連載
posted:2019.2.1 from:宮崎県宮崎市 genre:旅行 / 食・グルメ
sponsored by 宝酒造
〈 この連載・企画は… 〉
「和酒を楽しもうプロジェクト」もいよいよ6年目へ。
今回から舞台をイエノミからソトノミに移し、
“酒場推薦人”の方々が、日本各地の魅力的な「ローカル酒場」をご紹介します。
writer profile
Yayoi Okazaki
岡崎弥生
おかざき・やよい●兵庫県、大阪府、神奈川県、福岡県、東京都(ちょっとだけ愛知県)と移り住み、現在は神奈川県藤沢市在住のローカルライター。最近めっきりイエノミ派となった夫のために、おつまみ作りに励む主婦でもある。
credit
撮影:大橋基文
地元の人にこよなく愛される酒場はまちの宝もの。
ローカル色豊かなおいしいおつまみや、ご主人とお客さんの雰囲気、店の佇まいなど、
思い出すと心がほんのり温かくなるような店を
“酒場LOVE”な案内人の方々に教えてもらいました。
旅先のソトノミガイドとしてもご活用ください。
新婚旅行ブームに沸いた昭和40年代から、
宮崎県宮崎市は観光の拠点として多くの人を迎え入れてきました。
2月になるとプロ野球の春季キャンプも始まって、
春の気配が漂うまちにファンや関係者が次々と訪れます。
宮崎のなかでも賑わいを増すのが市内中心部の飲食店街。
ローカルな酒の肴で飲み歩きができる、
地元で“ニシタチ”と親しまれている西橘通り界隈です。
5年前に東京から宮崎市にJターンした
今回の案内人・土屋有さんも飲むときは必ずニシタチへ。
IT企業を経て3年前に宮崎大学の講師に着任。
地域の魅力づくりに取り組む学生を指導しています。
出身は同じ宮崎の都城市(みやこのじょうし)とはいえ宮崎市は未知のまち。
早く馴染めたのはニシタチのおかげだと言います。
「そのかわり5年で10年分の量を飲みました(笑)
宮崎の人は飲むことが好きで飲み方も上手。
からっと明るい酒なので面倒くさくないのが特徴です。
またニシタチでは店の人もみんなフレンドリー。
一見さんお断りという雰囲気は全然ないので安心して飲める。
新しい人やコトをこだわりなく受け入れるのが、
宮崎の土地柄だとニシタチで飲みながら理解できました」
そんな話を聞きながら向かったのは、
約1400軒の店が集まるニシタチのメインストリート。
西橘通りは紅白の提灯が飾られたどこか懐かしい佇まい。
黒一色の外観で素朴ながら逆に目を引くのが、
土屋さんが人を案内するときの1軒目に選ぶ
きょうのローカル酒場〈居心地屋 やまぢ〉です。
店内に入ると外観と同じく黒が基調の内装で、
ゆっくりと飲めそうな落ち着ける雰囲気です。
カウンター以外の39席はすべて個室で、地元でも人気。
「いまでは僕がもてなす側の立場ですが、
やはり真っ先に思い浮かぶのが〈やまぢ〉さん。
特に県外からの友人知人と飲むときですね。
宮崎に来たらここで地鶏をぜひ食べてもらいたい。
地元の人がそう思う“ちょっといい店”なので
予約を早めに入れないとなかなか押さえられません」
ここのカウンター席に座るのは久しぶりと、
土屋さんはご主人の黒木浩一さんの前をすぐさま確保。
今年は暖冬ですから、と冷たいレモンサワーを頼み、さっそく飲み始めました。
メニューを見ると鶏料理を中心に、
宮崎の郷土料理やオリジナルの酒の肴など多彩な品揃え。
〈やまぢ〉は開店した17年前から宮崎産地鶏にこだわり、
いまは宮崎県を代表する希少なブランド地鶏
〈みやざき地頭鶏(じとっこ)〉メインに提供しています。
「宮崎のローカルフードといえば、
地鶏の炭火焼、地鶏の刺身、チキン南蛮、メヒカリの唐揚げ。
この4つが王道だと僕が思っているのは、
どれも地元の人が日常的に食べているものだから。
〈やまぢ〉では全部揃うのでちょっと自慢しながら飲む感じ。
宮崎っておいしいものが多いでしょ、と。
それに定番の料理でも守りに入るのではなく、
おいしくするために変えるべきところは変えている。
それがよくわかる名物料理が、そろそろ出てくるはずですよ」
「うん、この味。やっぱりうまいなー。炭のいい香りがしてプリプリ感がたまらない。
ちょうどいい噛み応えと弾力感です。これは絶対に食べてもらわないと。
柚子胡椒も市販のものとは全然違います。辛さは鮮烈だけど風味がとても豊か。
この柚子胡椒だけでも飲めますね」
地鶏の炭火焼は、これがあればほかは何もいらないと言われるほど、
宮崎の人に愛されている酒の肴で、真っ黒な見た目がインパクトあり。
この黒さが少々控えめなところが黒木さんのこだわりです。
「もともとは親鶏特有の匂いを消すために、
真っ黒になるほどすすで風味づけしたのが始まりだと聞いています。
でも〈みやざき地頭鶏〉は本当においしい鶏ですからね。
すすをつけすぎてはちょっともったいない」(土屋さん)
「そうなんです。すすを控えめにしたほうが鶏の旨みがよくわかる。
この鶏の品種改良に関わった身内から苦労話も聞いていたし、
愛情と手間をかけて育てているいとこもいます。
できるだけおいしくお客さんに提供するのが自分の役割かなと。
極力すすをつけずに炭の香ばしさは楽しめるように焼き方を工夫して、
専用の煎り塩も考えました」(黒木さん)
「宮崎は芋焼酎文化で、好き嫌い以前に焼酎が当たり前という世界。
僕も幼い頃から周りの大人が飲むのを見て育ちました。
みんな湯のみ茶碗に生のままの焼酎を入れて飲んでいたので、
透明なお茶もあるんだなと思っていました」(土屋さん)
いつもは2杯目から焼酎のロックかお湯割りに移りますが、
「爽やかさが地鶏の炭火焼によく合う」と、今日は何度もレモンサワーをお代わりする土屋さん。
黒木さんは満足げに次の料理を手渡します。
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いよいよ最後の締め、宮崎県を代表する郷土料理・冷や汁です。
冷や汁は夏の暑さをやわらげるための庶民の知恵。
黒木さんは川南町に住んでいたおばあちゃんの味をアレンジ。
幼い頃から大好きだったお薦めの一品です。
「冷や汁は日向、宮崎、日南と海沿いのまちの家庭の味で、
アジなのかイリコなのか、魚をあぶるのかあぶらないのか。
それぞれに味わいが違ってくるのがおもしろい。
ただ僕自身は内陸部の都城市出身なので馴染みがない料理なんです。
つくるとしたら冷たい味噌汁をかける、
いわゆる“ねこまんま”で、魚は使わないはず」(土屋さん)
「それは全然知りませんでした。本当に千差万別ですね。
ウチの冷や汁は焼いたアジをすりつぶしてあるので汁の中に沈殿してくる。
よく混ぜてザバッとご飯にかけて、お好みでミョウガをのせて。
お茶漬けのようにさらさらと食べてください」(黒木さん)
「うん、おいしい、これはすごく上品ですね。
なめらかな舌触りでコクがあって甘みもある。
豆腐が入っていなくてスルスルと食べられるので、
お酒の締めの冷や汁という感じです」(土屋さん)
「豆腐の代わりに落花生を入れています。
昔はすり鉢で当たっていたのをフードプロセッサーで。
だからクリーミーでコクがある味わいになるんです。
アジを焼いて皮も骨も取って身をほぐす。
この下処理だけでも相当手間がかかりますが、
かつては宮崎のお母さんたちがやっていたことですし、
これからも外すことはできない味だと思っています」(黒木さん)
そろそろ店内が賑やかになり始めました。
土屋さんはもう少しニシタチの夜を楽しむそうです。
スナックで宮崎弁のおばあちゃんとのおしゃべりを楽しみ、
釜揚げうどん、雑炊、辛麺いずれかの専門店でもう一度締める。
ひと晩で3軒の店をハシゴする土屋さんのニシタチツアーは、
宮崎を知るための魅力的なガイダンスのようです。
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レモンサワーをもっとおいしくするなら、
レモンサワー用につくられた専用焼酎がベスト。
原材料にレモンと相性の良いハーブを使用した、
宝酒造独自の「レモンペアリング製法」で、
レモン本来の風味がより引き立つように仕上がりました。
「飲み口が軽やかでどんな料理にも合う」と土屋さんも気に入った
〈やまぢ〉のレモンサワーも、
この「レモンサワー用焼酎」をベースにしたもの。
地鶏の炭火焼にチキン南蛮など、宮崎名物との相性は抜群ですよ。
information
居心地屋 やまぢ
住所:宮崎県宮崎市橘通西3-8-5
TEL:0985-23-3213
営業時間:18:00〜23:00 LO
定休日:日曜日(月曜祝日の場合は営業)
アクセス:JR宮崎駅から徒歩15分
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