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米子で見つけた
モノラルレコードの殿堂。
〈ロックンロールレコード〉

SOUNDS GOOD!!! 音のいい店ジャパンツアー
vol.031

posted:2025.1.16   from:鳥取県米子市  genre:旅行

〈 この連載・企画は… 〉  ジャズ喫茶、ロックバー、レコードバー……。リスニングバーは、そもそも日本独自の文化です。
選曲やオーディオなど、音楽こそチャームな、音のいい店、
そんな日本独自の文化を探しに、コロカルは旅に出ることにしました。

writer profile

Akihiro Furuya

古谷昭弘

フルヤ・アキヒロ●編集者
『BRUTUS』『Casa BRUTUS』など雑誌を中心に活動。5年前にまわりにそそのかされて真空管アンプを手に入れて以来、レコードの熱が再燃。リマスターブームにも踊らされ、音楽マーケットではいいカモといえる。

credit

photographer:深水敬介

illustrator:横山寛多

音楽好きコロンボとカルロスが
リスニングバーを探す巡礼の旅、次なるディストネーションは
鳥取県米子市。

かたまりでドーン! モノラルで浴びせるガッツのある音

コロンボ(以下コロ): またしてもスーパーマニアックな店を見つけちゃったよ。
世界的にもレアじゃないかな?

カルロス(以下カル): なになに、もったいつけないで教えてよ。

コロ: ひと言でいえば、大広間みたいなところで、
オリジナル盤によるロックが心おきなく聴けるお店。

カル: オリジナル盤を聴かせてくれるのが、そんなレア?

コロ: それがさー、ほぼほぼモノラル盤なんだよ。
しかも7インチシングルが中心。

オープンして1年と半年が過ぎたところ。広がりでなくかたまりで聴かせる空気の振動対策が最大の難関だったとか。

オープンして1年と半年が過ぎたところ。広がりでなくかたまりで聴かせる空気の振動対策が最大の難関だったとか。

モノラルの忠実な再現を追求した自前のオーディオシステム。試行錯誤の賜物らしい。

モノラルの忠実な再現を追求した自前のオーディオシステム。試行錯誤の賜物らしい。

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モノラルとステレオの違い、わかる?

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カル: モノラル盤かあ、マニアの沼に入ってきた気がしてきたね。
一般的には左右の音が一緒で、奥行きで聴かせるってことだよね。
理屈はわかっているんだけど、なんか実感が薄いな。
ビートルズのモノラルBOXとかが出て、聴いてみたけど、
違いがわかるようでわからない。

コロ: ジャズなんかでもモノラル盤がいいとかあるよね。
ボクも今ひとつわからなかったんだ。
でも、この店のおかげでちっとはわかった気になった。

カル: 〈ロックンロールレコード〉とは、潔いいね。
直球をど真ん中にドーンって感じ。モノラル感満載な屋号じゃない?

コロ: そうなの、直球ど真ん中。
かたまりでドーンとこれでもかって感じで浴びせる、
モノラルとはそんなガッツがあるんだ。

カル: へー。ビートルズもモノラルが多いよね。
『サージェント・ペバーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』は
モノラルとステレオが存在するんだよね。
でもジョージ・マーティンはモノラルミックスを中心につくっていたから、
ステレオ盤は適当だったという説もあるよね。

コロ: 『ホワイト・アルバム』あたりまではモノラルが存在するんだ。
名刺代わりに聴かせてくれた「All You Need Is Love」はすごかったな。
針を落としたときのノイズからして違うんだよ。荒々しいっていうか。

カル: でもって、あの勇ましいホーンのイントロ。どうだった?

コロ: まさに轟音、お店中の空気が振動しているような感じだったよ

シンプルなデザインながらインパクト大のセルフメイドのビルボード。

シンプルなデザインながらインパクト大のセルフメイドのビルボード。

モノラル・ミュージアムというのがあったら、こんなスーヴェニアショップなんだろうか?

モノラル・ミュージアムというのがあったら、こんなスーヴェニアショップなんだろうか?

カル: さぞかし、頼もしい音響機材なんだろうな。

コロ: それがそうでもないんだよ。マスターの木下浩史さんがいうには、
レコードもオーティオもそれぞれの時代に仕様が異なっているから、
当時の音で鳴らすことに注力しているんだって。
オーディオそのものが音を決めるんじゃなくて、その鳴らし方がすべてなんだってさ。

カル: こだわるとしたら、機材より鳴らし方か。真理だね。
とはいっても〈GARRARD〉のオートチェンジャー、この家庭用な感じはそそるね。
ボクも欲しい♡。

コロ: アンプはプリが〈FX-AUDIO-〉だし、
パワーアンプも中国の〈RFTLYS〉と激安真空管ユニット。
スピーカーこそ〈ALTEC〉だけど、
ワンコーンのSANTANAと家庭にも十分収まるコンパクトさだからね。

カル: それでいて、笑っちゃうくらいすごい音圧なんでしょう。

コロ: ビッグ・メイベルの「Mean To Me」なんて、
あまりの迫力でほんと笑っちゃったよ。

ターンテーブルは〈GARRARD〉の家庭用オートチェンジャー。50〜60年代の家庭の音にとことんこだわる。

ターンテーブルは〈GARRARD〉の家庭用オートチェンジャー。50〜60年代の家庭の音にとことんこだわる。

オリジナルシングルで聴かせてくれたビッグ・メイベルの「Mean To Me」

オリジナルシングルで聴かせてくれたビッグ・メイベルの「Mean To Me」

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モノラルだとカーペンターズはどう聴こえる?

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カル: 情報量の多い7インチだから余計にすごいんだろうね。

コロ: 7インチだとオリジナル盤が比較的集めやすいだって。
シングルならそんなに高額でもないし。

カル: 45回転っていうのも音のよさに影響あるっていうじゃない。
最近はLPでも45回転2枚組重量盤ってフォーマットで
リイシューされているくらいだから。
とはいえ、オリジナルカットのモノラル盤を手に入れれば誰でも、
この音ってわけじゃないでしょう?

コロ: すべてのエレメントが当時のものってところがポイントで、
針もモノラル用で重くて太い。
ステレオ用の針は細いことで、繊細な音を再現するけど、モノラルその真逆ってわけ。

カル: ステレオの登場で時代が繊細な音の方に向かっただけなんだろうね。
選曲はどんな感じで聴かせてくれるの?

コロ: 基本、マスターが選んでかけてくれるんだけど、
モノクロのよさがわかるレコードをピックアップしてくれる。
取材前のロケハンに行ったときは、初めての来店を見透かされてしまって、
ビートルズからボ・ディドリー、カーペンターズの「シング」まで
誰が聴いてもすごいって感じの曲を入門編的にかけてくれた。

カル: ボ・ディドリーのブルース的ないかがわしさはわかるけど、
カーペンターズは意外だなー。しかも「シング」でしょ。すこぶる品行方正。
70年代以降のレコードでもモノラルで聴けるんだ。

コロ: 取材のときのカーペンターズは「ジャンバラヤ」だったよ。

カル: カレン・カーペンターの声って、キレイなわりに太いから、
モノクロユニットで聴くと圧強めでいいんだろうね(笑)

7インチシングルは情報量の多さがポイント。45回転という回転数も音質のよさに影響を及ぼすそうだ。なにより、価格が安いのが魅力。

7インチシングルは情報量の多さがポイント。45回転という回転数も音質のよさに影響を及ぼすそうだ。なにより、価格が安いのが魅力。

唸るように鳴ったT.REXの「20センチュリー・ボーイ」のブリティッシュ・オリジナル。

唸るように鳴ったT.REXの「20センチュリー・ボーイ」のブリティッシュ・オリジナル。

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最後は鳥取が誇るあの巨匠のアニソン!

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コロ: 70年代ものだと、ステレオ盤だったけど
T.REXの「20センチュリー・ボーイ」もすごかったな、恐竜のように唸ってる感じ。

カル: 邦楽はかけないの?

コロ: 基本かけないみたいだけど、
サービスで「リンダ・リンダ」をかけてもらったんだけど、これまた圧強め。
ライブ会場にいるようだった。

カル: ブルーハーツはモノラルあっている気がするね。あくまでイメージだけど。

コロ: こんな感じで、
初めてのお客さんにはわかりやすくモノラルの世界を案内してくれるんだ。

カル: なんかモノラルの殿堂、モノラル・ミュージアムって感じだね。
料金体系とかはどうなっているの?

コロ: 入店料が1時間1000円+ワンドンクのオーダーが必要。
ドリンクはコーヒーをはじめ一律500円。でもお酒はないんだ。

カル: 何時間いてもいいんでしょう。

コロ: もちろん。
店内もミュージアムみたいだから、帰るタイミングがなかなかつかめないんだ。

カル: つい長居しちゃいそうだね。

コロ: で、帰りがけに「最後にこれでも」とかけてくれたのが「ゲゲゲの鬼太郎」。
目玉おやじもびっくりな爆音!

カル: でた! 水木しげるご当地枠(笑)。楽しいな♪

information

map

ロックンロールレコード〜お茶の間に間に〜

住所:鳥取県米子市淀江町佐陀834-5

TEL:070-9107-5060

営業時間:13:00〜20:00、(土日)11:00〜20:00

定休日:無休

Instagram:@rockn_roll_record

 

SOUND SYSTEM

Speaker:ALTEC SANTANA

Turn Table:GARRARD 60’s オートチェンジャー

Pre Amplifer:FX-AUDIO-

Power Amplifer:RFTLYS A2

Phono Equalizer:GE UPX-003B

旅人

コロンボ

音楽は最高のつまみだと、レコードバーに足しげく通うロックおやじ。レイト60’sをギリギリのところで逃し、青春のど真ん中がAORと、ちとチャラい音楽嗜好だが継続は力なりと聴き続ける。

旅人

カルロス

現場としての〈GOLD〉には間に合わなかった世代だが、それなりの時間を〈YELLOW〉で過ごした音楽現場主義者。音楽を最高の共感&社交ツールとして、最近ではミュージックバーをディグる日々。

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