので、塩焼きよりも塩味がまろやかで安定したおいしさになりますよ」
ぱりっと両面を焼かれたサンマは、麹の力で旨味が引き出され、
舌触りはしっとり。脂の抜けもいい。
「三五八で漬けると身が締まってほんとにおいしいですよね!」
としおりさんも満足のようでした。

漬けていた野菜を取り出すときの、宝物を探すようなわくわく感もまた一興。
取り出し忘れてもぬか漬けのように漬かりすぎて酸っぱくなる心配もありませんし、
毎日手を入れてかき混ぜなくてもいいという手軽さも魅力なのです。

しおりさんの実家では三五八の床をつくるのに土鍋を使っていましたが、
土鍋よりももっと身近な炊飯器でできないかな? としおりさん。
試行錯誤の末に、レシピを考えてくれました。

★山形 三五八漬(さごはちづけ)

材料

米 … 1合(180cc/125g)

米麹 … 200g

塩 … 40g

お好みの野菜や肉、魚(今回は、カブ、キュウリ、サンマ)

他の地域では、塩3:米麹5:米8の割合でつくることもあるそう。
『聞き書 山形の食事』では、麹が多めで紹介されています。
しおりさんのレシピは塩が少なめですが、長く漬けるとしっかりと塩分が浸透します。
この分量を元に、お好みの味に調整してください。

1. 一晩浸水させた米と270ccの水(米に対して1.5倍の水)で固めのおかゆを炊く。炊飯器のおかゆモードを使ってももちろんOK。

2. 人肌より温かい程度の温度にしたおかゆに、砕いた米麹を混ぜる。

3. 炊飯器で10時間(一晩)保温状態にし、途中、2、3度混ぜる。炊飯器は、ふたを開けたままの状態にし、乾燥防止のためにお釜の上に濡らしたさらしをかぶせておく。(しおりさんは業務用の大きな炊飯器を使っていますが、家庭用の炊飯器でも問題なくできます)

4. 発酵させた米と麹を保存容器に入れて、塩を混ぜ、2週間ほど寝かせる。

5. できあがった床にお好みの野菜や肉、魚を漬け込み、半日から1日漬かったらできあがり。野菜は、穴や切り込みを入れ床の塩分や旨味が浸透しやすいように下ごしらえし、サンマは、切れ目を入れてさらしを巻いた状態で床を塗る(サンマが直接床に触れないようにする)と、いい塩梅に。

同じ床で3回くらいまでは漬けられますが、だんだん塩分がなくなってきます。
床をつくっては継ぎ足してを繰り返せばずっと使えるのは、ぬか床と一緒ですね。
けれど、床が馴染むまで2週間はかかるので、ちょっとつくってまた継ぎ足すのでは面倒。
しおりさんは一度に大量の三五八の床を仕込んで、
漬けるための保存容器に少しずつ移し替えているそうです。
また、三五八の床は調味料としても優秀。
塩麹のように、野菜炒めやチャーハンの味つけなど幅広く使えます。

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〈おかやつめ〉ってどんな料理?

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夏のなごりと冬の訪れをひと串に。
ミョウガとごぼうの〈おかやつめ〉

野菜を食べたいと思ったときに、まず、
“炒める”“ゆでる”“蒸す”という調理法を考えますが、
“串にうって焼く”なんてなかなか思い浮かべません。
おかやつめのいいところは、手軽なのにお客さんに出せるくらい
野菜をランクアップさせてくれるところ。
茹でたごぼうを串にうって焼くお手軽レシピの郷土食なのですが、
「今日はいいミョウガが手に入ったから」としおりさん。
今回は夏のなごりの小さなミョウガもおかやつめにしました。

このおかやつめ、調べたところ山形以外ではほぼ馴染みがない様子。
大神宮さま(庄内の皇大神社)の春と秋の祭りには必ずつくるごちそうなのだそう。
川に生息する“やつめうなぎ”と、ごぼうが採れる時期が一緒なので、
ごぼうをやつめうなぎに見立て、
陸のうなぎという意味で“おかやつめ”と名づけられたのだそうです。

野菜の串焼きと違うところは、表面に油を塗ること。
油によって引き出された香ばしさと満足感は、日本酒のアテにもぴったり。
さらに、油を塗ることで水分の蒸発が防げ、ごぼうがホクホクとした食感に。
しおりさん特製のゆずみそとの相性もよく、
噛めば噛むほど香り広がるごぼうと
鼻に抜ける辛みのミョウガのコンビネーションはとてもクセになる味わい。

ごぼうは秋から冬が旬とされていますが、
しおりさんは初夏の香り高く柔らかい新ごぼうも好きなのだそう。
「今の季節は大分産のサラダごぼうもいいですね」とうれしそうに話してくれました。

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簡単なのにごちそう感がある、おかやつめのレシピ

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★山形 おかやつめ(2人前)

材料

ごぼう … 2分の1本

ミョウガ … 10個

菜種油 … 適量

酢 … 大さじ2分の1

竹串 … 4本

ゆずみそ

青ゆず … 4分の1個

みそ … 大さじ1と2分の1

ゆず皮 … 少々

1. ごぼうの下ごしらえ。ごぼうは包丁の背で皮をこそげとり、縦に半分に切って、酢を加えた湯で金串が通るまで茹でる(太さにもよるが3〜5分ほど)。茹ですぎには注意。

2. ミョウガは大きければ縦半分にカットして竹串に刺す。金串であらかじめ竹串を通す穴をあけておくと便利。

3. 食べやすくするためと、味を染み込ませやすくするために、茹でたごぼうは熱いまま叩く。半分に裂き、適当なサイズに切りそろえ、竹串に刺す。

4. 食材がくっつかないように、網をよく熱する。ごぼう串、ミョウガ串にそれぞれ刷毛で菜種油を塗って網で焼く。焦げ目がついたら引き上げる。

5. 青ゆずとみそを合わせてゆずみそに。最後にゆず皮を少々添えてできあがり。ゆずみそをこってり塗って召し上がれ!

「郷土食のなかでも、油を野菜に塗って串で焼くっていう調理法が斬新だなと思って
やってみたかったんです。串に刺すことでごちそう感もありますよね」としおりさん。
芳醇なごぼうの香りとともに、季節の味を噛み締めてください。

しおりさん、山形・東北の郷土食はいかがでしたか?

今回で東北の郷土食レシピはラスト。しおりさん、東北の郷土食はいかがでしたか?
「東北出身なので、自分の身体に馴染みやすいものばかりでした。
寒い地域独特の冬の間の食事の知恵がたくさん詰まっているなと感じましたね」
今ほど調味料や食材が出回っていなかった時代の、限られた食材と調味料で、
毎日の食事を楽しみ、自然に感謝する心がとても印象的だったのだそう。
「シンプルな調理方法で旬のものを活かした、滋味あふれるお料理。
とても勉強になりました!」

次回は、栃木の郷土食です。
国内生産量No.1のあの食材を使います!

書籍情報

『日本の食生活全集6 聞き書 山形の食事』

著者:山形の食事編集委員会編 
出版:農山漁村文化協会(農文協)

日本の食生活全集とは:おばあさんからの聞き書きで、各県の風土と暮らしから生まれた食生活の英知、消え去ろうとする日本の食の源を記録し、各地域の固有の食文化を集大成する書籍。四季の食事に加えて、救荒食、病人食、妊婦食、通過儀礼の食、冠婚葬祭の食事等を記録している。

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