連載
posted:2016.5.28 from:広島県尾道市 genre:食・グルメ
sponsored by KIRIN
〈 この連載・企画は… 〉
その土地ならではの風土や気質、食文化など、地域の魅力を生かし
地元の人たちと一緒につくった特別なビール〈47都道府県の一番搾り〉。
コロカルでは、そのビールをおいしく飲める47都道府県のスポットをリサーチしました。
ビールを片手に、しあわせな時間! さあ、ビールのある旅はいかがですか?
writer profile
Hiromi Kajiyama
梶山ひろみ
かじやま・ひろみ●熊本県出身。ウェブや雑誌のほか、『しごととわたし』や家族と一年誌『家族』での編集・執筆も。お気に入りの熊本土産は、808 COFFEE STOPのコーヒー豆、Ange Michikoのクッキー、大小さまざまな木葉猿。阿蘇ロックも気になる日々。
photographer profile
Tada
ただ
写真家。池田晶紀が主宰する写真事務所〈ゆかい〉に所属。神奈川県横須賀市出身。典型的な郊外居住者として、基地のまちの潮風を浴びてすこやかに育つ。最近は自宅にサウナをつくるべく、DIYに奮闘中。いて座のA型。
http://yukaistudio.com/
credit
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47都道府県、各地のビールスポットを訪ねます。
広島でコロカルが向かったのは、尾道市向島にあるチョコレート工場
〈USHIO CHOCOLATL(ウシオチョコラトル)〉。
チョコレート工場だなんて、一度は夢見たことのある場所のひとつ、ですよね。
絵本や映画の中だけの話ではなく、尾道にもあるんです。
尾道駅そばから渡船に乗ること約5分。
幅300メートルほどの尾道水道を渡り、尾道市街の向かいに位置する向島へ。
本州と四国をつなぐ〈しまなみ海道〉沿いにある、
尾道側から数えてひとつ目の島で、周囲をぐるりと海に囲まれています。
車を走らせること15分ほどで、〈USHIO CHOCOLATL〉に到着です。
目の前には連なる家々と海、そして空。
思わず「う~ん」と伸びをしたくなる気持ちのよい景色が広がっています。
中村さんは福岡県、宮本さんは兵庫県、栗本さんは広島市内と、
生まれた場所も育った場所もバラバラの3人ですが、
共通しているのは「なんだかおもしろそう」
「会いたい人に会うために」といった理由で、数年前に尾道に移住してきたところ。
尾道駅の商店街にあるカフェで働いたり、
お客さんとして出入りしていたことをきっかけに出会い、
「いつか何かを一緒にできたら……」という想いを抱くようになっていたといいます。
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でも、どうしてチョコレート工場だったのでしょう?
中村さんは「あるときすばらしいチョコレートに出会ったんですが、
日本には同じようなものがなかったから」と答えてくれました。
中村さんの思い描く、理想のチョコレートショップ。
それは、ある雑誌で知った、ニューヨークのブルックリンにある
〈MAST BROTHERS CHOCOLATE(マストブラザーズチョコレート)〉のこと。
小規模なチョコレートショップのパイオニアとして、
日本にも多くのファンをもつ同店では、
カカオ豆とさとうきびのみを使ったチョコレートを製造・販売しています。
シンプルな材料を使い、自分たちの目と手の届く範囲で手づくりすること。
そこには、大量生産されるチョコレートとは大きく異なる
想いやスタンスが存在しています。
「これまでチョコレートといえば、いつでも同じ味が食べられるという
“安定感のあるおいしさ”を追求したものでした。
毎回味が違ったら、みんな嫌になってしまいますよね?
そんななか、豆の産地によって味と香りがまったく異なる
シングルオリジンコーヒーブームがやってきて、
チョコレートも同じような視点で語られるようになってきたんです。
カカオ豆だって、コーヒー豆と同じで、
産地や仕入れるタイミングでコンディションが違ってくる。
僕たちは豆の状態を生かしたチョコレートづくりをしているんです。
どちらが良い悪いではなく、好き嫌いの話。僕はこれがやりたい! と思いました」
中村さんからMAST BROTHERS CHOCOLATEのチョコレートを
初めてもらって食べたときのことを、宮本さんはこんな風に話してくれました。
「ワインもコーヒーも、どんな材料を使うか、誰が仕込むかで出来が違ってくる。
食べ物はそういうものだとわかっていたつもりでいましたが、
チョコレートもそうなんだ! って、そのときに初めて認識したんです。
こんなにおいしいチョコレートになら、高いお金を払う価値がある。
親や恋人、大事な人からお金をとれるだけの仕事ができると思いました」
ここ、USHIO CHOCOLATLの特徴は、
カカオ豆と砂糖のみでチョコレートをつくっているところ。
つくり方もいたってシンプルです。
まず、カカオ豆をオーブンで焙煎し、殻を剥くところから始まります。
その後、石臼でカカオ豆がドロドロになるまですりつぶし、砂糖を加えます。
カカオ豆をすりつぶすだけでドロドロになるのは、カカオ豆の50%から60%が
「カカオバター」と呼ばれる油脂分だからなのだそう。
さらにツヤのある仕上がりになるように、温度を調整する
テンパリングと呼ばれる作業を終えたら、あとは冷やして包装すればできあがり!
大手メーカーがチョコレートをつくる場合は、巨大なテンパリングマシーンを使うため、
生地がスムーズにマシーンの管を流れるようミルクやカカオバター、
パームオイルなどを加え、滑らかにしているんだとか。
USHIO CHOCOLATLでは、マシーンを使うことなく、
大きめのボウルを使いテンパリングをします。
こうしてつくられたチョコレートは全6種類。
形はどれも手のひらサイズの6角形ながら、
パッケージはカカオ豆の産地に合わせたデザインに。
お土産やプレゼントにぴったりのおいしさとパッケージで、売り切れている種類も。
この日、実際に売られていたのは3種類でした。
「今日はどれが食べられるかな?」とお店に着くまで
ドキドキするのも楽しいひとときです。
現在では、おいしいチョコレートを求めて、市内や県外から
老若男女問わずたくさんのお客さんがやって来るUSHIO CHOCOLATL。
しかし、ここに至るまでの道のりは決して楽ではなかったそうです。
例えば、はじめの頃は、カカオ豆の仕入れ先を開拓するにも情報がなく、
あてもないまま現地へ行くなんてことも。
しかし、その甲斐あって、次第に人を紹介してもらえたり、
情報が集まってくるようになりました。
昨年はスタッフ3人で手分けして生産地を回り、
交渉時には通訳をつけるなどして、農園と直接契約を交わすまでに。
「やったことないことばかりだから全部楽しい」
中村さんが誰かにアドバイスを乞うことはありません。
「『チョコレートを仕事にするなら、あと3年は修業しないとだめだ』って
よく言われました。チョコレート工場をすること自体も反対されとったし。
でも、そのときに『あ、これがうまくいくっていうバイブスは
僕にしかわからないんだ』って思ったんですよ。
僕自身はきっとおもしろいことになるんじゃないかなと思ってました」
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USHIO CHOCOLATLが向島にやってきた2014年以降、
島には食堂、パン屋、グラノーラショップなど、
たて続けに新しいお店がオープンしています。
自身も尾道の魅力に惚れ込んだという栗本さんは、
「尾道には人を引き寄せる引力がある」と話してくれました。
「尾道には空き家再生プロジェクトという、空き家を再生して
住居や店舗として活用する取り組みがあるんです。
そうやって地元出身の方たちが以前から続けてきた
取り組みの成果はとても大きいと思います。
僕らは数年前に外からやってきて、その土壌の上に乗っからせてもらっているだけ。
尾道にはまち自体に引力があるし、人にも引力がある。
刺激的でおもしろいまちなんです」
このまちをおもしろくしたい。
その要素が、彼らにとってはたまたまチョコレートだったのかもしれません。
これからもUSHIO CHOCOLATLのメンバーやその仲間たちが、
尾道をさらにおもしろいまちにしていくに違いありません。
※一番搾り 広島づくりは、広島の誇りを込めてつくった、広島だけの味わいです。
問合せ/キリンビール お客様相談室 TEL 0120-111-560(9:00~17:00土日祝除く)
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