連載
posted:2023.10.31 from:千葉県佐倉市 genre:食・グルメ
PR 宝酒造
〈 この連載・企画は… 〉
酒ライター岩瀬大二さんが、全国のまちで思わずその場で缶を空けたくなるほど魅力的な「焼酎ハイボールのお供」を見つけます。
“お供”とはご当地グルメに限らず、風光明媚な景色や地域の方々との対話なども立派な酒のアテ!
焼酎ハイボールを通してそのまちの多面的な魅力を発信していきます。
editor’s profile
Daiji Iwase
岩瀬大二
いわせ・だいじ●国内外1,000人以上のインタビューを通して行きついたのは、「すべての人生がロードムーヴィーでロックアルバム」。現在、「お酒の向こう側の物語」「酒のある場での心地よいドラマ作り」「世の中をプロレス視点でおもしろくすること」にさらに深く傾倒中。シャンパーニュ専門WEBマガジン『シュワリスタ・ラウンジ』編集長。シャンパーニュ騎士団認定オフィシエ。「アカデミー・デュ・ヴァン」講師。日本ワイン専門WEBマガジン『vinetree MAGAZINE』企画・執筆。
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撮影:黒川ひろみ
焼酎ハイボールとともにどこまでも。
今回訪れたのは千葉県佐倉市。
東京方面から京成本線に乗車して約1時間。
もうすぐ成田というあたりに広がる佐倉の地は、
都心のベッドタウンでありながら、田舎の田園風景と、印旛沼の自然に、
江戸の面影が残る武家屋敷に城址公園と、
東京からの日帰りスポットとして昔からよく聞く地名。
昭和でいえばミスターこと長嶋茂雄さんの出身地としても知られた場所だ。
とはいえ、赤提灯、酒場で知られた場所でもないし、
活気づく商店街として有名なところでもない。
では焼酎ハイボールのアテのねらい目は?
それは“きのこ”。
前回の呑み鉄・天浜線編で食べたお弁当。
大ぶりのしいたけである“どんこ”との相性が忘れられず、
だったら、素材そのものを入手して、いろいろな相性を試してみるのはどうか?
という欲が高まってしまったのだ。
タイミングよく、秋の行楽シーズン。
訪れたのは〈佐倉 きのこ園〉。
きのこ狩り体験ができるうえ、その場で炭火バーベキューができる……
と、ここまではありそうなのだけれど、
うれしいのがお酒など飲み物の持ち込みが可能なプランがあること。
もちろん冷やした焼酎ハイボールを、
いつもの小さなクーラーバックに入れて向かう。
きのこ狩り&その場で即、セルフ酒場を楽しむとしよう。
佐倉 きのこ園に到着。きのこの狩場はふたつの大きなハウス。
これらは菌床(きんしょう)という方法で栽培されている。
ブナ、ナラ、クヌギなどの広葉樹の木材チップをおがくず状にして、
米ぬか、フスマ、コーンブランを栄養として加えたものに、
きのこの菌を植菌して栽培するのだという。
きのこ栽培は湿度や気温といった栽培環境の性質上、
「害虫やカビとの戦い」の側面がある。
つい農薬に頼りたくなってしまいそうだが、
“安心・安全でおいしいきのこ”づくりのために、
害虫やカビも手作業で取り除いているとのこと。
今日、狩れるのはお目当てのしいたけに加えてきくらげ。
シーズンによって狩れるきのこの種類は変わる。
きのこ園2代目で園長代理の齋藤大地さんの案内で、
いざひとつ目のハウスの中へ。まずはしいいたけから。
想像していたより清潔感があり、なにやらSF映画のセットのようで、
でも、ちゃんと土と水ときのこの混じったような、
野生の匂いも感じられる。思ったより明るい雰囲気もいい。
「今日はあのあたりに大ぶりのいいものがありますよ」
という齋藤さんのありがたい案内で奥のほうへ。
確かに、素人目線でも大ぶりの立派なしいたけがニョキニョキと。
きのこは人間と同様、酸素を吸い二酸化炭素を吐いて生育する。
ハウスの中の環境でも、淀んだ空気を吸わせないように、
定期的に換気を行い、新鮮な空気を取り入れる。
ハウスも入り口側と奥では湿度が異なるので、
きのこの状態を見ながら、水やりの頻度などを調整している。
この丁寧さがあって、健やかなきのこたちは育つのだ。
はさみを握っていざカット。
ずっしりとした重量感。思いのほか大物感あり。
「結構、しっかり重く感じられるでしょう?
実はしいたけの8割から9割は水分なんですよ」と
笑顔の齋藤さんに、思わず「えっ⁉」と反応。
「ですから、良質な水はきのこづくりには必須。
この水があるから、この場所を選んだんです」と齋藤さん。
こちらでは地下50メートルからくみ上げる、水質検査済みの天然水を使用。
研究室のようなハウスがあれば、場所はどこでもいいのかな?
と思っていたのだけれど、“ここであること”の理由があった。
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徐々に収穫体験に夢中になってしいたけときくらげを、
ちょっと欲張ってゲット。バーベキューガーデンへ向かおう。
その前にショップで肉、野菜に椎茸ソーセージも追加。
「きくらげはバター醤油のホイル焼きがいいですよ」
という齋藤さんのおススメにのって、
少量から購入できる、バターやニンニクなどの味変アイテムも購入して準備万端。
さあ、いよいよ実食! の前の一杯が格別だったりする。
炭火と炭火で熱されて滋味が漂い始めたしいたけの香りで、
まずは焼酎ハイボールをぐいっとひと飲み。
たいした労働もしてないけれど初体験だった
しいたけ&きくらげの収穫は、なんだか充実感があったのだ。
ここで齋藤さんが様子を見に来てくれたので、焼けるまで、
きのこ園の成り立ちや、こだわりなどを聞いてみた。
「当園は、94年、私の父である現園長が開設しました。
元々地元佐倉の専業農家の8代目でしたが、当時はサラリーマン。
漠然と、何かの社長になりたいとか思っていたようで(笑)」
そこで出合ったのが県内のあるしいたけ栽培者。
まさかの衝撃のうまさで、これだ! と一念発起。
「でもこのしいたけに出合う前は、父は大のしいたけ嫌いだったんです」
と齋藤さんは笑顔で裏話。人生の大転換。
自分の目指すしいたけ栽培に向かって、
試行錯誤を繰り返し、1994年開業。
それ以降も苦労の連続、廃業という言葉がよぎる日もあったようだが、
「こんなにおいしいしいたけは初めて」や、
「しいたけ嫌いだったのに、むしろ好きになった」の声を励みに、
ここまでたどり着いたとのこと。今やしいたけ大好きの伝道師。
人がなにかと出合うタイミング、分岐点、
価値観がひっくり返る瞬間って、どこにあるかわからない。
しみじみと焼酎ハイボールをもうひと飲みすると
齋藤さんからうれしいひと言。
「ちょうど食べごろじゃないでしょうか」
醤油を軽くふって、心なしかふっくら感が増したしいたけのカサに、
少し息で冷ましてから、思い切ってかぶりつく。
もっとがっしりした食感かと思いきや、
まるでハンペンのようなふわふわ感。
醤油は少量だがその分、しいたけそのものの風味が感じられると、
今度は食感が新鮮なタコやイカのような歯ごたえに変わっていく。
驚きの変化。みずみずしい水分もしっかりした旨みも味わえる。
そこに焼酎ハイボールが薬味のようにからみつき、長い余韻へと誘ってくれる。
ニンニク醤油の味変をすれば、今度はガツンとした飲みごたえ。
ベースは変わらないけれど、食材や調理の変化で、
いろいろな表情をみせてくれるのが、この酒のいいところなのだ。
きくらげはおすすめのホイル焼きで。
バターが少しずつ溶けて、ぷりっぷりのきくらげから滑り落ちそうになる様子は
うまい! の予告。
歯をはじき返すような弾力のあとはバター醤油と絡む旨み。
シャキシャキとプリンプリンという擬音が頭のなかでループし、
焼酎ハイボールの炭酸がそこに弾けていく。
そのとき、秋風がガーデンに吹く。
印旛沼からなのか、田園からなのかはわからないけれど、
炭火と焼酎ハイボールで火照った頬になんとも心地よい。
きのこたちも、ハウスの中だけれど、
この綺麗な風を受けている感覚なのかなあ、何て妄想をしながら、もうひと缶。
丁寧に育ったきのこと、自然と、齋藤さん親子の物語、
そこに深みがあっても爽快感のある焼酎ハイボール。
なんとも爽やかで、健やかな心持ちになった、秋の日だった。
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ガツンときて、ウマい! も実感。飲みごたえも存分。それが下町スタイル。
東京・下町生まれの元祖チューハイ(焼酎ハイボール)の味わいを追求。
キレ味と爽快感、ガツンとくる喜びを強炭酸・辛口テイストで。
宝焼酎ならではのうまさと飲みごたえと、7%というアルコール度数も絶妙です。
下町の大衆酒場で愛されるスタイルだからいろいろな肴にぴったり。
糖質ゼロ、プリン体ゼロもうれしいひと缶です。
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