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この絶景は、世界三景のひとつ?
大地の循環を知るトレッキングへ

NIPPON 47 Beer Spots&Scene!
全国、心地いいビールスポット
vol.025

posted:2016.6.6   from:秋田県男鹿市  genre:食・グルメ

sponsored by KIRIN

〈 この連載・企画は… 〉  その土地ならではの風土や気質、食文化など、地域の魅力を生かし
地元の人たちと一緒につくった特別なビール〈47都道府県の一番搾り〉。
コロカルでは、そのビールをおいしく飲める47都道府県のスポットをリサーチしました。
ビールを片手に、しあわせな時間! さあ、ビールのある旅はいかがですか?

writer profile

Mikio Soramame

空豆みきお

そらまめ・みきお●akaoni コピーライター。山形に生まれ、山形に育つ。のち山形を出て、やがて山形に戻り、いまは山形で学び、山形で遊ぶ日々。夏の鳥海山の麓の農園の、朝採りの枝豆収穫の手伝いが好き。
http://www.akaoni.org

photographer profile

Kohei Shikama

志鎌康平

しかま・こうへい●山形県生まれ。写真家小林紀晴氏のアシスタントを経て、山形さ帰る。国内外旅に出てますが、山形の山を走ったり、裏山の湖でカヌーをするのが好きです。3歳の娘と遊ぶのも好きです。山形ビエンナーレ公式フォトグラファー。
http://www.shikamakohei.com

credit

Supported by KIRIN

47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
秋田でコロカルが向かったのは、男鹿半島の観光地、寒風山。

見るものすべて〈なまはげ〉と「絶景」。
息つくヒマもない観光地、男鹿半島。

秋田市から車で日本海に沿うように北上し1時間弱。
男鹿市の入口に辿り着いた僕らをまず出迎えてくれたのは、
全長15メートルという巨大な〈なまはげ〉でした。

男鹿市に入った僕らを歓迎(?)してくれた、国道101号線沿いにある男鹿総合観光案内所のなまはげ立像。ここから先はもうなまはげワンダーランド。

「泣ぐ子はいねが~」と叫びながら家々を回っては
子どもたちに恐怖を与え泣かせてしまうなまはげ行事は、
〈男鹿のなまはげ〉として国の重要無形民俗文化財に指定されています。
山の神の使いとも言われるこの伝説のなまはげに
こののち僕らは何度も何度も「スキあらば」という勢いで遭遇することになります。
道路を走れば〈なまはげライン〉、川を渡れば〈なまはげ大橋〉、
ランチを頼めば〈なまはげラーメン〉、温泉街では〈なまはげ太鼓ライブ〉、
ホテルの朝食には〈なまはげ納豆〉、観光名所は〈なまはげ館〉……。

数多くのなまはげとの出会いを繰返しながら走り回るうち、
東北随一と言っていいほどどーんと日本海に突き出ている
この男鹿半島ならではなのでしょう、海沿いにはすばらしいいくつもの景色が
連続して出現することにも驚かされます。

日本の渚百選にも選ばれているほど見事な〈鵜ノ崎海岸〉。
海に向かって吠えているかのような奇石〈ゴジラ岩〉。
湾や岬はそれぞれにユニークで美しい自然の様相を呈しています。

男鹿の海辺のそんな景色を楽しみながらドライブしていると、
突如「かに」ののぼりが目に入りました。
白い看板には「カニ直売所」の文字。
一瞬で心奪われそうになった僕らは、
「危険すぎる」と、一度は心を鬼にしてスルーしたのですが、
結局すぐにこの場所に引き返し、駆け込むように店のドアを開けました。

出迎えてくれたのは笑顔のすてきなお店の方と
氷の上に美しく並べられた大小さまざまな〈ベニズワイガニ〉。
聞けば、この直売所を開いている〈男鹿水産〉は、
秋田で唯一のベニズワイガニ漁の網元で、
このカニはハタハタや真鯛に並ぶ、男鹿の美味のひとつとなっているそうです。

「出会ってしまったものはしょうがない」と僕らは覚悟を決めて、
お店の方に「これなんか、身の入りがよくておいしいですよ」と勧めていただいた
カニを手に店先の小さなテーブルに腰を下ろしました。
買ったカニをこうしてすぐに食べられるのがなんともうれしい。

思わぬ出会いからベニズワイガニを食することに。辿り着いたばかりの男鹿の道路端で、人目も気にせず夢中になっています。まさに至福。

幸先のいいそんな出会いもありつつ、男鹿の旅はまだまだ始まったばかり。
これからいよいよ、目的の場所へと向かいます。

このまちは〈男鹿半島・大潟ジオパーク〉として認定された、
地球の大地の豊かさを学び楽しむことができる壮大な自然公園でもあります。
民俗的な魅力と、食の魅力と、自然の魅力が豊かに生い茂り尽きることがない。
まるで深い森のようなこのまちの深部へ、
いよいよ僕らは足を踏み入れようとしていました。

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多彩な楽しみに満ちた〈ジオサイト〉

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美しく、愛される寒風山。
多彩な楽しみに満ちた〈ジオサイト〉。

さて、このまちに数多く存在する名所のうち、
今回僕らが訪れる目的地は〈寒風山(かんぷうざん)〉。
男鹿半島・大潟ジオパークを構成する〈ジオサイト〉のひとつで、
「地形や地質から自然を学び楽しむのに最適な場所」とされています。
男鹿半島の「つけ根」のあたりに位置するこの山は、
山全体が緑の芝生に覆われているという一風変わった外観の火山。

寒風山の山頂付近。なだらかな稜線。てっぺんに見えるのは回転展望台。かわいい感じにちょこんと乗っかっています。

2万年前に始まった噴火による大小ふたつの噴火口は大きな窪みとなって、
三角のふつうの山とはちょっと違うカタチをしています。
山頂の高さは355メートルと低いにもかかわらず、
その山頂からの眺めは視界を遮るものが一切なく、まさに絶景。

大正時代の地理学者・志賀重昴が、アメリカのグランドキャニオン、
ノルウェーのフィヨルドに並ぶ世界三景のひとつと語ったとも言われたほど見事なもの。
東には八郎潟を干拓した広大な大潟村の水田の景色が広がり、
南には鳥海山を望み、西に入道崎の美しい海、北に白神山地を見ることができます。

深くえぐるような湾の曲線がセクシーで、見飽きることがありません。
ある地元の方は「この山からは360度ぐるりと見渡せるので、
夕陽が沈むのを見られるだけでなく、朝陽が昇るのを見ることができるんです」
と目を輝かせて教えてくれました。

まるで緑のじゅうたんを敷きつめたようなやわらかい緑の草原が広がります。右端にあるのは「姫ヶ岳」という寒風山のもうひとつの頂。

絶景を味わうだけではありません。
地元や県内の小学生は「鍋っこ遠足」と呼ばれる、
鍋と食材を担いで山に登っては、きりたんぽ鍋などを
つくって食べる伝統行事をするそうです。

そのほか、パラグライダーも体験できるし、地元の人にはもちろん、
観光客にも人気の地で、たくさんの楽しみを与えてくれます。
歩きやすい山なのでトレッキングコースもいろいろとあり、
山頂域をめぐる内回りコースなら約6キロの道のりを
2時間半ほどの時間をかけてじっくりと堪能できます。

春から初夏の季節に咲く〈アズマギク〉を見ながら歩くのも寒風山トレッキングの楽しみのひとつ。

山に魅せられ70年。
夏井さんと秘境〈滝の頭〉を歩く。

僕らは、この山の魅力をもう一歩踏み込んで知りたいと思い、
寒風山のプロフェッショナルを紹介してもらうことにしました。

夏井興一さん、76歳。
男鹿半島・大潟ジオパークガイドの会会員。
物心ついた子どもの頃からずっと身近な存在だったこの山の虜。
いまなお現役の山男で、いくつもの文献を探っては文化や歴史の謎をひもとく探求人。
雪の季節には、ゲレンデのないこの山にスキーを担いで登っては滑降を楽しむ冒険家。
季節に咲く草木や花を愛でる自然人。

ちっちゃい頃からずっと寒風山に魅せられている夏井興一さんは、全身全霊で山を楽しむ達人です。きらきらした眼差しで僕らを案内してくれました。

そんな夏井さんに
「寒風山のおすすめスポットに連れて行ってください!」とお願いしたのです。
そうして僕らは、広い寒風山のなかでたったふたつだけのポイントに的を絞った、
スペシャルバージョンのトレッキングに出かけました。

まず最初に案内してもらったのは〈滝の頭(かしら)〉と呼ばれる湧水地。
僕らは心のどこかで「しかしなぜ湧水地へ?」と
不思議に思いながらその源流に向かい、夏井さんの後ろをついて行きました。
大きなスギの木がいくつも立ち並ぶ、幻想的な雰囲気に包まれた
静かな深い森を歩きました。

許可をもらって散策した、湧き水の地〈滝の頭〉の周辺。ひんやりとして澄んだ空気や樹齢の長い大きなスギの木など、ありのままの自然が実にきれい。

水は透明で澄んでいるのに〈滝の頭〉の池の色は見たこともないような深い緑色をして輝きを放っていました。

モネの絵画のような、深い緑色の水面の池の周りを歩きました。
水面は濃い色をしているのに、底が見えるほど透明で、
山の精霊がすんでいそうな、美しい場所でした。

人があまり足を踏み入れてはならないような、神聖な場所という印象すらあります。

やがて岩間からバシャバシャと絶え間なく、
勢いよく、噴出し続ける湧水の源流を見つけました。
1日2万トンとも言われる豊富な水量です。
通年12度という冷たく、清涼で、美味な水を求めて、遠くからも人が次々来るほど。
僕らは、手で水を掬いその冷たさを手のひらで感じながら、喉を潤しました。

「大地がくれるこの水が、このまちの人の暮らしを支えているんです」
と夏井さんは言いました。

まさに「噴出」しているような勢いの、膨大な水量の湧水。しかもほどよく冷たく最高に美味。大地の恵みそのもの。

水、緑、木、空気、光、風。全部が豊かで、その風景に僕らはただただ呆然としてしまう、贅沢な時間を過ごしました。

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大いなる大地の恵み、眺めて、感じて、心に刻んで。

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大いなる大地の恵み、眺めて、感じて、心に刻んで。

次に僕らは滝の頭を離れ〈妻恋駐車場〉という中腹のパーキングへ移動し、
夏井さんおすすめの第二の目的地である、
姫ヶ岳の近くの〈タタミ岩〉へと歩みを進めました。
地に生えたやわらかい芝の感触を足の裏に感じながら、
先導してくれる夏井さんの背中を追って、ぐんぐん、ぐんぐんと。

芝の上を歩く山登り。膝にもやさしいし、気持ちいいし、楽しい。

20分ほども歩いたでしょうか、やがて僕らは目的地である
畳3畳分くらいの平らな岩に辿り着きました。
世界がぽっかりと広がっているその景色を、夏井さんと一緒に眺めました。

夏井さんの足下の岩が〈タタミ岩〉。山道に突如現れたこの岩は「ちょっとここに腰を下ろして一服してね」と語りかけてくれているよう。

夏井さんは、ここからの眺めが特に好きなのだそうです。
うぐいすが鳴きました。ひばりの声も聞きました。
「ここではよくひばりが鳴くので、この丘をヒバリーヒルズと呼んでいるのです」と、
ちょっと照れながら、夏井さんは言いました。

どこまでも広がる眼下の世界。水田も、町も、向こうの山も、その先も。

「夏井さん、寒風山の魅力ってなんですか」とあらためて聞きました。
夏井さんは言いました。

今回のクルーのなかで最年長でありながら、山のエネルギーをもらって、一番生き生きしている夏井さん。

「この芝の山肌は『緑のじゅうたん』と表現されることがありますが、
私は、石川達三という作家がたとえたという『うぐいす餅のよう』という表現が
この山の質感をぴたりと言い当てている気がします。よもぎ餅でもなく、うぐいす餅。
ふつうの人が見れば、ただきれいな山肌だなあって思うだけでしょうが、
何もせずに自然にそうなっているわけではないのです。
このまちの人の手で年に何回も草刈りをして、管理をしているから、
山は荒廃することなく、芝生が適度に生えている状態に保たれています。

自然のものでもあり、人の手のかかったものでもある、この山の美しさ。その美しさには意味があると気づくことが大切、と夏井さんは教えてくれました。

だから、雨が降れば、大地は効率よく雨水を吸い込むことができるのです。
染み込んだ雨水は、地下水として蓄えられ、
地下にある火山岩によって20年もの時間をかけて自然の力で濾過され、
美しく豊富な湧水となって〈滝の頭〉から湧き出ます。
清涼で美味なその水によって、男鹿の人々の暮らしや農業が支えられているのです。
このすばらしい循環こそが寒風山の秘密であり、
ジオという大地の恵みのシステムなのです」

僕らが立っているこの山のずっとずっと深い地下には、ジオ(=大地)の「しかけ」が隠されている。

地上に広がる雄大な自然の景色の前で、
地下に広がる壮大な大地のからくりを、僕らは想像しました。
大いなる自然の摂理と人の営みとがひとつとなった
恵まれた大地に僕らはこうして立っている……。

今日の寒風山トレッキングは、ここまで。
乾杯しよう。すばらしい自然と、すばらしい大地と、そしてすばらしい人の営みに。
これから何十年、何百年、何千年先も、美しい景色が美しいままにあることを願って。

おつかれさま! 今日のすてきなトレッキングの終わりはビールで乾杯。

今回飲んだのは、
地元の人と一緒につくった
〈キリン一番搾り 秋田づくり〉

トレッキングで乾いた体を潤してくれるのは、秋田県産米や秋田県産ホップが使われた、〈キリン一番搾り 秋田づくり〉。地元の農家さんの思いもたっぷり詰まったビールです。

キリン一番搾り 秋田づくりってどんなビール? →

※一番搾り 秋田づくりは、秋田の誇りを込めてつくった、秋田だけの味わいです。

問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く) 
ストップ!未成年者飲酒・飲酒運転。

information

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寒風山回転展望台

住所:秋田県男鹿市脇本富永字寒風山62-1

TEL:0185-25-3055

営業時間:8:30〜17:00(3月中旬~11月末のみ)

*トレッキングで行くほかに、展望台へは車でも行ける。展望台の入場料金は一般540円、小中高生270円

information

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滝の頭(滝の頭水源浄水場)

住所:秋田県男鹿市五里合鮪川上鮪川34

*水源の見学は、男鹿市滝の頭水源浄水場で許可をもらってください。

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